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2007-12-01(Sat) [長年日記]
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オタクコミュニスト超絶マンガ評論(紙屋 高雪/きあ)
築地書館さんより本が好き!経由で献本して頂いた。築地書館様、感謝致します。
共産主義者(コミュニスト)にして、漫画書評サイト紙屋研究所所長である著者による漫画評論集が本書。
『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』というスゴいタイトルな上、るるてんのきあ氏による「カバーをかけないと公衆の面前では、オッサンはちょっと読み辛い」装画も手伝って、「『萌え』にミックスして、『革命』や『解放』、『階級闘争』、『マルクス・レーニン主義的 ○○』などというという単語が大量にちりばめられたアジビラような評論」なんてものを想像していたのだが、実際に読んでみたところ、至って正統派な評論ばかりなので、非オタク、非コミュニストの人にも充分オススメできる一冊だった(個人的には、アジビラのような書評もちょっと読んでみたい気もするが。ネタとして)。
本書で取り上げられている作品は全部で33(数え間違いがなければ)あるのだが、そのうち、私が読んだ(or 見た)ことがあるものは、
- 『最終兵器彼女』(高橋しん)
- 『孤独のグルメ』(久住昌之・谷口ジロー)
- 『皇国の守護者』(佐藤大輔・伊藤悠)
- 『夕凪の町 桜の国』(こうの史代)
- 『ワーキングプア』(NHKスペシャル)
の5つしかない。著者は漫画評について、このように述べている。
漫画は社会意識の反映である(ただし鏡のような単純な反映ではないが)。そのことを暴き、引きずり出し、語り合う快楽というものが漫画評論には必要ではないのか。(「はじめに」より引用)
このようなスタンスで書かれた評論は必然的に、その作品に触れていない読者を突き放すような形になりがちなのだが、著者は硬軟を使い分ける見事な筆致によってそれを回避し、未読の作品についても、その面白さを伝えることに成功している。あとがきで著者が本書の目標として掲げている
「読者はその漫画を読んでいないのに、評論としては面白く読める」(p.340)
を達成していると言っていいものと思う。
本書に収められた評論はどれも面白かったのだが、その中でも、特に気に入ったものが、『孤独のグルメ』を論じたものだ。著者はこの作品を「グルメ漫画の最高傑作(p.41)」と評しているが、私も完全に同意する。未読の人は、読まないまま、この世を去ることになると非常に大きい損なので、明日にでも読むことをオススメする。
巷に溢れるグルメ漫画とは一線を画し、ただ主人公がそこらへんの料理屋で飯を食べる風景を淡々描き出すだけで、料理に関する蘊蓄情報がゼロの本作品の本質を
主人公は「孤独」という社会関係を食べているのである。(p.46)
と浮き彫りにする。そして、それと対比させ、『美味しんぼ』を食事をする人間と社会関係にはまったく無頓着だと断じ、
クズのような安ドラマが、濡れ紙のように、へろへろと料理描写にへばりついているにすぎない。(p.48)
と切り捨てている(『美味しんぼ』の主人公である山岡の目が「目玉焼きにしか見えない(p.48)」という頷ける指摘には思わず吹き出してしまった)。
珠玉の出来の漫画評であるが、著者の主張にひとつだけ同意できない点がある。それが
これ(引用者注:『孤独のグルメ』)を読んだ後では、『美味しんぼ』はおろか、いかなるグルメ漫画も読めない。(p.41)
というものだ。 個人的には、『孤独のグルメ』に並ぶ傑作グルメ漫画が土山しげるの『極道めし』と『喰いしん坊!』だと思っているので、著者にはぜひ両作品に挑戦して頂き、いずれ評論を書いて貰いたいと思う。
本書の後半に収められた『希望は、戦争。』や『国家の品格』の評論では、著者のコミュニストならではの政治主張が敷衍されるのだが、ノンポリであると同時に虚無的もしくは冷笑的傾向がある私には、あまりにも純粋すぎるにように思えて首肯しかねる点もある。 しかし、それを差し引いたとしても読む価値のある一冊だ。
たなみに、硬いテーマが続く中で、いいアクセントになっているきあ氏のイラストや4コマ漫画であるが、第2章「恋愛とセックス」の扉に描かれた4コマ漫画は、男女のパートナーの性関係を適切に(?)表現した爆笑もの(人によっては戦慄もの)の傑作なので、機会があれば、ぜひそちらも読んで頂きたい。
- 紙屋 高雪、きあ
- 築地書館
- 1890円
書評/サブカルチャー




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