ぽっぺん日記@karashi.org
2007-10-05(Fri) [長年日記] この日を編集
_ acts_as_paranoidがrails-1.2.3非互換になったぽいので対処
基本的にpluginは
% ./script/plugin install -x
でtrunkを使うようにしているのだが、今日、作業マシンでsvn upしてレポジトリと同期をとったところ、acts_as_paranoid周りでエラーを吐くようになったしまった。
調べてみたところ、今日commitされた変更が
Update for Edge rails: remove support for legacy #count args
ということなので、rails-2.0向けの変更が入って、rails-1.2.3は非互換になったぽい。
という訳で、netswitch! - svn:externals のリビジョン固定を参考にさせて頂いて、railsアプリのルート・ディレクトリで、
% svn propedit svn:externals vendor/plugins/
してから、svn-propに
acts_as_paranoid -r2952 http://svn.techno-weenie.net/projects/plugins/acts_as_paranoid
を書き込み、
% svn up
してリビジョンを固定した。
やっぱり、pluginはリビジョンを固定してインストールした方が安全かなー。
参考
2007-10-06(Sat) [長年日記] この日を編集
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中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義(北野 幸伯)
本が好き!経由で献本して頂いたのだが、スゴイ本で、一気に読んでしまった。
モスクワ在住の国際関係アナリストである著者が、アメリカの覇権戦略とそれに対抗する中国・ロシアの戦略を初心者にも分かりやすい平易な語り口で解説しているのが本書。
語り口は易しくても、その切り方は大胆だ。
著者は、本書のはじめで、いきなり、
国民にとって金を稼いでくれるのがいい指導者、稼がないのは悪い指導者。(p.28)
(外交上の)国益とは金儲け(経済成長)と自国の安全である。(p.29)
と喝破する。 つまり、国にとって重要なのは、なによりも金であると言っているのだ。
その金儲けを実現するためにアメリカが行なっている世界戦略の2つの柱が
- ドル体制の維持
- 将来に渡る、石油や天然ガスといったエネルギー資源の確保
であると著者は述べる。
東欧や中央アジアの旧ソ連諸国で、民衆が民主化を求めて立ち上がったカラー革命は、 フランシス・フクヤマ著『歴史の終わり』の「リベラルな民主主義が政治の最終形態」という考え方の証左であり、 9・11からアフガン戦争、イラク戦争といった流れは、サミュエル・ハンチントン著『文明の衝突』の言うところの「キリスト教のイスラム教の対立」という文脈で語られることが 多いが、著者はそのような考え方を「インチキ」であり、「アメリカが自己の行動を美化するために、二人の理論を利用している」だけだと一蹴する。
では、著者の見立てはなにか?
カラー革命は、アメリカが石油や天然ガスを確保するために行なった謀略であり、イラク戦争や現在計画中とも言われるイラン攻撃は、石油の確保とドル体制を維持するために行なわれたというのだ。 一見すれば、巷に溢れるトンデモ本を思わせる展開だが、そこには著者の鮮やかな情勢分析がある。
著者の分析でも、特に、個人的に目から鱗が落ちたのが、アメリカがドル体制の維持に躍起になる理由として、巨額な貿易赤字を上げている点だ。 財政赤字と共に「双子の赤字」とも呼ばれるそれは、もしドルが基軸通貨から転落すれば、アメリカ経済を確実に破綻させてしまうものなのだ。 それを防ぐため、アメリカはドル体制に挑戦しようとする国には、軍事力を行使してまで、それを阻止しようとする。
たとえば、イラク戦争。フセイン政権は2000年より石油取引をユーロのみで行なうことを宣言した。これは明白はドル体制への挑戦だ。 2003年にイラク戦争が勃発し、短期間で首都バグダットは陥落。しかし、イラクの情勢は安定せず、いまだに出口の見えない混迷状態にあることは周知の事実だが、 ドル体制の維持という視点から見て重要なのは、2003年の段階で、アメリカがイラクでの石油取引をユーロ建てからドル建てに戻した、という事実だ。
そして、アメリカの次の目標ではないかと言われているイランも、また、石油取引をユーロ建てに転換しようとしていることで知られている。 著者は、アメリカにとってイランを本当に攻撃したい理由は、核兵器開発疑惑などではなく(実際、イランが核兵器を持つとしても10年近い歳月がかかる!)、ドル建てによる 石油取引を維持させることにあるのではないかと見る。
しかし、このような世界戦略に裏打ちされたアメリカによる覇権主義にも翳りは見えてきた。それが中露同盟である。 今までライバル関係にあった中国とロシアが同盟関係を結び、アメリカを覇権国家から引きずり下ろそうと画策しはじめたのだ。 そのために両国が行なった戦略が、中国による米国債の大量保有であり、ロシアによるカラー革命封じと、原油および天然ガスのルーブルによる取引開始だ。 なぜ、中露両国の戦略がアメリカの覇権国家としての地位を揺がしかねないものであるのかは、本書を読んで確かめて欲しい。深く頷けること間違いなしだ。
なお、最終章では、アメリカ対中露同盟の争いに、日本が巻き込まれた場合の対策について、いくつかの選択肢が提示されている。 それらは非常によく考えられており、対中および対露関係を考える上で必読といってもいいのではないかと思う。
最後に、著者の視線についても強調しておきたい。平易な語り口に騙さそうになるが、その視線は非常に冷徹なものだ。
たとえば、著者は以下のように述べ、将来、日本が国際社会というゲームにおけるパワー・プレイヤーになることはないと断言している。
バブル崩壊後も「21世紀は日本の時代だ!」などと言う人がいました。 そう言いたい気持ちもわかります。私も祖国日本を愛していますから、そういう希望的な言葉を言いたい。 しかし、予測・分析する立場としては、真実を語らざるを得ません。日本は覇権国家になれないのです。(p.91)
また、憲法九条改定*1にも触れているが、 アメリカがイランに対して戦端を開かないことを見極めてからにするべきだと書いている。その理由は、平和憲法の理念などとは、一切関係がなく、
10億人のイスラム教徒を敵にまわせば、日本でテロが起きるとか、外国で日本人が殺されるとか、いろいろな実害が出てきます。(p.230)
という限りなく現実的なものによる。このような冷徹な視線があるからこそ、本書で提示されているような、大胆な切り口で世界情勢を見ることができるのではないだろうか。
著者はあとがきでこう述べている。
この本は、皆さんの視点を世界の指導者レベルまで一気にひきあげる目的で書かれています。(p.251)
この言葉が正しいかどうかは読者に判断して欲しいが、個人的には良い線をいっているのではないかと思う。 値段は,575円(税込)という、濃い内容と比較すれば、安価といってもいい価格であるし、ページ数も2〜4時間程度で読み切れる、ほどよい長さだ。 それだけのお金と時間で世界情勢の深い部分を理解することができる本書は、非常にコストパフォーマンスが高い本ということができるだろう。
現在の国際情勢、そして、これからの日本の進むべき道を知りたい人に強くオススメしたい一冊だ。

中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
- 北野 幸伯
- 草思社
- 1575円
livedoor BOOKS
書評/社会・政治

*1 ただし、個人的には、安倍政権の退陣によって、九条改定がなされるとしても、かなり先のことになるのではないかと思う。
2007-10-07(Sun) [長年日記] この日を編集
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空中雷撃―覇者の戦塵1943 (C・Novels 41-36)(谷 甲州)
待ちに待った「覇者の戦塵」シリーズ新刊。前巻から実に2年半ぶりの続刊だ。
ここ何冊か、派手目の話が続いたのだが、今回は今までに輪をかけて地味なストーリーだ。なんと本書には戦闘シーンが皆無で、作中、一発の銃声も聞かれない。
戦闘シーンの代わりに、本書では二つの静かな戦いが展開される。
一つが、前巻登場した長距離噴進爆弾──丸大兵器の開発に携わる技術者たちの戦い。もう一つが、傍受した無線より米海軍空母部隊の配備状況を探ろうとする海軍通信隊の情報士官たちの戦いだ。
特に後者が熱い! 低い暗号解読能力を補うべく、傍受無線に現われるコールサインや電波の波形、受信状況から空母の規模を推論していくのだ。 このミステリー小説さながらの展開の巧さは、著者の真骨頂と言えるものだろう。
個人的には、気配を感じさせず、食事を用意から片付けまでしてしまう飯岡部長夫人に、呆然としっぱなしの深町中佐も、また読みどころだと思う(笑)。
あとがきによれば、年内に次巻完成を目指すとのこと。谷甲州先生には、弱気にならず、がんばって頂きたい。
_ 耕耘機の整備をした
今使っている耕耘機は、購入してから2年近く、エンジンオイルの交換さえしていないという体たらくなので、一念発起して、整備をすることにした。
エンジンオイルの交換は、
- 物置にあったエンジンオイルが耕耘機のエンジンに適合するものかどうか、よく分かれず、ググらないといけなかった(参考:規格-エンジンオイルの規格やグレードって?)。→ 大丈夫ということが分かった。ちなみに使ったエンジンオイルはSJ級 10W-30 CF
- ドレイクプラグがあまりにも固く締まりすぎていて、ソケットレンチを一本ダメにしてしまった。
- どうにかドレイクプラグを抜いたものの、ワッシャーを廃エンジンオイル受けにしていた缶の中に落としてしまい、手を突っ込んで探すハメになった。
といったトラブルはあったものの、なんとか終了。その他、エアフィルターも灯油で洗浄した。
ミッションオイルも交換したかったが、適合するものを持っていなかったので、次回。
整備状況の写真をデジカメで撮ろうかと思ったのだが、手がオイルでドロドロなので、今回は見送った。ちと残念。
機械いじり、と言うところまでいっていないレベルの作業だけども、これだけでもかなり楽しかった。また、やろう。
_ 手からオイルの臭いが取れない場合は、台所用洗剤で洗えばいいらしい
エンジンオイルでドロドロになった手を石鹸で洗っても、なかなか臭いまでは取れないので、妻に相談してみたところ、「台所の洗剤で洗えば?」という答え。
そんな訳で、流しにあった台所用洗剤(ママレモンみたいなヤツ)で手を洗ったところ、見事に臭いまで取れた。すげーや。
油汚れを落とす洗剤なのだから、まぁ、効くだろうな、と納得。
2007-10-08(Mon) [長年日記] この日を編集
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自分の小さな「箱」から脱出する方法(アービンジャー インスティチュート/金森 重樹/冨永 星)
スゴ本のdainさんが絶賛されていたので読んでみた。
簡単に書けば、「自分が相手にしてやれるなーと思ったことは、やった方がWin-Winの関係になれる」ということを語っているのが本書。もし、相手にしてやれることをやらなかった場合、その責任を相手に転嫁し、相手に対して心を閉ざすことになる。これを本書では「箱に入る」と称している。
心の底では分かっていても、言葉に出来ず、もやもやしていたものをずばり書いていて、なかなか感心したのだが、かなりまわりくどく書いてあって、うーん、と思わないところがないではない。要領良くまとめれば、たぶん、50ページくらいに収まるんじゃなかろうか。まぁ、ページ数が多い方が説得力は増すとは思うけども。
ちなみに、本書を読んで、自分が家庭もしくは職場の平和を脅かしている存在だとは思わなかった。もうちょっと色々と気を効かせた方がいいな、とは思ったけれど。もしかして、俺ってリア充なんだろうか。それとも、ただ単に鈍感なだけか。
実際のところ、自分とはどうしても気が合わない人間がいるのが世の中だと思うので、本書の内容を盲信するのは危険だと思うが、人生の指針の一つとして一読をオススメしたい一冊だ。
2007-10-11(Thu) [長年日記] この日を編集
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犬はきらい? わたしを変えたダメ犬サーシャの物語(エミリー ヨッフェ)
去年、愛犬が天寿を全うして、ちょうど一周忌になる頃に本が好き!にエントリーされたため、なんとも言えない運命を感じて献本して頂いた本。
猫好きだった著者が、娘にせがまれて、渋々飼うことにした犬──ビーグルのサーシャが巻き起こす騒動記が本書。 このサーシャ、その愛くるしい外見とは裏腹に、やることは、とんでもない。 名前を呼んだら、駆け寄ってくるどころか、逆に逃げて行くなんていうのは序の口。著者のブラジャーまで含めて何でも食べてしまうわ、いくらトイレをしつけても一向に覚えず、カーペットやベッドにおもらしをするわ、隙を見ては脱走を試み、決して後ろを振り向くことなく、どこまでも突っ走ってしまうわと、なんとも手のかかるお嬢さんなのだ。
本書によれば、これは(程度の差こそあれ)サーシャ特有の行動という訳でもないらしく、ビーグルという犬種自体が、実はとんでもなく手間のかかる犬だということらしい。著者がサーシャを引き取った、捨てビーグル専門のボランティア組織、BREW──『ビーグルの保護、教育と福祉の会』──のWebサイトには、このような注意書きがあるそうだ。
訓練が楽、よく言うことをきく、トイレのしつけが簡単、室内を荒さない、ジョギングやフリスビーを一緒に楽しめる──そんな犬が欲しいならビーグルはやめておけ(p.31。強調は引用者)
幸か不幸か、ビーグルを飼ったことがないのだが、ホントに、ビーグルはそんなに「スゴイ」犬なんだろうか。ぜひ、経験者に聞いてみたいところだ。
著者とサーシャのバトルと、サーシャと暮らすうちに、徐々に犬がいかに素晴しい動物であるかに気付き、遂には、捨て犬の一時預かりまでをしてしまうほどの犬好きになってしまう著者の心境の変化を読むだけでも充分に面白いのだが、本書のさらなる魅力となっているのが、犬と犬をめぐる人々を、著者の職業であるライターの視点とウィットに富んだ語り口で綴っている点だろう。
たとえば、全米ボストンテリア選手権の見学記(なんとボストンテリアは、すぐに目が飛び出してしまうらしい!)、犬たちとテレパシーでコミュニケーションを取ろうとするワークショップに参加した時の体験記(完全にトンデモ!)には思わず笑ってしまい、麻薬探知犬や爆発物探知犬といった各種探知犬を訓練する訓練士が自分の行儀の悪い飼い犬には手を焼いているエピソードや、犬の歴史の権威である大学教授が、実は自分で犬を飼うことには自信がないといった話には「へー」と関心してしまった。
犬に関する頷けるエピソード、役に立つエピソード、吹き出してしまうエピソードが満載なので、犬を飼ったことがある人やこれから飼おうとしている人には、ぜひ、一読をオススメしたい。
本書に関する唯一、残念な点は、訳者あとがきがないことだ。 個人的には、訳者がその本について、どのような感想を抱いたかをぜひ知りたいと思う。
そろそろ新しい家族の一員として、次の犬を迎え入れたいと思っているのだが、本書を読んで、ビーグルは避けた方が無難かも知れないと思ってしまった。まぁ、出来の悪い子ほど可愛いとも言うけれど。うーん。
- エミリー・ヨッフェ
- 早川書房
- 1400円
livedoor BOOKS
書評/ライフスタイル

2007-10-13(Sat) [長年日記] この日を編集
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ラヴクラフト全集 別巻上 (8) (創元推理文庫 F ラ 1-8)(H.P.ラヴクラフト)
本が好き!経由で献本して頂いた。
ラヴクラフト全集は既刊の全7冊を持っていて、本書も買おかどうか迷っていたところだったので、非常にタイムリーだった。 自由になる金が少なかった中学生時代に、クトゥルフ神話にハマって、古本屋でラヴクラフト全集や青心社のクトゥルー神話体系を探し回った時のことを考えると、 こうしてラヴクラフト全集の新刊を献本して頂けるということには、なんとも感慨深いものを感じる。
ちなみに、その時の癖はいまだに抜けておらず、クトゥルフ神話関連の書籍を古本屋の105円の棚で見掛けると、もう持っているにも関わらず、 どうしても「保護しないといけない」という気がしてしまい、つい購入してしまう。たぶん、一種の病気だ。
さて、ラヴクラフトと言えば、数多くの添削や共作を手掛けたことで有名だ。 特に、添削については、元の原稿に書かれていた内容が残らない──「添削」と言うよりは「リライト」と称した方がいいほどの徹底だったことに加えて、遊び心で、クトゥルフ神話に登場する神々の名前を挿入するいたずらをしていたことも知られている。添削される側から見れば、ちょっと困った人だったのではないだろうか。
ラヴクラフト全集自体は全7巻で完結しているが、本書と、続く下巻の2冊は別巻という位置づけで、そんなラヴクラフト以外の作家による作品で「程度の多少にかかわらず、ラヴクラフトの手の入った」(本書紹介文より)ものを執筆年代順に収めている。 他のアンソロジーで既出の作品も、いくつか見られるとはいえ、ラヴクラフト全集というシリーズを「全集」の名にふさわしい完成度高めようとする、訳者である大瀧啓裕と創元社の努力は評価されるべきだろう。
ただ、収録作自体は、率直に言って、玉石混淆ではある。クトゥルフ神話作品が少ない上、訳者特有の古風な訳文ともあいまって、正直、退屈すぎて読み進めるのが辛い作品もあった(『這い寄る混沌』や『罠』)。 しかし、本書は「全集」であって、「傑作選」ではない。ラヴクラフトの「歴史」を知るということに本書の意義があるのだろう。そういう意味で、本書に収められた作品の質を云々するのは野暮というものかも知れない。 まぁ、自腹を切って本書を買うような、筋金入りのラヴクラフト・マニアには書くまでもないことではあるが。
なお、上巻である本書には、各収録作の解説が含まれていない。 各作品に、どの程度、ラヴクラフトが関与しているかが解説されているであろう下巻での出版が待ち遠しい。

ラヴクラフト全集 別巻上 (8) (創元推理文庫 F ラ 1-8)
- H.P.ラヴクラフト、大瀧 啓裕
- 東京創元社
- 777円
livedoor BOOKS
書評/ミステリ・サスペンス

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サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ (ミステリ・フロンティア 32)(大崎 梢)
本邦初の本屋ミステリー第3弾。 前巻は長編だったが、本書では、第1弾と同様の短編集に戻った。
あいかわらず、本屋好きの魂を刺激する話が満載で楽しめた一冊。
ちょっとした謎解きと共に、書店業務の舞台裏が描かれているのが本シリーズの魅力だが、本書では、「バイト金森くんの告白」に書かれた、返本する雑誌の付録は書店側で処分するという話(ゴミとして分別をしないといけないので大変らしい)や、表題作「サイン会はいかが?」に描かれたサイン会を開催するまでの流れが、へぇーという感じで面白かった。
個人的に一番気に入った作品は、本屋での落とし物探しを描いた「ヤギさんの忘れもの」。僅か22ページという長さではあるが、落とし物があった意外な場所と、多絵の最後の一言がなんともいえず良い。
2007-10-14(Sun) [長年日記] この日を編集
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運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術(ジェフリー S.ローゼンタール)
本が好き!経由で献本して頂いたのだが、これはスゴイ本。
統計学教授にして、アマチュアミュージシャン、プログラマ、即興コメディ・パフォーマーという異色の経歴を持つ著者が、日常生活と確立や統計との関係を関係を示すとともに、
さまざまな結果が現れる可能性についてロジカルに考えることで、より賢明な決断をし、人生をより深く理解することができる(p.14)
ことを、数学が苦手な読者でも分かるように、平易な表現で教えてくれるのが本書。 『暗算の達人』が面白く読めた人であれば、確実に楽しめる本だ。
先に著者の経歴を「異色」と書いたが、『暗算の達人』の著者の一人、アーサー・ベンジャミンが数学科教授であると同時にマジシャンであることを考えれば、それほど特異という訳でもない。もしかすると、数学の才能とパフォーマンスの才能とは、意外と近い関係なのかも知れない。まあ、今思い付いたことなので真偽は不明だが。
本書がカバーしている範囲は、新薬の臨床試験の効果判定や、犯罪発生率が本当に上がっているかどうかの判定の仕方といった真面目なものから、「カタンの開拓者」を上手にプレイするコツや、じゃんけんの達人と対等に勝負する方法といった軽いものまで、多岐に渡っている。
どれも面白く読んだのだが、 特に興味深かったのが、第3章と第4章に書かれた、カジノで行なわれるギャンブルに隠された確率の話。
ルーレットやポーカーやブラックジャックといったポピュラーなものから、あまり日本人には馴染のないキーノやクラップスなど、数々の例が上げられているが、共通しているのが、どれも50%よりコンマ何パーセントか上くらいの絶妙な確率でカジノ側が有利なように調整されているということ。この確率では、当然、客の中にゲームに勝つ人間も出てくるが、ランダムな出来事も回数を重ねると平均値に近付いていくという「大数の法則」により、ゲームを繰り返せば繰り返すほどカジノ側が勝つ可能性が高くなるという。 なにしろ、カジノは、そのために確率の専門家を雇っているというのだから、それも当然だ!
著者によれば、スロットマシンの勝率について「カジノの経営者がいかさまをしていないと信じるしかない」と書いているが、スロットマシンのメーカーが公表するところでは「平均すると賭け金の八八%から九五%を客が回収できるとしている業者が多い」とのことだ。つまり、「スロットマシンで一〇ドルを賭けると、五〇セントから一ドル二〇セント失うことが見込まれる」ということになる。
日本のパチンコやパチスロなどの勝率がどれくらいに設定されているかは知らないが、店側が有利なようになっていることは確実だろう。また、競馬の勝率についても、胴元であるJRAが有利になっていることを推測することは難しくない。 昔から「ギャンブルでは家が建たない」なんてことが言われるが、それの数学的な証明と言えるだろう。
本書では他に、『暗算の達人』でも触れられていた「モンティ・ホール」問題──三つあるドアのうち、どれか一つの後ろに自動車がある。三番目のドアの向こうに何もないことわかっていたら、どのドアの向こうに自動車がある可能性が高いか?──に関する説明や、日々メールをやり取りする人であれば、たぶんお世話になっているはずの、spamメールフィルタで使われているベイズ統計の解説なども含んでいるので、そのあたりに興味がある人も面白く読めるはずだ。
なお、最終章に掲載されているしめくくり問題は、本書を読み終えた人であれば吹き出してしまう内容なので、本書読了後、ぜひ挑戦して欲しい。
『暗算の達人』が面白かった読者にはもちろんのこと、確率について知りたいと思いつつも数学が苦手な人や、これからの人生で遭遇であろう、選択に迷ってしまう問題への指針を得たい人にオススメの一冊だ。
- ジェフリー S.ローゼンタール、中村 義作、柴田 裕之
- 早川書房
- 2100円
livedoor BOOKS
書評/サイエンス

2007-10-17(Wed) [長年日記] この日を編集
_ 打海文三先生、逝く
打海文三の”パンプキン・ガールズは二度死ぬ”: 重要なお知らせを読んで驚愕。打海文三先生が10月9日に亡くなっていた。ものすごいショックだ。『裸者と裸者』シリーズの続きが、もう読めないなんて……。残念で仕方がない。
打海文三先生、数々の傑作をどうもありがとうございました。
心からご冥福をお祈り申し上げます。
合掌。
2007-10-18(Thu) [長年日記] この日を編集
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雲上都市の大冒険(山口 芳宏)
昭和27年、東北の鉱山街・四場浦鉱山の奥底の地下牢で、ひとりの男が20年来の復讐の炎をたぎらせる。そして巻き起こる連続殺人事件。脱出不可能な地下牢から男はどう脱獄したのか? 事件を解き明かすために、眉目秀麗で気障な荒城咲之助、近未来的な義手を持つ真野原玄志郎、さらに弁護士の私・殿島直紀が驚愕の脱出トリックに挑む。(東京創元社の紹介文より引用)
本が好き!経由で献本して頂いた。
第17回鮎川哲也賞の受賞作が本書『雲上都市の大冒険』だ。 鮎川哲也賞と言えば、比較的硬派な本格ミステリを扱う新人文学賞というイメージがあるが、本書はそんなイメージを覆す、ぶっ飛んだ怪作(バカミス?)で、色々な意味でびっくりさせられた。 本書の巻末には、選考委員である笠井潔、島田荘司、山田正紀、三氏の選評が掲載されているが、そこからは本作を受賞作とするかどうかについて、かなりの逡巡があった様子が窺える。
本書の時代設定は昭和27年ということだが、はっきり言って時代考証はめちゃくちゃ。本書の舞台である四場浦鉱山は、東北の山奥であるはずなのだが、すべての登場人物は方言ではなく標準語を喋るし、女性たちには田舎っぽさの片鱗もなく、垢抜けた美人ばかり。島田氏が選評で「受賞どころか出版さえ危ぶまれる」と書くのもむべなるかなという感じのいい加減さである。
さらに、文章についても、初盤でのぎこちなさはかなり目につく。 小説と言うよりは、まるでアドベンチャー・ゲームでのコマンド選択と、それに対してのリアクションを読んでいるかのような違和感を覚えた箇所も多々あった。著者のプロフィールによれば、ゲームライター/シナリオライターとのことだが、その悪い面が出てしまったと言えるかも知れない。
しかし、「なんだかなー」と思いつつ、我慢して読み進めていたのも、だいたい100ページくらいまで。 そこから先は、著者の筆のノリが格段に良くなり、非常に楽しく読めるようになる(まあ、読み手であるこちらが慣れて、細かな点には拘泥しなくなったということもあるかも知れないが)。 特に、探偵役の一人のセリフ、
「もちろん、犯人をぶっ殺しに行くんですよ」(p.226)
を読んでからは、もう完全に作品世界に没入し、ぐいぐい引っ張られるままに、一気読み。
本書の読み所はなんと言っても、20年間に渡り地下牢に幽閉されていた男──座吾朗の脱獄トリックだろう。このトリックが成立するか否かと問われれば、まず無理と答えるが、前代未聞の大トリックであることは間違いない。このトリックの真相を読むだけでも、本書を読む価値があるのではないかと思う。 真面目な本格ミステリ・ファンの中には怒り出す人もいるには違いないと思うが、個人的には「すげーバカミス!」と喜んでしまいました。はい。
作品の内容とは関係ないが、本書の装丁が非常に良かったので、そこにも触れておきたい。装丁の中でも、特にカバーデザインは、作品の特色をよく表した装画とマッチして、非常にセンスの良いものに仕上がっている。また、実際に持った感触も、エンボスの入ったカバーにより特筆ものの心地良さだ。カバーデザイナーを調べてみたら、予想通り、岩郷重力+WONDER WORKZだった。彼らの仕事のクオリティの高さには毎度のことながら驚かされる。
色々と欠点がある本書ではあるが、そこには荒削りながら、本格ミステリの新しい世代誕生の気配が感じられる。 新人賞への応募作でありながら、次回作の予告とも取れる文章を書いてしまう大胆不敵な著者には、ぜひ予告通り続篇を書き、次世代の本格ミステリを見せて欲しい。
ちなみに、真野原の義手の元ネタは、仮面ライダースーパー1のファイブハンドではないかと思ったのだが、どうだろうか?
- 山口 芳宏
- 東京創元社
- 2310円
livedoor BOOKS
書評/ミステリ・サスペンス

2007-10-19(Fri) [長年日記] この日を編集
_ 宅ファイル便の送信容量が100Mバイトに拡大 - ITmedia Biz.ID
仕事でよく宅ファイル便を使うので、これは嬉しい。
2007-10-21(Sun) [長年日記] この日を編集
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国家の自縛(佐藤 優)
『国家の罠』の後に出版された佐藤優氏へのインタビュー集。『国家の罠』では書かれなかった佐藤氏の本音を引き出していて興味深かった。
『国家の罠』を読んだ際に、行間から透けて見える「海外逃亡」をした東郷和彦氏に対するわだかまりを感じたが、この本では、その思いが率直に語られている。
出版が2005年なので、記述に多少古い点も見られるが、佐藤氏の国家観や神学に対する考え方、国際政治に対する見立てなど、佐藤氏の『頭の中身』を知ることができる一冊だ。
2007-10-22(Mon) [長年日記] この日を編集
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生き物たちの情報戦略―生存をかけた静かなる戦い (DOJIN選書 11)(針山 孝彦)
本が好き!経由で献本して頂いた。
生物学者である著者が、生物の「環世界」を知ることの重要性を示しつつ、多様な生物の在り方を教えてくれるのが本書。
環世界とは、生物がまったく同じ環境に置かれていたとしても、それぞれの種はそれを大きく異なった独自の世界として認識しているという考え方だ。 5億5千万年前のカンブリア紀における進化によって生まれた、生物間の「食うか食われるか」の食物連鎖という相互関係の中で、生物は骨格の発達により素早く移動する術を身につけ、眼をはじめとする感覚器や脳や神経といった情報処理器を発達させた。それが環世界の構築に繋ったと、著者は述べる。
3章以降では、太陽を指標として陸と海の方向を見定めるトビムシをはじめとする多様な生物の驚くべき能力が紹介されているのだが、その中でも、特に面白かったのが7章で紹介されているベニツチカメムシのナビゲーション行動。 ベニツチカメムシは、巣から出た後はジグザグに歩くにもかかわらず、食料である植物の実を見付けると、そこからから一直線に帰巣する。 様々な実験から、ベニツチカメムシが10メートル近く上の木の枝や葉がつくり出す模様を見ているらしいことが示唆されていて、非常に驚かされるが、それを知るために、蒸し暑い森の中でテントを張り、這いつくばってベニツチカメムシを観察している生物学者の努力にも驚くと同時に、頭が下がってしまう。
最終章では、環世界の観点から、現代の社会が抱える問題点を挙げている。著者によれば、挨拶とは「敵であるか敵ではないのかを判断する手段」だという。 現在の日本社会では、その挨拶するという習慣が失なわれたため、「社会の個体のすべての者たちは、不安定な気持ち」を抱えることになったそうだ。 今のぎすぎすした世の中を考えると、頷ける指摘である。
本書のもうひとつの読みどころが、随所に織り交ぜられる著者の研究旅行記だ。 著者が研究のために滞在した様々な地での体験が書かれていて、どれも興味深いのだが、周囲の人から毒があるかも知れないから、止められたにもかかわらず、南極でタコを、また、アフリカのマガディ湖でテラピア(魚)を食したというエピソードからは、著者の豪胆さが透けて見えて面白かった。その後、特に体調を崩したりもしなかったようで、著者は「ヒトは食べたことがないものには、毒があると思うようですね?」とさらっと書いているのだが、テラピアについては『アフリカにょろり旅』あたりを読んだ感じでは、寄生虫等で危なそうな感じもするのだが……。
専門用語が登場し、素人には少々難しく感じられる面もなきにしもあらずだが、生物の多様さを知ることができる良書だ。ヒトが持つ環世界を考える上でも役に立つ一冊と言えるだろう。

生き物たちの情報戦略―生存をかけた静かなる戦い (DOJIN選書 11)
- 針山 孝彦
- 化学同人
- 1890円
livedoor BOOKS
書評/サイエンス

2007-10-24(Wed) [長年日記] この日を編集
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中国の危ない食品―中国食品安全現状調査(周勍)
本が好き!経由で献本して頂いた。これはスゴイ本。
近所のスーパーの野菜コーナーを見たところ、中国産と書かれた野菜を一つも見つけることができなかった。また、生魚コーナーからも中国産ウナギは完全に姿を消していた。消費者の間では「中国の食品は危ない」という意識は広く浸透しているようだ。
しかし、本書によれば、中国国内に目を向ければ、食品汚染の状況は「危ない」などというレベルを遥かに越えて、「致命的」といっても過言ではないものになっているという。
本書の著者は北京在住の中国人ジャーナリスト。天安門事件に連座し、3年間に渡る投獄されたという経歴を持ち、現在も当局に危険分子としてマークされているという。現在、中国政府は来年にオリンピックを控え、食品汚染に関して事実上の報道規制を敷いているが、自らの危険を冒してまで、真実を伝えようとする著者のジャーナリスト魂は、その経歴ゆえと言えるかも知れない。本書の原著は高く評価され、2006年度「ユリシーズ国際ルポルタージュ賞」を受賞している。なお、2003年に同賞を受賞したのが、去年殺害されたロシア人ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤの 『チェチェン やめられない戦争』だ。
本書が明らかにする食品汚染の実態は、まさに戦慄すべきものだ。日本の報道でも知られている「段ボール肉まん」(最終的には「ヤラセ」とされた事件であるが、著者によれば、中国政府による隠蔽であるという)や「人間の髪の毛を原料とした醤油」をはじめとして、数多くの事件が紹介されている。その一部を引いておこう
- 下水にたまった油、レストランの残飯に簡単な加工処理を施し抽出された油──「地溝油」が、小料理屋や屋台、またサラダ油として利用されている。地溝油の原料となるゴミを巡って、業者間で熾烈な争奪戦が起きているという。
- 赤身の豚肉が好まれるようになったために、赤身を増やすことを目的として、豚に喘息治療薬(塩酸クレンブレロール)を混ぜた飼料が与えている。人間がこの肉を食べると、深刻な中毒症状を引き起こす。
- 料理屋や飲食店は、リピーター客を増やすため、料理にケシ混入させている。客は長期間食用すると中毒症状となり、重症の場合、麻薬常用者になる。
- 有毒物質を含む粉ミルクによって、幼児の死亡したり、様々な障害を抱えるなどの事件が多発している。
なぜ、このような状況に陥ったのか。縦割り行政や取締り側と業者の癒着の他に、著者は中国国民が抱える心の荒廃──誰をも信じず、社会を信じず、国を信じず、明日を信じず、金儲けのためなら後先を考えず、友人親戚や世間の人々への迷惑などを考えず、資源の掘り尽くしを考えず、環境破壊を考えずに、無分別にやってしまう──を大きな原因としている。
実態を知れば知るほど暗澹たる心情になってしまう、中国国内の食品汚染だが、一条の光も見える。それが、先にあげた豚肉に含まれる塩酸クレンブレロールを簡単かつ安価に検出できる方法を開発した「江西中徳大地生物工程有限公司」だ。取締役社長である銭偉は自分のことを民族主義者だと言い、次のように述べている。
本当の愛国者であるなら、サッカーで負けたからといって物を投げるとか、ネット上で憂さ晴らしはしませんよ。ハイテクが国力が国力を決定する時代にあっては、技術向上に努力することが、わが民族の国際的な地位を引き上げる唯一の選択です。(p.78)
国は違えど、尊敬すべき心意気ではないだろうか。
訳者によるインタビューで、著者は中国国民の心の荒廃も憂えて次のように述べている
北京や上海のような大都会でも、普通の家庭で購読しているのはテレビ番組の新聞、いいところで夕刊紙です。読書する人が非常に少ない。読む本といえば金儲け成功法、仕事速成術、人の心理の読み方術のたぐいです。食べているものもゴミ、精神や心の糧もまたゴミなんです。(p.202)
日本の将来を考える上でも重く受け止める必要のある警句だろう。
折しも、現在、赤福餅の偽装問題が世間を騒がしている。 日中ともに食の安全が問われている今だからこそ読まれるべきと言える一冊だ。
- 周勍、廖建龍
- 草思社
- 1470円
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書評/ルポルタージュ

2007-10-25(Thu) [長年日記] この日を編集
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ヒトは食べられて進化した(ドナ・ハート; ロバート W.サスマン)
本が好き!経由で献本して頂いた。
従来、人類の祖先は、誰にも負けない知恵を身に付け、それを武器に殺戮を繰り広げて、地球の王者となったと考えられてきた。それが「狩る人(Man the Hunter)」説である。しかし、本書が提示する「狩られる人(Man the Hunted)」説で示されるのは、「狩る人」とはまったく正反対の、強大な力を持つ猛獣から餌として付け狙われ、ただただ逃げ回るだけのなんとも情けない人類の祖先の姿だ。 著者たちは、様々な研究や文献、化石などを活用して、「狩られる人」が単なる想像の産物ではなく真実であること、また、ヒトが生き延びるために、その頭脳を発達させてきたことを証明していく。
正直なところ、本書を読んで「捕食者であるヒト」という考えには、それほど意外性は感じなかった。というのも、以前より「ヒトは被捕食者である」という思いを、漠然とではあるが抱いてきたからだ。そう考えるようになった原因が、本書でも
一九九五年に有名な日本人の動物写真家がベーリングヒグマに殺されている。(p.121)
として言及されている星野道夫氏の最後だ(事件が起きたのは、実際には1996年)。星野氏がヒグマに襲われ「食べられた」ことが、自分の中で「被捕食者であるヒト」を意識させることになったのだ。
とはいえ、本書がつまらないかと言えば、そんなことはなく、非常に面白く読んだ。特に面白かったのが、ヒトを捕食してきたと考えられる猛獣たちを数々の事例とともに紹介されている3章〜7章。ライオン、トラ、クマ、オオカミ、ハイエナ、ヘビ、オオトカゲ、ワニ、サメ、ワシと、随分と色々な動物に食べられてきたのだなあと、妙な感心をしてしまった。そこで紹介されている日本人が関係したエピソードを引いておこう。
本書によれば、第二次世界大戦中のイギリス軍によるビルマ奪回作戦時(本書には書かれていないが、時期から見て1945年のことだと思われる)、イギリス軍の猛攻のため、1000名の日本兵が撤退を余儀なくされた。彼らは、撤退のために海軍が差し向けた輸送船に乗船するため、ビルマ本土とラムリー島との間にあるマングローブの沼地へ入るが、イギリス軍の封鎖のため輸送船はその地に到着できなかった。イギリス軍が周辺を封鎖していることもあり、仕方なく、兵士たちはその沼地で一晩を過ごすことになるのだが、そんな彼らを襲ったのがワニだった。一晩中、ワニは兵士たちを襲い続け、日が昇る時までに生き残った人数はわずか20人だったという。
ちなみに、本書には記載されていないが、同じ第二次世界大戦のビルマの地において、インパール作戦(1944年)時に、虎に襲われた日本軍の部隊があったというエピソードを、以前、他の戦記もので読んだ記憶がある。これも被捕食者としてのヒトを示すエピソードだろう。
8章〜10章では、「狩る人」説の誤謬を指摘するとともに、ヒトが過酷な環境の中でどのように生き延びてきたかを解説している。 本書によれば、我々が大地や開けた土地を見て喜びを感じる原因が
開けた土地では、捕食者が迫ってきても防御戦略を立てる間がなかったという羽目に陥る前に、捕食者を発見できる(p.233)
からだそうである。それが真実かどうかは神のみぞ知るだが、近所の山がある風景を見て感じる心地良さの原因がこれだと思うと、なんとも複雑な気分にはなる。
非常に優れた一冊と評価できる本書ではあるが、唯一残念な点が、注と参考文献が本書から省かれ、出版社のWebサイトに掲載されているという点だ。注と参考文献のPDFファイルの掲載先を確認したところ、両方をあわせても、わずか27ページだった。それくらいの文量であれば、本書に収めても、ページ数的にも価格的にも問題にならなかったと思うのだが。出版社にどのような意図があったのか不明だが、もし、昨今の流行に合わせて、少しでも「薄い本」を目指したということであるならば、それは重大な考え違いだ。少なくとも、この手の本を自分の意思で読む人であれば、「本が厚ければ厚いほど喜ぶ」という性質を持った人たちなのだから。
少々文句も書いたが、人類の進化について興味がある人には、強くオススメできる一冊だ。 ご先祖様が「敵」に食べられないよう、どう知恵を巡らしていたか想像の翼を広げることができるだろう。
- ドナ・ハート; ロバート W.サスマン、伊藤 伸子
- 化学同人
- 2310円
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書評/サイエンス

2007-10-27(Sat) [長年日記] この日を編集
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S-Fマガジン 2007年 10月号 [雑誌]
やっと読んだ。
ETばりのファーストコンタクトものかと思いきや、意地の悪い方向に転がっていく、デイヴィッド・ブリン『スカイ・ホライズン』がなかなか良い。長篇で「その後」が読んでみたいぞ。
田中啓文『罪火大戦ジャン・ゴーレ』はあいかわらず面白い。早く単行本になんないかなー。
あと、飯野文彦がインタビューで
ビルの掃除のおばさんとかいるじゃない。ああいうバアさんにね、変な興奮をするんだよ。役割として男子トイレ入って来るんだけど、もしかしたらそういうこと(引用者注:スケベなこと)考えているんじゃないかって。
と、めちゃくちゃ失礼なことを言っていて、電車の中で変な人化。
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Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(円城 塔)
各所で「傑作!」と絶賛されていたので読んだのだが、センス・オブ・ワンダー分が少なすぎる感じで、個人的にはイマイチ。小難しいことが書いてあるけれど、実はバカSF、というノリは良かったんだが。
まあ、俺が生粋のSF者ではないせいで、それほど楽しめないのかも知れない、という気はする。Nippon2007も結局行こうとは思わなかったしな(ホンのちょっとだけ心は動いたけど)。
2007-10-28(Sun) [長年日記] この日を編集
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メールオーダーはできません (創元推理文庫 M メ 2-1)(レスリー・メイヤー)
クリスマス前のある夜、通信販売会社の経営者が自殺した。金持ちで美人の妻がいて、人生順風満帆のはずが、なぜ? 第一発見者の主婦ルーシーは釈然としない。夫と三人の子供たち、実母と義理の父母のための、クリスマスの仕度にてんてこ舞いしながらも、地元の巡査を巻き込んで事件をつつき始めるルーシー。だが、肝心の巡査が事故で重体に……。メイン州の田舎町を舞台に、季節の行事をいきいきと描く、生活感あふれるミステリ開幕。 東京創元社の書籍紹介より引用
本が好き!経由で献本して頂いた。
ミステリ好きのごくごく普通の主婦、ルーシー・ストーンを主人公としたミステリ・シリーズの第一作が本書。
訳者あとがきによれば、著者であるレスリー・メイヤーの作品が訳されるのは、短篇を除けば、本書が本邦初とのこと。 また、ハロウィーンや感謝祭など、アメリカの年間行事と殺人事件を絡めた本シリーズは、本国で人気を博しているそうで、既に13作目まで出版されているそうだ。
ストーリーの半分以上は、家事や子育て、通販会社でのパートに、カブスカウトの引率、クリスマスの準備と奔走しまくるルーシーの日常生活を追うことに費やされていて、肝心のミステリがかなり弱いのが欠点なのだが、生き生きとした描写が良く、なかなか楽しめた。 嫌味な上司の隠された人間関係など色々と伏線が張ってあるにも関わらず、それが本書内のストーリーで回収されていないところが、不満と言えば不満ではあるが、シリーズ続刊への壮大な伏線になっていることを期待したい。
ただ、動物好きとして、これはちょっと、と思ったのが、飼い猫の首が括られて殺されているにも関わらず、かなりあっさりと流してしまう主人公夫婦の態度。 もう少し騒いでもよさそうではあるのだが、ここら辺がアメリカ人と日本人のペットへの感情移入の差ということなのかも知れない。 猫殺しの犯人は、結局、最後まで分からないままで終わるのだが、これって著者が忘れていたんだろうなあ。
なお、各章の頭には、通販グッズの説明書きが書かれているが、各章の内容と関係ある物となっているので、それを念頭に置きながら読むと、また楽しみが増すのではないかと思う。
第二作の邦訳も近刊予定とのこと。 期待して待ちたい。
- レスリー・メイヤー
- 東京創元社
- 861円
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書評/ミステリ・サスペンス

2007-10-31(Wed) [長年日記] この日を編集
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人形の部屋 (ミステリ・フロンティア 39)(門井 慶喜)
本が好き!経由で献本して頂いた。
かつて旅行会社に勤務し、現在は専業主夫となっている主人公が「歩く百科辞典」「電源のいらない検索サイト」と呼ばれた博識を駆使し、中学生の娘とともに、日常生活で遭遇した謎を解き明かす、いわゆる「日常の謎」系連作ミステリが本書。 デビュー単行本『天才たちの値段』が話題になったことが記憶に新しい、門井慶喜の第二作だ(実は『天才たちの値段』は未読なので、次の機会に読もうと思う)。
収録されている五作品のうち、メインとなるのは、 かつての上司によって持ち込まれたフランス人形の謎を解く表題作「人形の家」、 花を嫌う奇妙な隣人と、その正体を知らせる暗号メールの解読に頭を悩ませる「お花当番」、 お子様ランチと娘の家出の顛末を描く「お子様ランチで晩酌を」の三作品。 主人公と娘の会話が、ウィットに溢れすぎていて、なんだか父親と中学生の会話に思えなかったり、登場人物のほとんどが教養に溢れているあたりは、少々リアリティに欠けるところではあるのだが、どれも爽やかな読後感を残す秀作だった (ただ「お花当番」の隣人の態度は社会人としてどうかとは思う)。
個人的に、特に気に行ったのが、上記作品の間に、インターミッション的に挿入されている「外泊1──銀座のビスマルク」と「外泊2──夢みる人の奈良」。 どちらも、クリスマス・プレゼントとして主人公が家事から解放される二日間の小旅行を扱っているのだが、主人公が買い求めた万年筆、筆といった文房具絡みで、見知らぬ人より奇妙な相談を受けるといったストーリーになっている。 30ページに満たない小品であるが、味わい深い仕上がりだ。
全篇に渡って、様々な蘊蓄がちりばめられているので、雑学を仕入れるのにも役立つ一冊と言えるかも知れない。続篇にも期待したい。
ちなみに、主人公の細君については、名前だけしか出てこないので、もしかして、『刑事コロンボ』の「うちのカミさん」みたいな扱いなのかなーと思っていたら、最終話「お子様ランチで晩酌を」の最後の最後に登場しました。
- 門井慶喜
- 東京創元社
- 1575円
livedoor BOOKS
書評/ミステリ・サスペンス










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