ぽっぺん日記@karashi.org
2007-07-31(Tue) [長年日記]
_
インドの虎、世界を変える(スティーブ・ハーン)
「本が好き」プロジェクトで経由して頂いた一冊。
ITから医療まで様々な分野のアウトソーシング先として注目を集めているインド。そんなインドのIT企業の中で、 革命的なビジネスモデルを実践していることで注目を集めているウィプロに迫ったノンフィクションが本書。 「ビジネス書は読んでも面白くない」と思ってきたのだが、実際に読んでみたら、本書はそんな偏見をぶっ飛ばすスゴイ本で、 一気に読了してしまった。やっぱり、読まず嫌いはいけないなーと反省すると同時に、こういう機会を与えてくれた「本が好き」 プロジェクトと英知出版には感謝。
ウィプロは元々、食用油を扱う企業だった。1966年、経営者である父の急逝より、留学先のアメリカより帰国した、現在の会長、アジム・プレムジ(なんと、当時21歳!)が舵取りを行なうことになったのだが、会社の財政状態は火の車だった。プレムジは、必死に経営を勉強し、会社の経営を立て直すとともに、1980年にはIT産業に進出。2006年には、24億ドルを売り上げるIT企業へ成長させた。現在、IT業界3位のランキングされ、新しいビジネスモデルを象徴する存在として注目されている。
本書では、ウィプロが実際に行なっている政策や業務プロセスを具体的に解説している。意外なようだが、 それほど特別なことを行なっている訳ではない。少し具体例を引いておく。
- 自社独自の価値観を持ち、それを実践する。また、名刺などに印刷して、顧客にもその存在をアピールする。*1
- どんな些細な不正であったとしても、露見した時点で、不正を犯した者はクビとなる。
- 経営について、裏工作等禁止し、秘密は一切持たない。すべてが公然と議論される(たとえトップに対してでも)。
- 必要以上のコストを削減する努力は、常に全社を上げて行なう。たとえば、臨時の出張は出来る限り少なくし、インド国内の出張には、誰であっても常にエコノミークラスを利用する。例外はない。
- 顧客には、常に最高の満足を与えるように努力し、単なる下請けではなく、「パートナー」としての地位を獲得できることを戦略目標とする。
- 他社によって確立された手法を貪欲に取り入れる。
- 社員には、訓練に次ぐ訓練をさせ、遊ばせる時間を作らせない。たとえば、営業担当は技術を知り、技術者は業界のことを知る訓練を施す。
もちろん、上記にしても、ここに上げなかった事柄にしても、一朝一夕でできることではない。しかし、決して不可能な訳でもない。強い意思と不断の努力で、どのような企業であっても、ある程度、実現できることではないかと思う。
ただ、個人的に、ちょっとマネできないと思ったのが、その働きぶり。本書によれば、ウィプロの幹部は、1日に20時間以上も働くことが珍しくなく、週末に出勤することもざらとのことだ。p.275〜277には、ある幹部の一日の行動が載せられている。4:45の起床から23:45に就寝まで、みっしりと仕事が詰まった様子には、少し眩暈がしてしまいそうだ。
インドの企業をいわゆる「外注先」としか見ず、そこから経営を学ぼうと考える日本人は、少ないかも知れない。しかし、本書を読むと、そのような姿勢は改められるべきだと強く感じる。著者はこのように説いている。
ウィプロをはじめとするインド企業は、不利な条件をすべて克服し、有力なグローバル企業へと成長を遂げた。学ぶ対象として、これ以上の会社はなかなか見当たらないはずだ。(p.323)
最近、一番注目を集めているIT企業は、なんといってもGoogleだろう。だが、率直に言って、Googleのビジネスモデルは、 あまりにも従来の企業のものとはかけ離れし過ぎていて、なかなか応用しづらいのではないかと思う。 その点、ウィプロのビジネスモデルは、まさに「地に足が着いた」ものだ。日本のIT企業は、Googleよりも先に、まず、ウィプロに 学ぶべきではないだろうか。個人的には、本書を通読して、数多くのビジネスに関するヒントが与えられたように感じている。
これから先、ますますグローバリゼーションが進み、世界のフラット化が拡大していくのは間違いないだろう。 現在、低賃金を利用したオフショアリングにビジネスの土台を置いているウィプロさえ、この状態が続くのは、あと2〜3年と見ているということだ(p.100)。 そのような状況の中で、インドや中国のオフショアリングに戦々恐々としているのではなく、「世界が俺たちの客だ」くらいの 意気込みを持ち、常に自らを改革し、果敢に世界に挑戦していく企業のみが生き残っていけるのではないか。 そんなことを考えさせられた一冊だった。
- スティーブ・ハーン、児島修
- 英治出版
- 1890円
livedoor BOOKS
書評/IT・Web

蛇足
本書の中で、ウィプロのブランド・イメージを改善するため、ロゴマークを変えたエプソードが紹介されているのだが、 残念なことに、その肝心のロゴが載せられていない。
実物は、ウィプロのサイトにて確認することができる。
*1 最近、企業の信条を「クレド」として表現することが流行しているが、それに似ているかも知れない。
_ 今日のできごと
- 雑用で一日終わる。仕事しなかったなー。
- 行きの電車で『グラミフォンの奇跡』読了。
- 帰り電車 + 帰宅してからの読書タイムで『映画欠席裁判3』読了。



まで頂ければ幸いです。
なぜ君は絶望と闘えたのか(門田 隆将)
007/ロシアから愛をこめて (創元推理文庫)(イアン フレミング)