ぽっぺん日記@karashi.org
2007-05-19(Sat) [長年日記]
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老人と宇宙 (ハヤカワ文庫 SF ス 17-1)(ジョン・スコルジー/内田 昌之)
各所で評判だったので読んでみたのだが、評判通り、非常に面白かった。
軍ヲタ的視点で見た場合、戦闘が歩兵同士の撃ち合いにほぼ終始していて、少々、軍事分が足りないような感じではあるのだが (近接航空支援も、砲撃支援も、装甲車両さえ登場しない戦争なんて!)、ストーリー展開が非常に面白く、読んでいる 最中はそういう欠点を感じさせずに、ぐいぐい引っ張っていくあたりは作者の筆力を感じさせる。なんとも凄い新人だと 感心した次第(ノンフィクション分野では実績のある人だと言うことだが)。
75歳以上の老人しか入隊できない軍隊という設定も効いている。一見、キワモノっぽい設定ではあるのだが、「善悪の区別なく、 ただ生存競争に勝ち抜くために戦争をする」という、なんとも実利的な性格のコロニー防衛軍に適応できるのは、 人生経験を積んだ老人以外にない、という設定は見事(参考:p.194〜195)。もし、若い主人公であれば、 精神的に追い詰められるような描写がなければ、リアリティに欠けるところであるが、本書では、登場人物が それほど悩まなくても、上記の設定があるので納得できる。
「21世紀版『宇宙の戦士』」と書籍紹介にも書いてあるのだが、多種多様なエイリアンが登場するあたりや、原理はなんだか分からないが 動いてしまう、エイリアンから入手した超絶テクノロジーというあたりで、「『宇宙の戦士』+デイヴィッド・ブリンの 『知性化』シリーズ」という印象を持った。訳者あとがきによると、SFについてマーケティングを充分に行なったとのことなので、 『知性化』シリーズにもインスパイヤされたんではないかと、個人的には思っている。もちろん、真偽のほどは不明だけど。
久々に理屈抜きで楽しめるSFだった。著者の続刊にも期待大。
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暗算の達人(アーサー・ベンジャミン/マイケル・シェルマー/岩谷 宏)
大学で数学の教鞭を取る教授であると同時に、ハリウッドで人気の数学マジシャンでもある 著者の暗算の楽しさを伝える本。
私は数学の素養がほぼゼロの人間なのだが、この本をもっと若い時に読むことができれば、 人生が変わったんじゃないか、というくらいのインパクトを受けた。
たぶん、この本を開いて、誰でも驚くと思うのが、「左から計算する」というアプローチ ではないだろうか。
83 + 29
を実際に暗算してみれば分かるが、学校で教えられた右から左という計算する方法よりも、 左から右に計算する方法の方が確実に速く、正確に計算できる。
ただ、個人的な話をすれば、この計算方法、実は初めて聞いたことではなかったりする。 ずいぶん昔になるが、NHKの特番で、数学の天才たちについての番組があり、そこで、この 「左から計算する」アプローチが紹介されていたのだ。しかし、その時の番組の扱い方が 「やっぱり、天才の考えることは違う」と言ったものだったのだ。本書を読んだ後であれば、 「別に天才じゃなくても、左から右へ計算した方が速い!」と断言できたのだが。 もしかして、あれが自分の数学観を変える一つのチャンスだったかと思うと、なんとも惜しい 気がする。
閑話休題。
「左から計算する」でビックリした後、読み進めていくと、さらにビックリするような 事柄に行き当たる。自分でも出来っこないと思っていた暗算が出来るようになるのだ。
数学的素養がゼロの私が(ほぼ)マスターしたと思う暗算を一部挙げておこう。
- 三桁以上の足し算、引き算
- 二桁同士の掛け算
- 二桁、三桁の二乗と三乗
正直に白状すると、元々の数学的素養がないため、さすがに本書の後半に登場する、 五桁×五桁の暗算になると、歯が立たなかったのだが、上記だけでも大したものだと 自画自賛したくなる。
大袈裟に感じると思うが、掛け値なしに書くと、上記の暗算が出来るようになると、 今まで半ば閉じていた瞼が開くような、世界が変わったような感じがするのだ。
もし、中学生くらいのお子さん、または知り合いがいる方は、本書をプレゼントをして 渡すのはいかがだろうか。その際、本書を読み、二桁×二桁の暗算でも諳じてみれば 完璧だ。もしかすると、本書をプレゼントされた人の人生を変えるくらいの インパクトとなるかも知れない。
- アーサー・ベンジャミン、マイケル・シェルマー
- ソフトバンククリエイティブ
- 1575円
livedoor BOOKS
書評/サイエンス

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街角のオジギビト(とり みき)
工事現場の看板に描かれた作業員──いわゆる「オジギビト」を分類・解説した本。
こういうマニアックな本を読むと、いつも思い出すのが
優れたマニアは、いいですか、立派なスペシャリストなんです。(石渡幸二『名艦物語』の解説より)
という言葉。著者がオジギビトの蒐集を始めて20年以上ということで、まさしくスペシャリストの仕事の集大成と 言っても過言ではないだろう。
読んでいて「へー」と思う本書なのではあるが、惜しむらくは笑いが足りない。
個人的には、とり・みきは 非常に文章が上手い人だと思っていて、笑いを取ろうと思えば、いくらでも面白い文章が書ける人だと 思うのだが、本書の文章は、アカデミックと言うと少々的外れかも知れないが、笑いのベクトルとは少し違う 方向を向いている気がして、そこら辺がなんとも惜しい気がした。この内容で、『愛のさかあがり』所収の オジギビト話くらいに笑えるものだと最高だったのだが。
いや、それっぽく見えるけど、実はテキトーなオジギビト系統樹なんて、かなりおかしかったけど。
不満点も書いたが、前掲の『愛のさかあがり』に収められらオジギビトの話が好きだった人であれば 確実に楽しめると思うし、路上観察学系統のものが好きな人も楽しめることと思う。



まで頂ければ幸いです。
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