ぽっぺん日記@karashi.org
2007-06-02(Sat) [長年日記] この日を編集
_ 痛いニュース(ノ∀`):“日本の怒り爆発!” 「国際捕鯨委員会(IWC)脱退も」 日本政府表明…新機関設立も
29 名前:名無しさん@八周年[] 投稿日:2007/06/01(金) 11:59:16 ID:KSFdn9Fq0 さすが日本だ、軍事やアジア関連だと弱気だが 食べ物の事になると一気に豹変するぜ。
すげー笑った。
捕鯨問題は、実はよく理解していなくて、あとで捕鯨問題 - Wikipediaあたりを読んでみる。
_ Concepts + Principles - プログラミングの原則 - Concepts + Principles - Top
素晴しい。
『達人プログラマー』、まだ半分ちょいしか読んでいないので、来週がんばろう。
っつーか、来週末はRubyKaigiやん!
_
沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫 JA ノ 3-9)(野尻 抱介)
宇宙開発SFを書き続けている著者の短篇集。実に6年ぶりの新刊になる。
収録作は下記の五篇。
- 「沈黙のフライバイ」
- 「轍の先にあるもの」
- 「片道切符」
- 「ゆりかごから墓場まで」
- 「大風呂敷と蜘蛛の糸」
ページ数としては短いものばかりなのだが、どれも素晴しい出来。各所で言われていることだが、まさに世界に通用するレベルだ。
実は、書下しの「ゆりかごから墓場まで」を除いて、既読のものばかりなんだけども、どれも非常に面白く読めた。たとえネタが分かっていても、楽しめるということは、それだけ作品のレベルが高いことの証左と言えるものと思う。
珠玉の収録作品の中でも、異星の知性体にメッセージを送るための手段と、ラストで示されるビジョンが壮大な表題作「沈黙のフライバイ」、それから主人公がエロスへの第一歩を踏み出したシーンで、思わず、こちらまで涙腺が緩くなる「轍の先にあるもの」が、個人的なお気に入り。
「ゆりかごから墓場まで」も素晴らしかったが、このネタは短篇だけでは惜しい。ぜひぜひ長篇まで書いて欲しいと希望する次第。
まぁ、なんにせよ、宇宙SF好きはマスト読め! な短篇集なことは間違いない。っつーか、SF者は、俺なんかが言うまでもなく、読んでいると思うけどね。
_ 英BAE、三菱重と戦闘機の生産ライセンス供与で交渉
むむむ。空自、タイフーン買うんかねー。
2007-06-03(Sun) [長年日記] この日を編集
_ URL書換をしていないtDiary対応のFilter::tDiaryCommentパッチ
htmlでアクセスしたいの方法で、URL書き換えを行なっていないtDiary向け。
--- tDiaryComment.pm.orig Sun Jun 3 19:24:07 2007
+++ tDiaryComment.pm Sun Jun 3 19:25:02 2007
@@ -20,7 +20,7 @@
$context->log(debug => "Found tDiary feed " . $args->{feed}->url);
for my $entry ($args->{feed}->entries) {
- if ($entry->link =~ /\.html#c\d+$/) {
+ if ($entry->link =~ /(?:\?date=\d+|\.html)#c\d+$/) {
# TODO: make it work with Plagger::Action framework
$context->log(info => "Strip comment " . $entry->link);
$args->{feed}->delete_entry($entry);
ちょこっと正規表現を書き足しただけ。
_ 午後は庭と畑の草抜きで過ごした
身体を使うと麦酒が旨いね(これが書きたかった)。
2007-06-04(Mon) [長年日記] この日を編集
_ LL魂のチケット、ゲット
10時ちょい過ぎに、10時からの受け付けだったのを思い出して、速攻で予約し て、昼休みに取りにいってきた。
_ HP SmartArray e200iの状態をFreeBSDで監視したい
[FreeBSD-users-jp 90695] Re: sysutils/smartmontools with SmartArray(HP ciss RAID)に書いてあったネタ。
こないだの丸ごと半額セールで導入した、HP ProLiant ML110に積んであるSmartArray e200iのステータスってどうやって調べればいいのかなと思っていたのだが、camcontrol(8)を使えばいいらしい。
手元のHP ProLiant ML110で、リンク先にある通り
# camcontrol inquiry da0
してみたところ、
pass0: <COMPAQ RAID 1 VOLUME OK> Fixed Direct Access SCSI-0 device
と、確かにRAIDのステータスが表示された。
あとは状態を調べる簡単なスクリプトを書いて、cronで回せば、とりあえず、監視ぽいことは出来るか。
2007-06-05(Tue) [長年日記] この日を編集
_ 作業用ノートPCのXorgを6.9から7.2へ更新
時間ができたので、愛用のDELL Latitude D610のXorgを6.9から7.2へ更新したのだが、 案の定、ハマってしまった。
更新には、packagesサーバで作っておいたpackageを使ったのだが、
- x11-fonts/font-misc-misc
- x11-fonts/font-cursor-misc
だけは、ターゲットマシンでportsからmakeした方がよさげ。さもないと、 /usr/local/lib/X11/fonts/misc/fonts.dirがきちんと作成されず、startxした際に
Fatal server error: could not open default font 'fixed' Fatal server error: could not open default cursor font 'cursor'
というエラーを吐かれることになる。これに気付くまで、ずいぶん時間がかかってしまった。
そんな訳なので、packageを使ってXorg 6.9 -> 7.2の更新をする場合には
- まず、packageで更新(portupgrade -aPP)
- それから、x11-fonts/font-misc-miscとx11-fonts/font-cursor-miscを更新(portupgrade -f font-misc-misc font-cursor-misc)
という手順を踏む必要ありそう。
_ security/keepassxをちょこっと使ってみた
Xorgのバージョンアップもしたことだし、せっかく(?)なので、security/keepassxをインストールしてみた(えれー、依存portsが多くて、ちとビビった)。
これはいい! 本家keepassとインターフェイスはそっくりで全然迷わんし、日本語もちゃんと表示されるしで、完璧。
これで、KeePassのデータベースファイルを持ち歩きのUSBメモリに入れておくなり、リモートサーバに置くなりしておけば、WindowsとFreeBSDでパスワード管理ができる。
結構、感動したので、やる気のないキャプチャーも取ってみた。
2007-06-06(Wed) [長年日記] この日を編集
_ KTermのカラーをいじってみたけれど、元に戻した
Xorg 7.2 アップデート記念ということで、KTermのカラーをこんな風にいじってみた。
.Xresourcesはこんな感じ。
KTerm*foreground: #000000 KTerm*background: #e5e5e5
でも、このカラー設定でrails.vimを使ったら、rails.vimのデフォルトのカラーだと、えらく見にくくなったので、元の色に戻した。
.Xresources:
KTerm*foreground: #ffffff KTerm*background: #000000
で、実はこのエントリ、xwd(1)でXのキャプチャを覚えたので、ただキャプチャを貼りたいがために、書いただけだったり。
_ SmartArrayの状態を確認するNagios pluginを書いてみた(失敗)
こないだの続き。
シェルスクリプトを書こうかと思ったけど、どうせなら、Nagiosで監視した方がよくね? という訳で、Nagios のPlugin をPerl で + NRPE(PDF)を参考にして、pluginを書いてみた。
でも、Perlを思い出すのが大変そうなので、Ruby。
check_smartarray.rb:
#!/usr/bin/env ruby
CAMCONTROL="/sbin/camcontrol"
def usage
print <<"END"
Usage: #{$0} device ...
END
end
def raid_status(dev)
`#{CAMCONTROL} inquiry #{dev}`.chomp
end
if ARGV.size == 0
usage
exit 1
end
ARGV.each do |device|
result = raid_status(device)
case result
when /VOLUME OK/m
print("OK")
exit 0
when /VOLUME inte/m
print("CRITICAL - One of Disk Array member disk is failure")
exit 2
when /VOLUME reco/m
print("OK - Disk Array is rebuilding...")
exit 0
else
print("UNKNOWN")
exit 3
end
end
で、動かしてみたところ、
camcontrol: cam_lookup_pass: couldn't open /dev/xpt0 cam_lookup_pass: Permission denied
と怒られた。
root権限がないとダメそうなので、
# chmod +s check_smartarray.rb
をしてみたけれど、やっぱり同じエラーで怒られる。
# chmod +s /sbin/camcontrol
をすりゃ動くんだけど、これもちょっとなー、というところでpending中。
_ ここ何ヶ月か、ツッコミを受け付けない設定になっていた
ふと、spamフィルタの設定を見直してみたところ、『ツッコミのメールアドレスが以下のパターンに当てはまる場合はspamとみなす』が
.*
になっていた。これじゃ、メールアドレス欄が空の時("")もspam扱いになっちゃうよ!
この設定で何ヶ月か動かしていたので、その間のツッコミは全部捨ててしまっていた。
そんな訳で上記を
.+
に変更。
もし、ここ何ヶ月か、ツッコミを頂いた方がいらっしゃたら申し訳ありません。m(_)m
2007-06-07(Thu) [長年日記] この日を編集
_
夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)(サラ・ウォーターズ)
夜愁 (下)(サラ・ウォーターズ/中村 有希)
かつて「このミステリーがすごい!」において、二年連続で海外部門一位に輝いたサラ・ウォーターズの最新作が本書『夜愁』である。
本書は、第二次世界大戦の戦中・戦後を通じて生きる人々の人間模様を綴った小説である。ミステリー小説ではあるが、 作中では殺人事件といった劇的な事象は起こらない。あくまでも登場人物たちの人生が描かれるのみなのだが、彼らが 心の闇に隠している真相や人物関係の謎が、過去が語られることにより徐々に明らかにされるという構成を見れば、 ミステリー小説であるということは納得できるものと思う。
物語は、戦争の傷跡が残る1947年のロンドンより始まり、1944年、1941年と時間を遡りつつ展開していく。 1947年の現在において登場人物たちは、日々を生きながらも、皆それぞれ、人生に閉塞感を覚えている。 たとえば、ケイは怪しげな医者の家の屋根裏部屋に住み、金や時間に不自由しない身でありながら、孤独で無為な毎日を過ごしている。 レズビアンのカップル、ヘレンとジュリアは互いの心がすれ違い始めていることを感じ始めている。 ヴィヴは、妻子ある男性との報われない不倫に悩み、ヴィヴの弟で、元服役囚であるダンカンは、「叔父」と奇妙な共同生活を送り、 自分が投獄される原因となった事件よって受けた心の深い傷に苦しめられている。
時代を遡ることにより、彼らがどのように出会い、どのような過去を抱えているかが、明らかになっていくのだが、 ここで注目すべきは、ストーリーが1941年で終わり、1947年に戻らないということである。解説において、若島正氏は下記のように 述べている。
通常の推理小説では、過去が解明されると、物語は現在に戻り、犯罪によって失われていた小説世界の秩序が一定の回復を見る。(p.331)
ところが、本書では、小説内の現在である1947年に視点が戻ることはない。つまり、閉塞感に包まれた1947年には何の救いももたらされないのだ。
上記の時代を遡るというストーリーが本書の大きな特徴の一つだとすると、もう一つの大きな特徴が、登場人物が隠す「規範からの逸脱」である。
特に同性愛については顕著である。たとえば、女性の登場人物のほとんどは同性愛者であるし、数少ない男性の登場人物も何人かは 同性愛的傾向を持っているように見える。若島正氏は本書に登場する同性愛について下記のように述べている。
国民が一丸となって戦争勝利という目的に邁進することを要求される時代においては、規範から逸脱することが非国民扱いされる原因になりえたのである。(p.330)
付け加えるならば、作中では直接言及されてはいないが、同性愛は当時のイギリスでは、懲役刑が下される可能性があるほどの重罪とされていた事実である。
たとえば、現代計算機科学の父と言われる アラン・チューリング は、戦争に勝利することに多大な貢献をしたにも関わらず、戦後、同性愛者だということが発覚すると、 収監はまのがれたものの、保護観察処分となり、女性ホルモンを投与されるという矯正処理を受け、遂には自殺することなった。
同性愛が犯罪であったという事実を認識すれば、作中で描写される、自殺、堕胎、良心的兵役拒否という、同様に犯罪とされていた行為が すべてリンクしていく。著者は、本作を通じて、戦時体制のイギリスがいかに個人の権利を抑圧していたのかを浮き彫りにしようと考えたのではないのではないかと思う。
出口の見えない現在と個人の権利を抑圧していた戦時体制下のイギリスを描くことにより、著者が語りたかったことは何なのか。 それはラストの情景に集約されているものと思う。元々、人生は出口など見えない暗いものなのだ。そんな人生だからこそ、また美しいものの輝きを見ることができる。 そのようなことを語りたかったのではないかと考えている。
本書は決して優しい小説ではない。何事かを雄弁に語り掛けてくる訳でもなく、心から楽しめたという読後感を提供する訳でもない。だが、読者は、本書を読むことにより、 本書からしか得るのことのできない感動を覚えるはずである。そのような感動を味わえるということこそ、読書の楽しみの一つであると思う。
心底、読書が好きな人にこそお薦めしたい作品である。
- サラ・ウォーターズ、中村 有希
- 東京創元社
- 924円
livedoor BOOKS
書評/ミステリ・サスペンス

2007-06-08(Fri) [長年日記] この日を編集
_ security/openssh-portableを入れると、zshでリモートホストのファイル名補完が使えなくなった
zshには、~/.zshrcで
autoload -U compinit; compinit -u
を指定しておくと、
% scp
まで打って[tab]を打つと、ホスト名を補完してくれて
% scp ホスト名:
さらに[tab]を打つと、リモートホスト先のファイル名まで補完してくれるという、すげー便利な機能があるんだけども、こないだsecurity/openssh-portableを入れてから、この補完機能が効かなくなってしまった。
今まで我慢していたんだけども、どうにも耐えきれなくなってきたので、下記の対策をとってみた。
- たぶん、/usr/bin/sshと/usr/local/bin/sshの二つのsshがある所為じゃないかと当たりを付ける。
- ひとまず、openssh-portableをpkg_deinstallしてみる。→補完が動くようになった! 俺の予想当たり!
- 対策をググってみる。→該当するサイトが見付からず、よく分からない。
- なんとなく、それっぽい、/usr/local/share/zsh/4.3.2/functions/Completion/Unix/_sshを読んでみる。→やっぱり、よく分からない。
- OVERWRITE_BASE付きでopenssh-portableをインストールしてしまう手もあるけど、やっぱりなんか怖いなと考える。
- やっぱり、openssh-portableは使わないで、別の代替手段を探そうかなと思う。
- security/autosshが良さそうな感じはしている。←今ここ
2007-06-10(Sun) [長年日記] この日を編集
_
新装版 アメリカの日本空襲にモラルはあったか―戦略爆撃の道義的問題(ロナルド シェイファー)
第二次世界大戦中、一般市民の殺傷を目的として、アメリカによって行なわれた日独に対する戦略爆撃。そのような作戦を立案した軍人、それを技術的に可能とした科学者、そして、最終的に許可した政治家といった人的要素について考察したものが、本書『アメリカの日本空襲にモラルはあったか』である。
冷静な視点で、戦略爆撃についてがどのように一般市民を巻き込むようになったかについて緻密に考察しており、高く評価できる一冊だった。
本書を読んで、驚くのが、米陸軍航空軍が、紆余曲折はあったものの、既に1920年代にはジュリオ・ドウエット(ドゥーエと呼ばれることも多い)の理論を基礎として、一般市民を対象とする爆撃を視野に入れていたことである。このような考えに基づき、アメリカは第二次世界大戦に参戦前である1941年夏には、一般市民への攻撃も含んだ戦略爆撃計画を策定することになる。
航空将校が心理的抵抗を感じることなく、上記のような計画を立案した(さらには、その後、指揮した)背景には、彼らが若手将校だった時に事故死がありふれたものであったことがあるという、著者の重要な指摘がある(p.29)。絶えざる死という現実に晒された結果、彼らは死について、諦観を覚え、より「現実的」になったという。
それを証明するものの一つが、1942年の東京初空襲を指揮したドゥーリトルが飛行教官だった時のエピソードだろう。ドゥーリトルが生徒を訓練している時、目の前で訓練生の飛行機が墜落した。ドゥーリトルは事故機に目を向けようとせず、別の生徒に「次!」と言った。それを見ていた別の教官にそのことを非難されたドゥーリトルは「死んだ子のことは今晩考える」と答えたと言う。
この結果として、彼らは第二次世界大戦中、「死とは敵軍ばかりではなく敵国市民の死でもあり、彼らの多くは敵国市民の死傷者を自分らの仕事の必然的結果として受け入れ(p.31)」るようになった。
しかし、たとえ死に慣れていたとしても、決して航空将校たちは性根から冷酷になった訳ではない。さらには、一般市民をも標的として爆撃計画には、軍人ばかりではなく、死に慣れている訳もない、科学者や政治家も関わっていた。では、なぜ、彼らは、敵国民だとはいえ、女性や子供を殺傷することに表立って異議を唱えた人間が少なかったのか。著者は社会心理学者アービング・L・ジェニースが「集団思考」と呼んだ心理的防御の集団的パターンを用いて次のように説明する。
集団思考の影響を受けた人々は、誤った認識に陥り、自己満足的、無批判的、非合理的なほど楽天的になった。彼らは(中略)スローガンやイデオロギー的な決まり文句を使って敵について討議した。異論をもっていたメンバーは(中略)表面上の合意を乱すことを恐れた。(p.260)
このような心理の元、ドレスデン大空襲と東京大空襲は実行され、広島と長崎に原子爆弾が投下されることとなったのである。
本書については、内容と同様に、その価格面においても高く評価されるべきだろう。300を超えるページ数でありながら、1,470円(税込)という価格設定は、旧版が2,625円(税込)であったこともあわせて考えれば、文句なしと言えるものだ。このような良書が手に入れやすい価格帯で販売されている意義は大きいものと思う。
ただ、本書にも難点はある。
まず、ホワイトハウスから連なる命令系統図もしくは組織図が掲載されていないこと。戦争を扱っている以上、様々な人名が登場するのは当然なのだが、誰がどのポストに就いていたのかが分からず、確認するためにいちいち前を読み返さなくてはいけなかった。読者のリーダビリティ向上のためにも、付録として、なんらかのチャートが欲しかった。
次に、発言や引用の出典が書かれていないこと。ノンフィクションとして信頼性を増すためにも、出典一覧は欠かすことが出来ないものではないのかと思う。*1
最後に──これが最大の問題だと思うのだが──本書のタイトル『アメリカの日本空襲にモラルはあったか』が内容に合っていないこと。日本と同じ程度のページ数で、ドイツへの戦略爆撃を論じていることや、原書のタイトルがWings of Judgment: American Bombing in World War IIであることを考えれば、『アメリカの戦略爆撃にモラルはあったか』くらいが適当ではなかっただろうか。
内容・価格ともに高く評価できるものだけに、上記の点は非常に残念だった。
最後に個人的見解を。
はたして、アメリカの日本空襲にモラルはあったのか?
答えはノーである。たとえ、米軍に道徳的な問題を感じた者がいたとしても、軍の方針が敵国一般市民の殺戮を容認するものだった以上、それは個人的な感情にすぎない。その点については非難されてしかるべきだろう。しかし、翻ってみて、日本が戦時中に軍の方針として行なった作戦にモラルはあったのだろうか。著者の言葉、
これまでの戦争で人々がお互いに対し何をしたか、どのように、なぜおこなったかをよく考える必要があるだろう。(p.303)
を念頭において、戦争という行為自体について、改めて考えてみる必要があるだろう。
戦争について冷静な視点で考えてみたい人にお薦めしたい良書である。
なお、本土空襲について、日本側から見た防空戦については
死闘の本土上空―B-29対日本空軍 (文春文庫)(渡辺 洋二)をあわせて読むことをお薦めする。東京大空襲の日、少数の邀撃機しか出撃しなかった理由をはじめとして、日本側の実態が良く理解できるものと思う。

新装版 アメリカの日本空襲にモラルはあったか―戦略爆撃の道義的問題
- ロナルド シェイファー、深田 民生
- 草思社
- 1470円
livedoor BOOKS
書評/歴史・記録(NF)

*1 原書にも出典一覧は掲載されていなかったのだろうか? 原書がアメリカで出版されたものであることを考えると、そうではないと思うのだが。
2007-06-11(Mon) [長年日記] この日を編集
_ Latitude D610のSpeedStepを有効にした
あまり必要性がなかったので、全然電源周りには無頓着だったのだが、ちょっとモバイルで使うかも知れないので設定してみた。
設定はttt: (FreeBSD)そのパソコン、無意味に熱くなってませんか? ――― CPUの消費電力を減らす方法を参考にさせて頂いた。マシンによっては、OSごとフリーズすることもあるらしいが、手元のD610ではOKだった。
CPUのクロック周波数を確認。
% sysctl -a dev.cpu.0.freq dev.cpu.0.freq: 1397 % sysctl -a dev.cpu.0.freq dev.cpu.0.freq: 873 % sysctl -a dev.cpu.0.freq dev.cpu.0.freq: 798
おおー、確かに下がっている。これでモバイルも大丈夫かな。
_ NAT経由でもOpenSSHがぶちぶち切れなくなった件
こないだ、NAT経由でOpenSSHを使っているとぶちぶち切れてストレスが溜まるので、Heartbeatパッチを当てたってな話を書いたら、
ServerAliveInterval じゃダメなんでしたっけ?
というツッコミを頂いたので実行してみたところ、ぶちぶち切れなくなった。ありがとうございます。> Takayamaさん。
あと、
PuTTYには標準でHeartbeat相当の機能があるんだよな。対応しているんだよな。OpenSSHも標準で対応して欲しいところ。
とか書いちゃってごめん。 > OpenSSH
ちゃんと対応していました。
そんな訳でこないだ検討したautosshは必要なくなったぽい。
2007-06-12(Tue) [長年日記] この日を編集
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アナンシの血脈〈上〉(ニール ゲイマン)
アナンシの血脈〈下〉(ニール ゲイマン)
個人的に大傑作だと思った『エメラルド色の習作』(SFマガジン2005/5号所収)の作者、ニール・ゲイマンの長編。
死んだ父親は、実は神だった! というトンデモ設定 + スラップスティックなノリの小説なんだけども、意外にも(失礼)、えれー面白くてびっくり。特に下巻の冒頭あたりから始まる大ドンデン返しが、まさにジェットコースター。ぐいぐい引っ張られまくって、一気に読んでしまった。
やっぱり、すげーや。 > ニール・ゲイマン
ただ、この価格は、どうにかならんかったのかねー。上下巻合わせて、3,890円という価格は、正直、高すぎ。実際に読んでみれば分かるけれども、余白が多めに取っている上、かなり大きめなフォントなので、1頁あたりの文字数がえらく少ないだよね。ヤングアダルト層を狙って、ハリーポッター・ブームで爆発的に増えたファンタジー系ハードカバーに判型を合わせてんだろうけども、一文字あたりの単価ということで考えると、コスト・パフォーマンスはかなり悪い。まぁ、世の中、文字数ばかり多くてつまらないという小説も大量にある訳で、楽しめただけマシかもしれないけど。
値段的にはアレだけど、楽しめたので、別のニール・ゲイマン作品も読んでみようと思う。
2007-06-15(Fri) [長年日記] この日を編集
英公文書館に眠っていた機密文書を基に、英国から見た第二次世界大戦前後の日本の姿を 照射するのが、本書『英国機密ファイルの昭和天皇』である。
「外套と短剣」とはスパイを表す代名詞だが(外套は合法活動、短剣は非合法活動を示す)、 本書を通じて明らかになる、英国のずば抜けた情報収集能力と分析能力は、まさに「外套と短剣」の国そのものである。 常に日本国内の同行に目を光らせ、日本に限らず、様々な暗号電を解読していた英国の能力には今更ながら驚かされる。
本書は戦前編および戦後編の二つのパートで構成されている。
戦前編の読み所は日米開戦を回避するために尽力した日英関係者のエピソードだろう。
日本側の動きでは、駐英大使を勤めていた吉田茂による中国問題に関する日英協調工作「吉田・イーデン秘密計画」が 目を引く。著者は英公文書館の文書から、従来、吉田茂のスタンドプレーとされていた工作が、 実は国内の穏健派グループの意を受けてのものであったという事実を発見する。計画自体は、盧溝橋事件を発端とする 日中戦争の勃発により成立することはなかった。今日的な視点で見ると、軍部が独走し、大多数の国民がそれを支持し、政府が追認するという 当時の構図があった以上、日英関係の改善により国際的な孤立を脱却するという穏健派グループの思惑は、他力本願にすぎる上、見通しが甘すぎたと 言わざるを得ないが、このような外交努力があったことを知ることは無駄ではないだろう。
一方、英国側では、1942年まで駐日英国大使を勤め、日英関係の改善のために骨を砕いたクレーギーのエピソードが印象的だ。 クレーギーは、日米和平を取り持つよう、度々本国へ進言するが、日米開戦を望んでいたチャーチル率いる本国政府に握り潰されてしまう。 結局、クレーギーの努力は実らなかった訳であるが、吉田茂を始めとするクレーギーと親交を結んだ日本人は、クレーギーが日本のために 尽してくれたことを忘れず、帰国後、チャーチルの不興を買い、不遇を囲うことになった彼に、戦後、様々な形で友情を示そうとする。 著者はこう書く。
現代は順風な時だけ親しく付き合い、逆境に置かれると交際を絶ってしまう者が多い。それに比べ、古き良き日本人の気骨を感じさせた。(p.134)
これこそ真の日本人の美徳であろうと思う。
戦後編でも、歴史に興味を持つ読者であれば、楽しめること請け合いの様々なエピソードが語られる。
占領下の日本に絶対的な権力を持ち君臨したマッカーサー率いるGHQに対し、皇室は終始、友好的な態度を崩さずも、 生き残りをはかるため、バチカンや英国とコンタクトを取ろうとしていたという事実や、立憲君主制を理解せず、独断で日本の政治体制を 強引に変えていこうとするGHQについて英国が苦々しく思っていたこと、また皇室との関係強化を試みるため、英国政府が 皇太子(現・平成天皇)の英語教師を送り込むことに強い意欲を持っていたエピソードなどが興味深かった。
著者は、現在の英国による対日工作についてこう著す。
今この瞬間にも、彼(引用者註:現・皇太子)をターゲットにした情報活動が深く静かに進んでいるはずだ。(p.223)
皇太子が英国に留学したのは、もしかして、対日工作の一環だったのだろうか。そんなことを勘繰ってしまった。
さて、本書には、昨今、そのダンディズムとGHQに逆らった反骨精神でちょっとしたブームである、白洲次郎が重要人物として登場する。 白洲次郎については、憲法改正論議とも絡み、ナショナリズムの一つのシンボルとして見なす動きもあるようであるが、 本書で語られる戦後の彼の活動の一側面は、日本人でありながら、まるで英国企業のエージェントであるかのようで、あまり好ましい印象は受けない。 その背景にあった心理は何なのか。 白洲次郎もまた、戦争に傷付き、苦しんだ一人の人間だったという事実を明らかにする本書を、もう一つの白洲次郎評として評価したい。
ただ、苦言を呈したいのが『英国機密ファイルの昭和天皇』というタイトル。 昭和天皇ばかりに焦点を当てている訳ではない以上、率直に言って、このタイトルは、本書の内容を的確に表現しているとは言い難い。 マーケティング的な要請があったのかも知れないが、もう少し内容に則したものに出来なかったのだろうかと疑問に思う。
また、あくまでも第二次世界大戦前後に焦点が絞られており、戦中の英国による対日工作についても読んでみたかった。 もし次回作があるならば、ぜひ、戦中について取り上げて頂きたい。
日米関係に比べ、あまりクローズアップされることのない第二次世界大戦前後の日英関係に光を当てたという点でも高く評価できる良書である。
- 徳本 栄一郎
- 新潮社
- 1470円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ

2007-06-16(Sat) [長年日記] この日を編集
_
ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき(井上 健)
シンギュラリティ(特異点)を真面目に考察しているのが本書。
SFマガジンの書評欄で紹介されていたので読んでみたのだが、600ページ + 60ページ強の解説という大著なので読むのにかなりエネルギーが必要だった。まぁ、でも、面白くて満足。
『ポスト・ヒューマン誕生』というタイトルではあるけれども、原書タイトルはTHE SINGULARITY IS NEAR: WHEN HUMANS TRANSCEND BIOLOGYで、内容の焦点はあくまでも人類が将来どのように変化していくかということにあって、『次の人類』について論じている訳ではないことに注意。
と言うか、p.495で『ポスト・ヒューマン』という言葉に、著者が否定的な意見を書いているにも関わらず、タイトルにそれを付けてしまうのは疑問だ。『特異点は近い』っつーう、そのまんまなタイトルの方が良かったんじゃないかねー。
本書内で語られるヴィジョンは、グレッグ・イーガンを読んでいる人間には、それほど突飛なものはないと思うんだけども、「2020年代には○○ができる」と断言されると、やっぱりSF者としてはドキドキしてきてしまう。2045年くらいには、人間を超える非生命的知性が生まれるらしいので、この目で見て、出来ればコミュニケーションを取ってみたいね。そんな訳で、俺も今のうちから健康維持に務めようと決意したのだが*1、不健康なSF者には「2045年くらいまで生きて、超AIと話そうぜ!」という健康促進キャンペーンを張るのはどうか、なんてことも思ったりした。
ちなみに、II型糖尿病と診断されたことがあり、心臓病の気もある著者は、毎日サプリメントを250粒摂取し、毎週6回、栄養補給剤を静脈内投与することにより健康維持を図り、56歳の時には、40歳の生物学的年齢だったそうだ。色々な意味で凄い。
ちと気になることを一点書いておく、この本の中での現在は2007年になっているんだけど、原書が出版されたのって2005年なんだよね。たぶん、内容のアップデートはせず、単にs/2005/2007/gをしただけなんだろうけども、誠意ある態度としては2005年のままの表記にして、「文中の現在は、原書出版年の2005年を指します」みたいな断り書きを入れることではないかと思った。
まぁ、色々あるが、SF者には強くオススメな一冊。3,150円(税込)という価格は、ちと高いけどね(内容の濃さから考えると、結構、お得な感じもするけど)。
*1 医療技術も漸進的に進歩するだろうけど。
_ 竹薮の掃除
電線に引っ掛りそうな竹を切る作業。暑いんで、えれー疲れましたよ。
2007-06-17(Sun) [長年日記] この日を編集
_ 第19回 Rails勉強会@東京
出不精な上、非コミュ指数が非常に高い俺なのだが、RubyKaigi2007で刺激されたので、Rails勉強会に出席してみた。 こういう勉強会は、実は初めてだったり。
結果から言うと、非常に楽しくて参加して良かったなー、と心から思った。
以下、内容とか感想とか。
初心者向けセッション(セッションオーナー:野口さん)
舞波さん(?)の上級者向けセッションにも興味があったんだけど、やっぱり身の丈に あっていないと、ということで初心者向けセッションに参加。
初心者向けと言いながら、IntegrationTestが話題の中心で濃い内容。高橋征義さんによるCSS SelectorによるTestの実演が見られて、非常にためになった。
以下、その時に書いた俺メモ。
IntegrationTestについて
- RoutingのTestも兼ねているよ。
- AWDwR 2ndで解説されているよ。
- 1stにはない。
- 2ndは翻訳が進んでいるという話。
- 舞波本でも、Integration Testは解説されている。
- なんで、WindowsでTestすると、起動が遅いの?
- Windowsだと、Rubyの起動自体が遅いよ。
- Integration Testは、どの環境でも遅いよ。
viewのテストについて
- DOMのelementの指定は面倒臭い。
- XQueryは複雑すぎ。
- XPathはTestに使うには、ちょっとショボすぎ。
そんな訳(上記、ちょっと間違ってるかも)でCSS SelectorによるTestが出来た。
CSS Selectorを使ったSample Test
elems = css_select("td")
elems.each {|elem|
assert_select "body h1", 2 # 失敗する
assert_select "table>tr td", "Recipe" # 失敗する
assert_select "body h1", "Online Cookbook"
}
Testの選び方について
- RSpecっていいの?
- もろはしさんに聞いてw
- テストに限らず、困った時になんとかしてくれる人が近くにいるものを選んだ方がいいかも。
- 自分で試行錯誤するのもおK。
- 自分がその「なんとかする人」になるのもおK。
- 英語がなんとかなれば大丈夫。英語を勉強汁!
その他
- Rails 1.1.6の時に書いたアプリが、1.2で動かなくなっちゃんだけど、どうに対応させればいい?
- 結構、大変なので、rake rails:freeze:edge TAG=rel_1-1-6して、vender/以下に、Rails一式をインストールしちゃった方が楽かも。
プラグイン完全攻略(セッションオーナー:瀧内さん)
プラグインの紹介、ではなくて、プラグインをどう作るか、というセッション。
もろはしさんのRSpecセッションにも興味があったんだけども、こないだプラグインを書いてみて面白かったので、こちらに参加。
瀧内さんによるプラグイン開発の実演。プラグインでActiveRecord::BaseやActionController::Baseにメソッドの追加の方法や、 うまくいかなくてライブ・デバッグ(笑)が見られて非常にためになった。
俺もワンステップ上のプラグインを作ってみたいなー。
以下、俺メモ。
Generatorプラグイン
- 文書化されていないのでソースを読むか、RDocを読むかしかない。
- route_resourcesの処理はかなり汚い。
- と言うか、route.rb自体があまりいけてない。
- 瀧内さんによるGeneratorプラグインの作り方-Hello, world!
かさたにさんのSafe ERBの紹介
- rhtmlでhメソッドを使っていないと、エラーを出すプラグイン。
- SQLiteには、今のところ、非対応。PostgreSQLとMySQLはおK。
- 今度使ってみる。
その他
- がんばれば、Railsは$SAFE=1でも動くって、どうがんばればいいの?
- zshの補完とglobは超強力。
- 瀧内さんによるzsh用script/generate補完関数
- screenのキーマッピングはどうしてる?
- C-tとかC-zとか(俺はC-z)。
- Piston(あとで調べる)。
懇親会
全然知り合いがいなくてあれだったんだけども、折角の機会なので閉会後の懇親会に出席した。
10人席に13人(だったかな?)入るという感じで、狭かったんだけども、個人的には距離がない分、話に参加できて良かった。
- RailsKaigiをどうするか。
- RailsKaigiという名前だと、RubyKaigiと比較されね?
- お客さんに「RailsはJavaの10倍の生産性なんでしょ」と言われ、納期や価格面で辛い条件を突き付けられた時、どう対応するか。
- LDRは素晴しすぎる(俺はGmail + Plaggerです、とマイノリティ発言をしてみた)。
みたいな話が出たような気がしたが、細かい話は酔ってて忘れた(ぉ
感想とか
- こういう勉強会に出るのは初めてだったのだが、非常にためになったし楽しかったので、次回も出たい。
- blogを読んでいる人たちの御尊顔が拝見できて、ちょっと感動した。
- 恥ずかしながら、高橋征義さんがSF好きとは知らなかったので嬉しかったり。
- 参加者のほとんどが俺より随分年下で、ちょっとビビった。
- 次回のポジションペーパーには、好きなプラグインを書くようにする。あと、高橋さんのマネをして、お薦めな本も書いた方がいいかも。
2007-06-18(Mon) [長年日記] この日を編集
_ 帰宅したら
Software Design (ソフトウエア デザイン) 2007年 07月号 [雑誌]が届いてた
第1特集はMySQL。ぱらぱらと読んでみたけど、my.cnfの日本語文字コード設定の記述がなさげ。あれで悩んだのは、もう一昔前の話なんかな。また、MySQLも本格的に使ってみよう。
第2特集は、wakatono氏 & nez氏によるネットワーク管理/運営。これはイイッ! あとでじっくり読む。
2007-06-20(Wed) [長年日記] この日を編集
_
北方領土交渉秘録―失われた五度の機会(東郷 和彦)
長年に渡り日露外交に関わった後、鈴木宗男事件の余波を受けて、外務省を去ることになった著者が 現在も継続中の北方領土返還交渉について著したものが本書『北方領土交渉秘録』である。
まず、はじめにお断りしておかなければならないのは、私が本書で扱われる、北方領土交渉について、ほとんど知識がないということである。 そのため見当違いのことを書いていると思われるが、その点は、どうかご容赦をお願いしたい。
本書を開き、まず驚かされるのが、その文章力の高さだ。
鈴木宗男と連座し、逮捕、起訴された外務省・元情報分析官、佐藤優の裁判で弁護側証人として証言台に立つことになったプロローグをはじめ、 著者が外務省を免官となり、海外で「亡命」生活を送ることになった経緯についての第1章、外務省に入省した著者がどのようにソ連・ロシア と関わるようになったかについて語った第2章は、プロの文章家顔負けの面白さだ。
著者が太平洋戦争開戦時の東条内閣および終戦時の鈴木貫太郎内閣で外務大臣を勤めた東郷茂徳の孫であることは周知の事実だと思うが、 外務省でロシアに関わることになってすぐ、母親、いせ(つまり、茂徳の娘)に終戦時のソ連について印象を聞いた時のエピソードが興味深い。 母親は「こんちくしょうだったよ」と洩らすのだ。著者は日露外交に対して、両国の信頼関係を築くべく多大なエネルギーを注ぎながらも、 片時もこの「こんちくしょうだったよ」という言葉を忘れることがなかった。
また、鈴木宗男事件の発端となった田中眞紀子の外相時代のエピソードも興味深い。田中外相は就任時の記者会見において、 それまでの日露外交の経緯を無視して1973年の田中角栄・訪ソの際の「田中・ブレジネフ共同声明」に日ソ関係を回帰すると 述べたのだ。田中眞紀子にとって、どれだけ父である田中角栄の存在が大きいものであるかを証明したエピソードではないだろうか。 ちなみに、著者は、この田中外相の回帰発言について意見を述べたため、彼女の不興を買うこととなり、欧州局長を罷免されることとなる(著者は 「田中大臣から欧州局長を解任する辞令を頂戴した」と柔らかく書いているが、実態はそうだ)。
続く、第3章から第14章までは、本書の本題と言うべき、ゴルバチョフ書記長就任以後の北方領土返還交渉が語られるのだが、 ここで著者の視点が一歩引いた俯瞰的なものとなる。もちろん、歴史を語るに当たって、俯瞰的な視線は必要とされるものだが、 本書の場合、著者が筆を抑えているような印象を受けるのだ。その証拠に、外務省を免官された後の、いわば「自由な立場」になった後の 第14章の文章の歯切れの良さは、プロローグから第2章までと同じものである。
著者が筆を抑えている理由は、本書のまえがきに見ることができる。著者はこう述べている。
当然のことながら、本記述を行うにあたって、進行中の平和条約交渉における日本の立場を害してはならないという観点から、また、交渉の相手となったロシア人の立場を傷つけてはならないという観点から、さらに、元公務員としての守秘義務という観点から、私の承知することのすべてを書くことはできなかった。(p.2)
日露の将来を今でも考えている著者の良識の高さが垣間見られるが、やはり一読者としては少々物足りないものが残る。 特に、鈴木宗男がどのような存在であったを示すエピソードや、プーチン大統領がサンクトペテルブルグ副市長を勤めていた際に、どのような経緯で訪日する ようになったを語ったエピソードなど、興味深いものが散見されるだけに、なおさら、その思いが強くなる。
そのような物足りなさを補完するのが、巻末に付けられた佐藤優の解説である。佐藤氏は、北方領土交渉をコンパクトにまとめつつ、著者の書かなか




英国機密ファイルの昭和天皇(徳本 栄一郎)
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