ぽっぺん日記@karashi.org
2007-07-15(Sun) [長年日記]
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完璧な赤―「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語(エイミー・B グリーンフィールド)
去年話題になった本だが、確かに評判通りの傑作だった。去年出版だが、今年読んだノンフィクションでは、文句なしにNo.1の面白さだ。
本書を一言で表すと「赤色染料から見た世界史」ということになるだろう。
16世紀のヨーロッパにおいて最も尊ばれた色が赤だった。王や貴族、枢機卿は好んで赤い衣服や装飾品を身に付け、染物職人たちはどれだけ鮮やかな赤を出せるかに鎬を削った。様々な赤色染料が試されたが*1、その一大変革となったのが、スペインに征服された新大陸よりもたらされたコチニールだった。『完璧な緋色』と呼ばれるほど鮮烈な赤を生み出すコチニール。しかし、スペインによって完全に独占されたコチニールは、非常に高価だったばかりか、その正体さえ判然としなかった。新大陸からスペインに運ばれるコチニールを狙って海賊*2が横行し、コチニールの秘密を探るため、密偵が暗躍する。
本書はそのような歴史とともに、コチニールに関わった人々の悲喜交々も鮮やかに描き出す。コチニールの詳細な姿を描写すべく顕微鏡を覗いた発明家たち、コチニールが植物か動物かの論争に決着をつけるため全財産を賭けたギャンブラー、自国の利益のため、植民地でのコチニール生産に血道を上げた人間、コチニールに代わる合成染料を求めた化学者たち*3。なんとも魅力的なエピソードに溢れている。
合成染料の台頭により、染料としての役割を終えたと思われたコチニールであるが、近年、合成染料の健康被害がクローズアップされ、また染料として復活を遂げている。
一体、コチニールの正体はなにか? ググれば、すぐに分かることではあるが、興を削ぐので控えておこう。代わりに、コチニールが利用されている製品を本書から引用しておく。
砂糖菓子、アイスキャンディー、ソーセージ、ヨーグルト、ジュース、アイスクリーム、アップルソース、プディング、チーズ、咳止めシロップ、頬紅、口紅、アイシャドー、カンパリ(p.307)
どれだけ我々の身近にコチニールが溢れているかお分かりになるだろうと思う。
歴史ノンフィクション好きにはイチオシの一冊。未読な方はぜひ一読を。壮大な赤色染料の歴史に誘われるはずだ。


まで頂ければ幸いです。
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