ぽっぺん日記@karashi.org
2007-08-27(Mon) [長年日記]
_
自壊する帝国(佐藤 優)
新潮ドキュメント賞および大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した佐藤優の代表作。出版されたのは1年以上前だが、佐藤優の著作を読み始めたのは、ごく最近なので、本書も今頃になって読んだ。
外交官として在モスクワ日本国大使館に赴任していた著者が、巨大帝国であったソ連が内側から崩壊していくプロセスを自身が経験した視点より描いている ノンフィクションが本書。ソ連崩壊の実相に迫る、というよりは、若かりし頃の著者が、様々な出会いや事件を経て、 インテリジェンスのプロフェッショナルへと成長していく回顧録が中心なので、 『インテリジェンス・マスター 佐藤優の誕生』や『ヤング佐藤優の冒険』といった感じで、あまり肩肘凝らずに読める一冊となっている。
参議院議員だった頃のアントニオ猪木と一緒に、インチキ・フィクサーをウオトカの一気飲みで酔い潰させる、といった興味深い話が満載なのだが、個人的にツボだったのは『インテリジェンス 武器なき戦争』で紹介されていた 「ロシア人が理想とする夜の営みの回数は週16回」のエピソードの元ネタ(?)。
やはり、いくらロシア人男性でも週16回というノルマをこなすのは、歳を取るとともに段々とキツくなるらしい。 そうなると、女性の性欲は満たされなくなり、それが食欲へと転化し、
ロシア娘は17、18歳のときは誰でもとてもきれいだが、30代になると体重も三桁、つまり100キロを超える者が少なくない。(p.72)
というようなことになる。テレビで見るロシアのオバサンのコロコロ率がえらく高い理由がこれだと考えると、最高におかしい。
さらに、男性が毎日1回のノルマもこなしきれなくなると、恋人や妻には浮気する権利が生まれるとのこと。 ソチやヤルタといった保養地での浮気は黙認されるという文化なので、長い夏休みの間にそういった土地で浮気をしまくるらしい。うーん、なんというか、同じ地球上であっても、文化というものは全然違うということを再認識させられる。
最終章では、鈴木宗男バッシングを受けて、外務史料館に異動させられた著者が逮捕されるまでの様子が描写されるのだが、 ここは個人的に少しツッコミを入れたくなるところだった。
まず、著者宛てのメールが第三者へ転送されたことから、他の人間(著者によれば、外務省)にメールが盗み読みされていることが 発覚するというエピソードが書かれているのだが、個人的には、どうやったら、そんなミスをするんだろうか、と疑問。 著者宛てのメールを盗聴者が自分のパソコンで受信して、それをもう一度、著者に送信する? まさか。 サーバにログインしてメールボックスを直接読んだ方がずっとスマートだ。 だいたい、著者は「もともと電子メールは常に覗かれるという前提で通信をしていた」(p.407)そうだが、どんな内容のメールであったとしても、外交に関係する人間が暗号を使っていないということ自体が信じられない。
また、逮捕直前に、著者は自分のパソコンに保存されている友人からのメールを消去するのだが、*1 サーバ上のメールが残っているかも知れないと思いつつ、 「それは厖大なデータの中の一つである」(p.409)として確認しようとはしない。「私が検事だったら、フロッピーディスクやCドライブのハードディスクに残っているデータが、本人にとって重要なデータと思うだろう」(p.409)という計算らしいのだが、そんなに甘くはないだろうと思った。少なくとも、俺が検事だったら、パソコン、サーバ、どちらのデータも押さえるなあ。
インテリジェンスの第一人者の割には、コンピュータ関係の記述がちょっとアレな感じもするが、 基本的には傑作と言える本なので、未読の人には一読をオススメしておく。
*1 復元できないように消去ツールを使ったかどうかも疑問なのだが、それを置いておく。


まで頂ければ幸いです。
叛逆としての科学―本を語り、文化を読む22章(フリーマン・ダイソン)
ゲバルト時代 SINCE1966-1973 あるヘタレ過激派活動家の青春(中野正夫)