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ぽっぺん日記@karashi.org


2007-04-01(Sun) [長年日記]

_ 終末のフール(伊坂 幸太郎) 終末のフール(伊坂 幸太郎)

8年後に小惑星が地球に衝突することが発表されてから5年。自暴自棄となった人々による暴動も小康状態となり、一時の平和が訪れた仙台を舞台に、終末の時を生きる団地の住人たちの日常を描いた連作短篇集。

「8年後に小惑星が衝突」というあたりで、考証が全然できていないパニック映画みたいだなーと思いつつ読んでみたが、想像を良い意味で裏切ってくれた、味わい深い小説だった。

まぁ、実際のところ、粗筋だけ書くとSFっぽいが、SF色は0だし、設定についても、「小惑星の衝突」のリアリティ自体には目を瞑るにしても、誰がどう考えたって混乱は必至なのに、政府がそれを発表してしまうあたり、ツッコミどころは多いけれど、謝辞や「天体のヨール」で天体マニアが語るところを読めば、作者の確信犯だったことが分かる。作者が意図したところは、リアリティに重きを置くことではなく、静かに、しかし確実に残り時間を削りながら訪れる終末の時の中で生きる、ごく普通の人々の日常を描くことだったのではないか。

本書に収められている短篇は下記の通り。

  1. 終末のフール
  2. 太陽のシール
  3. 篭城のビール
  4. 冬眠のガール
  5. 鋼鉄のウール
  6. 天体のヨール
  7. 演劇のオール
  8. 深海のポール

どの話も良かったが、敢えて個人的な好みを挙げておくと、突然の妻の妊娠を知り、あと3年しかない世界に子供を誕生させるかどうかを逡巡する夫を描く「太陽のシール」、世界の終わりに興味を示さず、ただただストイック強さのみを目指すキックボクサーの物語「鋼鉄のウール」、先に挙げた、自殺願望の男とその旧友の天体マニアが語らう「天体のヨール」あたりだろうか。

俺の場合、もうすぐ世界が終わると言われたら、晴れた日は農業して、夜と天気が悪い日には本を読む生活を送るだろうなぁ。プログラミングも好きだけど、誰かに知識の継承もできない状態で、残りの人生を費やすくらい好きかと問われれば、正直、首を捻らざると得ないし。ハッカーな人たちは、地球の知識を詰め込んだAIを宇宙の果てまで送り込む計画を立てたりすんじゃないかと想像するんだけども、これじゃSFだな。

_ 累犯障害者(山本 譲司) 累犯障害者(山本 譲司)

タブーとされ、マスコミにもほとんど取り上げられることがなかった、障碍者が関わる事件を追ったルポルタージュ。

元衆議院議員で、秘書給与詐取の罪により服役した経験を持つ著者だけあって、刑務所での話題をとば口に、元服役囚から取材を行なう手法は、なかなか巧みで、流石に経験者は違うと妙なところで感心してしまった。ここらへん、そんじょそこらのマスコミ関係者には、真似できないものではなかろうか。

雑誌掲載記事が元になったせいか、個々の事件自体についての掘り下げ方が少々足りない面はなきにしもあらずだが、タブーとされ闇に隠されてきた事柄に光を当てたという点では、価値ある本ということができるだろう。

本書で扱われる事件は下記の通り。

  • 序章 安住の地は刑務所だった―下関駅放火事件
  • 第1章 レッサーパンダ帽の男―浅草・女子短大生刺殺事件
  • 第2章 障害者を食い物にする人々―宇都宮・誤認逮捕事件
  • 第3章 生きがいはセックス―売春する知的障害女性たち
  • 第4章 閉鎖社会の犯罪―浜松・ろうあ者不倫殺人事件
  • 第5章 ろうあ者暴力団―「仲間」を狙いうちする障害者たち
  • 終章 行き着く先はどこに―福祉・刑務所・裁判所の問題点

どの章も非常に興味深かったが、「第1章 レッサーパンダ帽の男」については、内容的に以前読んだ『自閉症裁判』の焼き直し的な性格が強く、内容にほとんど相違がないため、新たに書くほどのものなのかなと疑問を感じざるを得なかった。ただ、犯人が養護学校で生徒会長になった経緯が、本書では「いじめのため」となっており、『自閉症裁判』では「他の生徒に人気があったため」となっている点は気になった。どちらが真実なんだろうか。

個人的に最も衝撃を受けたのは、ろうあ者を取り巻く世界について書かれた「第4章 閉鎖社会の犯罪」と「第5章 ろうあ者暴力団」の2章。全く知らないことばかりで本当に驚いた。

たとえば、手話にしても、日本手話と日本語対応手話があることは知識としては知っていたが、その言語としての隔りが、日本語と外国語ほどのものであることは本書を読むまで全く知らなかったし、ろうあ者の仲間意識についても、まぁ、それなりに結束力は強いだろうなくらいの想像はしていたのだが、実際は仲間意識などというレベルを超えていて、デフ・コミュニティという独自の名前が付くくらい非常に強固な人間関係を築いており、その中では、遠回しな言い方は好まれず、敬称や敬語は使われず、上下関係や男女関係についてもこだわりを持たずに扱われるという。結婚もコミュニティ内のメンバー同士で行なわれることが普通であるというくらいのものなので、想像することしかできないくらいに濃密な人間関係だ。

意外だったのだが、ろうあ者と携帯メールの関係だ。健常者にとっては、携帯メールというのは、便利なものではあるが、「生活を一変させる」というほどのものではないように思うが、ろうあ者にとっては、今までFAXでしか遣り取りできなかった遠隔地同士のコミュニケーションを代替し、格段に行動範囲や交際範囲を広げたツールであるという。一日50回程度のメールの遣り取りすることも普通である記述には、正直驚いた。「第4章 閉鎖社会の犯罪」で取り上げられる不倫殺人事件についても、携帯メールの存在が事件の引き金の一つであったことは間違いないだろう。

手話通訳者を介してでさえ、健常者とろうあ者間のコミュニケーションに齟齬をきたす可能性についても示唆されている。それは手話通訳者の能力上の問題ばかりではなく、ろうあ者の精神世界が健常者と異なっているからではないかと、著者は見る。また、根本的な問題として、手話を否定し、口語教育のみを是とするろう学校の教育上の問題が挙げられており、非常に考えさせられた。

読んでいて、かなり苦しくなる本ではあるが、真実の一端を知るという意味でもお薦めしたい一冊だ。

_ 近所の集まりに出た

ビール飲みまくって撃沈。帰宅して、夕飯時まで寝ていた。

ビールしか飲まなかったので、後には残らんかった。日本酒を飲むと、後が大変なんだよな。旨いんだけど。

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