ぽっぺん日記@karashi.org
2007-11-06(Tue) [長年日記]
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理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)(似鳥 鶏)
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立会いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 東京創元社の紹介文より引用
本が好き!経由で献本して頂いた。
第16回鮎川哲也賞に佳作入賞したのが本書。
些か手垢の付いた感のある「学校の怪談」系ミステリということで、実はあまり期待していなかった作品なのだが、良い意味で予想を裏切られて一気読み (と言っても、「あとがき」を入れても全252ページなので、長篇としては短め)。
本書で目を引くのが、キャラ立ちした登場人物だ。 頭脳明晰だが、やる事が常識外れな探偵役の文芸部部長、語り手で、飄々とした印象の主人公(美術部員)、しっかり者の吹奏楽部部長、主人公を演劇の世界に引き込もうと、やたらと誘いをかけてくる演劇部部長など、 個性的な面々が登場するあたりは、ラノベの洗礼を受けてきたであろう世代(違っていたら、すいません)の著者ならでは。 ただ、それも地に足が着いたレベルに抑えられていて、作品全体のほのぼのした雰囲気を盛り上げることに一役買っている。
また、文系クラブのカオスな雰囲気をうまく出しているのも、なかなか良い。本書の舞台となる古びた芸術棟にひしめきあう弱小部の数々に「そうそう、こんな感じだった」と頷く人も多いのではないだろうか (自分もそんな一人。まぁ、これほど女っ気はなかったが)。
全体的に好印象を受ける本書であるが、その反面、ミステリとして読むと、難点があるのも事実。 伏線らしい伏線もなく、唐突に提示される行方不明の女子生徒の真相もそのひとつだが、一番大きなものは、やはり、「幽霊の正体探し」という本書のメインテーマだろう。 そこに何らかの犯罪が絡んでくる(幽霊に殺害された人物がいる、など)のであればともかく、「幽霊の正体探し」だけで展開していくストーリーは、ミステリとして見た場合、かなり「引き」が弱いと言わざるを得ない。 と言うのも、読み手は、本書がミステリ小説であるという都合上、「幽霊の存在が否定されることは、ほぼ確実」と分かっているのだから、幽霊が出現しても、また、それがどのように現われたのかについてのトリックを解説されても、驚きがないのだ。 学校の怪談と全く関係ないように見えるプロローグと挿話されたエピソードが、メインのストーリーとラストで繋る部分など、光るものがあるだけに、そこが少々残念な点だった。
ただ、意地の悪いエピローグ(それとも青春における一つの区切りと見るべきだろうか?)は、賛否両論分かれるところだと思うが、ブラックユーモアが効いていて、個人的にはなかなか良いと思った。
著者は1981年生まれと、まだ20代半ばという若さである。その若さでこれだけの作品が書けるというのは凄いことではないかと思う。将来の作品に、大いに期待したい。
- 似鳥鶏
- 東京創元社
- 609円
書評/ミステリ・サスペンス




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