ぽっぺん日記@karashi.org
2008-02-01(Fri) [長年日記] この日を編集
_ 今日のできごと
- FreeBSD minor version upgradesを参考に、freebsd-updateを使って、テスト環境(VMware)を6.2Rから6.3Rへアップグレードした。どんどん便利になるねぇ。 > FreeBSD
- 来週は、本環境サーバのアップグレードをしよう。
- 最近読んだ本は、『中国的天空(上)』(中山雅洋)、『滝山コミューン1974』(原武史)、『映画篇』(金城一紀)、『怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道』(高野秀行)ってところ。感想はあとで書く。
2008-02-02(Sat) [長年日記] この日を編集
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映画篇(金城 一紀)
「本の雑誌」2007年度年間ベストテンに挙がっていたので、手に取ったのが本書。
実は、金城一紀の作品を読むのは、今回が初めてだったのだが、映画好き(と言っても、最近はテレビ劇場オンリーだが)のツボを刺激してくる良い短篇集だった
本書に収められているのは、下記の5作品。
- 「太陽がいっぱい」
- 「ドラゴン怒りの鉄拳」
- 「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス」
- 「ペイルライダー」
- 「愛の泉」
個々の作品も良いが、一部の登場人物が重なっていたり、区民会館で上映される『ローマの休日』がキーになっていたりと、作品同士が緩くリンクしており、全体を通しても楽しめる内容となっている。
収録作の中でも、「ドラゴン怒りの鉄拳」がいい。 本作の主人公は、夫に自殺された20代末の女。 冷たくなった夫の第一発見者となったショックと、製薬会社に勤めていた夫が薬害事件に関わっていたのではないかとのマスコミの取材攻勢に疲れ果て、何ヶ月も自宅から一歩も出ない生活を続けていた。 しかし、夫が延滞していたビデオを返却するため、レンタルビデオ店を訪れたことから、映画マニアのアルバイト学生と出会い、その交流を通して徐々に活力を取り戻していく。 オーソドックスな内容ではあるが、ラストの「闘う準備はできた。」という主人公の独白から立ち上がってくる人生に立ち向かおうとする勇気が素晴しい。 アルバイト学生が主人公に見せる自主制作映画『タンロン怒りの鉄槌』がブルース・リー映画のパロディになっている点も好印象だ(主人公の着ているジャージはadidasならぬadidos、敵のジャージはNikeならぬNikkeなど)。
その他、在日朝鮮人というバッググラウンドを持つ男同士の友情を描く「太陽がいっぱい」、ハーレーダビッドソンFXSローライダーを乗り込なすオバチャン・ライダーと少年の心の触れ合い「ペイルライダー」(ラストの急展開が圧巻!)も印象の残った。
小説のデキが高水準であることはもちろんだが、映画好きであればさらに楽しめる一冊だ。
2008-02-03(Sun) [長年日記] この日を編集
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怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫 た 58-8)(高野 秀行)
辺境文筆家、高野秀行がインドの漁村で一度だけ目撃された怪魚ウモッカを追ったノンフィクションが本書。
同じ著者による 『怪獣記』の読書感想で
コンゴの怪獣「ムベンベ」、ベトナムの猿人「フイハイ」、インドの怪魚「ウモッカ」と数々のUMA(未確認不思議動物)を探索してきた著者
なんてことを書いたが、実はあの時、本書は未読だった。 すいません。
本書のサワリだけを紹介しておこう。
2005年夏。 日本のUMA*1サイトで話題になっていたのが、日本人旅行者がインドの漁村で見付けたという怪魚だった。 発見者のハンドルネームより「ウモッカ」と名付けられたその魚は、現地の漁師の網にかかったものだが、現地の人にとっては格別珍しいものではなく、その場でだんだんとぶつ切りにされ、カレーの具にされてしまったらしい。 未だ現地での探索行が行なわれていないことに目をつけた著者は、何年かぶりの「探し物」中毒に襲われていたこともあり、ウモッカを次の探索のターゲットに定める。 第一発見者から体験談を聞くことに成功し、ウモッカが実在することに確信を抱き、様々な専門家からの協力も得ることが出来た著者は、ウモッカを探すためインドに飛ぶことを決意する。 その地で待っていたものは、果たして──。
あー、もう、色々書きたいエピソードがあるのだが、どれを書いてもネタバレになってしまうので自重せざるを得ない。
しかし、これだけは書いておくと、本書を格闘技に例えるならば、はっきり言って反則技の部類に入る(著者にその気がなかったとはいえ)。 では、面白くないかと言えば、まったくそんなことはない。 反則は反則でも、お客を楽しませるための反則と言っていいだろう。
本書の面白さは、実際に手に取って確かめて貰うしかないが、 読めば、抱腹絶倒間違いなしの、エンタメノンフ*2・ワールドが待ち構えているだけは断言しておく。 イチオシ。
2008-02-04(Mon) [長年日記] この日を編集
_ amazonwishlistbookoff.user.jsのパッチを書いたよ
非常に便利に使わさせていただいている amazonwishlistbookoff.user.js なんだけども、価格が1000円を超える本はブックオフオンラインから引っ張ってこないバグがあったのでパッチを書いた。
以下、1行パッチ。
--- amazonwishlistbookoff.user.js.orig Sat Jan 12 16:27:18 2008
+++ amazonwishlistbookoff.user.js Mon Feb 4 21:46:34 2008
@@ -65,7 +65,7 @@
onload:function(response){
var usedLink = document.createElement('a');
usedLink.setAttribute('href', targetURL + isbn);
- if(response.responseText.match(/中古販売価格<\/th><td class="tab01">¥(\d+)(税込)/)){
+ if(response.responseText.match(/中古販売価格<\/th><td class="tab01">¥(\d[\d\,]+)(税込)/)){
usedLink.innerHTML = "¥" + RegExp.$1;
usedLink.setAttribute('style', 'color:#B22222;font-weight:bold;');
}else{
1000円を超えると、
¥1,000
のような感じで、カンマが入るので、それに対処しただけ。
2008-02-08(Fri) [長年日記] この日を編集
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ルイザと女相続人の謎 (創元推理文庫 M マ 16-1 名探偵オルコット 1)(アンナ・マクリーン)
東京創元社様よりで本が好き!経由で献本頂きました。御礼申し上げます。
タイトルの「ルイザ」 とは、『若草物語』 の作者であるルイザ・メイ・オルコットのこと。オルコットが探偵役を務める一風変わったミステリー〈名探偵オルコット〉シリーズ開幕篇が本書。
舞台は1854年のボストン。 作家を目指していたオルコットが、欧州からの新婚旅行から帰国したばかりの友人ドロシー(ドッティ)の新居に呼ばれたことから物語ははじまる。 幸せいっぱいの新婚夫婦であるはずが、どうも様子がおかしい。 ドッティは悩みを抱えているらしく、次の機会にその話を聞く約束をするが、その時が訪れることは遂になかった。 ドッティの遺体が港に浮いているところを発見されたのだ。 遺族の付き添いとして検死に立ち合ったオルコットは、ドッティが他殺だったことを知る。 友人は誰に殺されたのか? その心にどのような悩みを秘めていたのか? オルコットは真相を探りあてるべく捜査を開始する──。
実は『若草物語』は読んだことがなく、4人姉妹が登場するくらいの知識がなかった。 読んだことがあるという妻にもあらすじを訊いたのだが、「4人姉妹で、主人公はジョーという名前で、えー、あとはどんな話だったかなぁー」と全く参考にならなかったので、予備知識ゼロで本書を読むことになった。
「甘々なストーリーなんだろうなぁ」なんて偏見を持っていたのだが、実際に読んでみたら、なかなかどうして、21歳の若き女性であるオルコットの視点から、19世紀半ばのボストンの風景やそこに生きた市井の人々、抑圧された当時の女性たちを丹念な筆致で描いている良作。
オルコットが行なう捜査手法は、名推理を働かせるというよりは、様々な関係者に話を聞きまくるという「足で調べる」タイプのものだ。 聴取相手からうんざりされながらも、話を聞き出す図太さも含めて、ちょっと刑事コロンボの捜査に似ているかも知れない。 時折、鋭い観察眼を働かせるが、それも自作の小説に生かすために培ってきたという理由付けがされていて○。
ストーリーは、オルコットの生涯と齟齬がないようにする制約上、冒険的要素がほとんどなく、少々盛り上がりに欠ける部分もなきにしもあらずだが、 事件に関わる人々は、いずれも思惑を隠している様子で、なかなか真犯人を推理するのは難しいのではないかと思う(ただ、先に巻末の解説を読んでしまうと、あたりをつけられてしまうので注意)。 ラストでオルコットが解き明かす謎は、19世紀という時代背景が重要なキーになっているもので、素直に「うまいなぁ」と感心させて貰った。
なお、歴史背景では、誕生したばかりのボストン警察が一般市民には、うさん臭く思われていたこと(それまでの治安維持はボランティアによる自警団に頼っていたそうだ)や、 あの時代にも司法解剖があったという点(ただし、立会人は道を歩いていて雇われた人)が興味深かった。 特に後者については、調べてみると面白そうなので、そのうち本を探してみようと思う。
おかしかったのは、偉大な理想主義者ではあるが、生活者としては失格のオルコット家の父親。 哲学者であり、南部の奴隷(そう、まだ奴隷制があった時代なのだ)の逃亡を助ける組織を作るなど、正義の人でもあるが、収入や生活レベルといった「ささいな」ことには全く無関心で、オルコットやオルコットの母親であるアッバ*1との「空気が読めない」会話には吹き出しそうになってしまった。
『若草物語』を知っていれば、本書のストーリーは、もっと楽しめるとは思うのだが、オッサンになって原作を読むのも恥ずかしい。 そんな訳で、巻末の解説で紹介されている映画版を見てみようかと思う。 1994年のジリアン・アームストロング監督した作品では、ウィノナ・ライダーが主役のジョーを務めているらしいし。えぇ、ウィノナ・ライダー好きなんですよ。うひ。
- アンナ・マクリーン
- 東京創元社
- 1050円
書評/ミステリ・サスペンス
*1 ちなみに、アッバは当時にしては、非常に進歩的な考えを持っていた女性だそうだ。
2008-02-10(Sun) [長年日記] この日を編集
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hon-nin列伝 セキララなオンナたち (本人本 2)(吉田豪)
太田出版様より本が好き!経由で献本御礼。
プロインタビュアー吉田豪による雑誌「hon-nin」連載のインタビューのうち、vol.00からvol.03に掲載された記事をまとめたものに、 書下しインタビューを加えたものが本書。
以前、献本して頂いた「hon-nin vol.03」に掲載された麻生久美子さんへのインタビューが面白かったので、 その記事を収録している本書を献本して頂いたのだが、期待を上回る面白さで一気読み。 「hon-nin」の連載は現在も継続中で、vol.05では江頭2:50に インタビューをしているが、本書でインタビューを受けている人物は、すべて女性芸能人となっている。
迂闊にも、本書のまえがき代わりに収録されている吉田豪と松尾スズキの対談を読んで、初めて気付いたのだが、 少し前に話題になった、 岡本夏生 にインタビューするのに苦労した裏話の元ネタは、著者だったらしい。 インタビュアーと同行者の血液型や家族構成を含む個人情報の事前提出が必要で、インタビュー時間は最低でも3時間以上、 さらに(本書では触れられていないが)掲載前に岡本自身による詳細な原稿チェックがあるという話には笑わさせて貰った。
本書でインタビューを受けている女性は下記の5人。
- 荻野目慶子
- 中川翔子
- 土屋アンナ
- 麻生久美子
- 広田アンナ
このうち、広田アンナさんのインタビューが書下しになっている。
はっきり言って、どのインタビューもめちゃくちゃ面白い。 サブタイトル「セキララなオンナたち」の通り「え、こんなことまで言っちゃっていいの?」という壮絶ではあるが、笑ってしまう話が満載だ。 例を挙げればキリがないし、読んでのお楽しみなのだが、特に気に入ったものをいくつか並べておこう。
- 『南極物語』に出演が決まった時、南極に行けると思って喜んだのに、犬と一緒に全国を回っただけ(荻野目慶子)
- 小学校1年生で小池一夫作品を読んでいた。そのおかげで小1にして難しい漢字が書けた(中川翔子)
- 好きな漫画は『軍鶏』(土屋アンナ)
- 家が貧乏で、ザリガニを食べていた(麻生久美子)
- 子供時代には、外に出るとすぐにイタズラされたり、誘拐されたりしていた(広田アンナ)
- バレエでベルギー留学していた時には、照明係に好意を寄せられ、その照明係が好きだったゲイの振付師に「お前なんかただの女だ!」と怒鳴られた(広田アンナ)
正直なところ、芸能界には全く疎いのだが、こんなオレでも面白いのだから、たぶん、芸能界に詳しい人が読めば爆笑の連続ではないかと思う。
本書の1480円+税という価格は、ケチな本読みとしては「活字のポイントを下げて、余白も少なくすれば、もうちょっと安くできるんじゃね?」という感じが しないでもないお値段ではあるのだが、芸能人関係の本としては高すぎるという訳でもなく、まぁ、妥当なところと言えるだろうか。
最後に強調しておきたいことがひとつ。
「hon-nin」のインタビュー記事を読んでいない麻生久美子ファンは、読んで損なし。
まぁ、久美子たんも、もう人妻だけどな……。
続篇も楽しみだ。
- 吉田豪
- 太田出版
- 1554円
書評/エンタメ・タレント
_ IPsec readyにするのにKernelの入れ替えはもう必要ない?
※この記事間違いでした。
6.2RのGENERIC kernelで
% sudo kldload crypto
したところ、
% sysctl -a | grep ipsec net.inet.ipsec.esp_trans_deflev: 1 net.inet.ipsec.esp_net_deflev: 1 net.inet.ipsec.ah_trans_deflev: 1 net.inet.ipsec.ah_net_deflev: 1 net.inet.ipsec.ah_cleartos: 1 net.inet.ipsec.ah_offsetmask: 0 net.inet.ipsec.dfbit: 0 net.inet.ipsec.ecn: 0 net.inet.ipsec.debug: 0 net.inet.ipsec.esp_randpad: -1 net.inet6.ipsec6.esp_trans_deflev: 1 net.inet6.ipsec6.esp_net_deflev: 1 net.inet6.ipsec6.ah_trans_deflev: 1 net.inet6.ipsec6.ah_net_deflev: 1 net.inet6.ipsec6.ecn: 0 net.inet6.ipsec6.debug: 0 net.inet6.ipsec6.esp_randpad: -1
こんな感じになった。
もしかして、もうIPsec使うのに、kernelの再構築/インストールって必要ないのかな。 まぁ、ホントにこれでIPsecが使えるかどうかは、まだ未検証だけど。
これが出来るんだったら、freebsd-updateでkernelのアップデートも可能なので嬉しいなぁ。
2008/2/12追記
上の記事の話、GENERICじゃなくて、IPSECを有効にしたkernelでやってました。orz
ってことで、crypto.koをkldloadしてもIPsecは有効になりません。 どうも申し訳ありませんでした。
2008-02-11(Mon) [長年日記] この日を編集
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火星の長城 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1) (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1)(アレステア・レナルズ)
『啓示空間』も『カズムシティ』もアイデアは良いにも関わらず、やたらだらだらと長く、中盤だれ気味の作品だったが、これくらいの長さであればすっきり締まっていて楽しめた。レナルズの良さを堪能できる短篇集と言ってもいいんじゃなかろうか。
表紙画は、たぶん、連合の降下挺部隊による長城攻撃シーン。
以下、収録作の感想をつらつらと。
「火星の長城」
「SFマガジン」掲載時に読んだが、面白かった。
長城のアイデアがいいね。あと、登場早々、見せ場もなく、あっさり殺されるサンドラ・ボイが哀れ。
「氷河」
こっちも「SFマガジン」掲載時に既読。やっぱり面白かった。
「SFマガジン」を読んだ時には気付かなかったけど、連接脳派の星間船サンドラ・ボイ号の名前って、「火星の長城」のサンドラ・ボイからだったんだな。
あとがきによれば、未訳の『Redemption Ark』では、『啓示空間』登場のクーリとボリョーワ、それからインフィニティ号に、クラバインとガリアナが関わる展開になるらしい。 邦訳が楽しみ。
「エウロパのスパイ」
これも『90年代SF傑作選』で既読(なんか既読ばかりだな)。
当時は「まぁ、変わったガジェットが登場するスパイものだなー」くらいの感想しかなかったのだが、啓示空間宇宙史の1エピソードとして読むと楽しめた。
「ウェザー」
心優しいウルトラ属の男と連接脳派の少女の、ボーイミーツガールものって感じか。 連接脳派エンジンの仕組みとオチは読めるが、なかなか良いデキ。
しかし、ウェザーのこと連接脳派に喋ったら、消されちまうんじゃないかねー。 > イニゴ
「ダイアモンドの犬」
一風変わったパズルもの(スプラッターかつグロテスクだけどな)。
失敗する度に、キャンプに戻って体制を立て直すあたりは、ゲームぽい。 オレの数学的センスがゼロなので、出題される問題はナントモ。
_ 6.3Rのdisc1を使ってのgmirror構築でハマった
6.3Rのdisc1を使って、いつもの方法で、gmirror RAID1を構築しようとしたところ、
Fixit# gmirror label -v -b round-robin gm0 /dev/ad4
Unknown command: label
usage: gmirror help
gmirror list [name ...]
gmirror status [-s] [name ...]
gmirror load [-v]
gmirror unload [-v]
と怒られた。
「おかしいなー」と思い、ググってみたところ、PRが出ていた。fixit.profileがバグっているらしい。
workaroundとしては、
Fixit# chroot /dist
した後に、
Fixit# unset GEOM_LIBRARY_PATH
するとのこと。
手元の環境で試したところ、これで大丈夫だった。
もうPRはclosedされているので、そのうち、修正版のISOイメージがリリースされるんじゃないかと思うが、いちおうメモっておく。
2008-02-12(Tue) [長年日記] この日を編集
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滝山コミューン一九七四(原 武史)
明治学院大学国際学部の教授にして政治学者である著者が、自身の小学生時代のエピソードを綴った自伝的ドキュメンタリーが本書。
「本の雑誌」2008年1月号の「私のベスト3」で、何人もベスト3に挙げていたので読んでみたのだが、確かにスゴイ本。
新興団地に作られた小学校が、新任教師によって導入された「学級集団づくり」運動により徐々に集団主義を是とするコミューンへと変貌していく空気を丹念な筆致で描いていて、読んでいるうちに背筋が寒くなってしまう傑作だ。 去年読めば、確実に私的年間ベスト10にはランクインしたと思う。
「ビリ班」を決定し見せしめにするための猛烈な班競争、旧ソ連時代のベリア率いる内務人民委員会ばりに他生徒を監視・告発する点検班制度が小学校に存在したというのも凄いが、 たかが小学生の委員会活動なのにも関わらず、
そこ(引用者註:学級)にとどまることなく、他学級へ、全校生徒集団へ、さらに家庭や地域諸集団へとその活動領域を広げていく(p.51)
ことを目的とする「学級集団づくり」を進展させるために、件の教師が担任するクラスが猛烈な選挙運動を展開し、全委員会の委員長ポストをそのクラスの児童だけで占めるという異常事態まで起きてしまうのだ。
この「学級集団づくり」運動を推奨したのは、日教組の流れを組む全生研(全国生活指導研究協議会)という組織。 現在も存在するこの組織の教育方針の基礎にあるものは、旧ソ連の教育学者マカレンコが唱えた集団主義教育にあるというのだから驚かされる。 ちなみに、本書の中でも、度々、日教組指導によるストライキのエピソードが語られているが、組合員数が減少し、現在は弱体化の一途を辿っているように見える日教組が強かった70年代を映している逸話と言えるだろう。
本書で取り上げられる「滝山コミューン」において行なわれた集団主義教育について、著者は反感を示しながらも、男女平等など見るべき所もあったと書いている。 その点には同意するにしても、やはり、個人主義者であると自覚しているオレから見ると集団主義教育には不快感が残った。 小学校で全生研的な教育がなされていなかったことの影響が大きいのだろうと思うが、なにより、日本赤軍の「総括」じみた「追求」という名の吊るし上げを児童に対して行なったという一点だけで決して容認できない気がする。
また、小学生に大人のふりをさせる必要があるのかという疑問もある。 友人が書いた、子供ぽくはあっても、空疎なスローガン抜きの立会演説原稿を見た際の
そうそう、僕たちはまだ、11歳の子供だということを忘れちゃいけないよな。(p.151)
という著者のセリフや、 林間学校の担当を決める緊迫した状況の中で、担当する班の役割を勘違いし、ほのぼのとした方針演説を書いた著者のパートナーの女子児童のエピソードなどこそ、 子供時代に必要とされるものを表わしているのではないかと思う。
本書で気になったのは、コミューン形成の原動力となった教師にインタビューを試みているにも関わらず、彼の語ったことがほとんど著されていないことだ。 やはり、教師のやり方に反発を感じていた著者との間で何らかの軋轢があったのかも知れないと考えるのは勘繰りすぎだろうか。
なお、この教師の転出に伴ない、77年にコミューンは崩壊したと著者は結論付けているが、Amazonのカスタマーレビューには、当時のコミューンの経験者がレビューを寄せており、 コミューンの空気が団地内の私塾や近隣の中学校に拡大していった旨が書かれていて興味深い。
2008-02-13(Wed) [長年日記] この日を編集
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[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ (奇想コレクション)(シオドア・スタージョン)
最近、色々と翻訳が進んでいるスタージョンの短篇集。
奇想コレクションからは先に『不思議のひと触れ』と『輝く断片』が出ているが、本書は『海を失った男』(晶文社) の続篇という位置付けらしい。まぁ、あちらは大森望・選だからね。
収録作は下記の6篇。
- 帰り道
- 午砲
- 必要
- 解除反応
- 火星人と脳なし
- [ウィジェット] と [ワジェット] とボフ
「帰り道」と「午砲」はちょっと違うが、あとの4篇はライトなSF風味で、 藤子・F・不二雄のSF短篇を彷彿とさせた。
特に「必要」なんて、ほぼ『エスパー魔美』。エスパーは、性格の良い美少女じゃなくて、性格の悪いオッサンだけどな。
個人的には『海を失った男』の方が好みの作品が多かったが、まぁ、こちらも読んで損はないと思われ。
2008-02-15(Fri) [長年日記] この日を編集
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S-Fマガジン 2008年 02月号 [雑誌]
なんとか2ヶ月遅れになる前に読み終えた。
日本作家特集ということだったのだが、あまり楽しめる作品はなかったかなーという印象。
以下、感想をつらつらと。
「アリスの心臓」(海猫沢めろん)
タイポグラフィを多用した作品は久しぶり読んだ気がする。 でも、読み辛いので、そこの部分は読み飛ばした(ぉ
内容的には、あまり好みではないかな。
「一九八四年」(樺山三英)
『一九八四年』と著者オーウェルのスペイン内戦体験に、ガウディをからめるというのは、なかなか面白い趣向。
ガウディって生涯、童貞だったんだな。
「夕暮れ畑」(谷崎由依)
安部公房のような作風だろうか(安部公房、よく知らないけど)。
ちょっと面白さが分からなかった。
「300万」(小林泰三)
コナン・ザ・グレートみたいなマッチョな宇宙人による侵略もの。オチが効いている。
収録作の中では一番楽しめたのだが、小林泰三にしてはややパンチに欠けるかも知れない。
「地球発熱衰弱状態」(椎名誠)
中国の環境汚染問題を扱っていて、毒ギョウザ事件を予見したかのようだ(ちょっと大袈裟)。
中国人の
自分が歩いていく一秒後の背後はもう自分とは関係ない場所(p.140)
という考え方は興味深い。この考え方があるから、道や電車の窓から線路にぽいぽいゴミを捨てても平気だそうだ。
また、海洋汚染により『中国の環境問題』でも触れられていた、日本海におけるエチゼンクラゲの大発生についても書かれている。事態は深刻だそうだ。
映画「アイ・アム・レジェンド」誌上公開
ウィル・スミスと監督フランシス・ローレンスの短いインタビューが掲載されているが、口では「好きだ」とか言いつつ、原作をまったくリスペクトしていないところが窺えておかしい。
2008-02-16(Sat) [長年日記] この日を編集
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きみのためのバラ(池澤 夏樹)
池澤夏樹の短篇集。
「本の雑誌」2008年1月号の2007年度ベスト10にランキングしていたので読んでみたのが、平均20ページという短い作品ばかりながら良作揃いで、まさに珠玉の短篇集だった。
「青年と年上の女医の10日間の情事」と書くといやらしいが、読んでいるうちに甘酸っぱい思いにとらわれる「連夜」、 「虐殺の文法」@『虐殺器官』ばりの伝染性を持つ言葉──ただし、こちらの効果は正反対で心を鎮める──が世界に拡散していく端緒「レシタションのはじまり」、 カナダの自然に触れた少年の瑞々しい心の動きを描く「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」 も良かったが、なんといっても表題作「きみのためのバラ」が出色の出来。
満員電車の中を渡るという日常の一コマから、ポスト911ともっと牧歌的だった時代*1を対比させる手腕が見事だ。 多くを語らずとも、今の世界が失なったものを浮かび上がらせる。
小説好きの本読みにはイチオシの一冊だ。
*1 というのは幻想なのかも知れないが
_ Ruby札幌: 日本PostgreSQLユーザ会北海道支部 / Ruby札幌 合同セミナーを見て、半日過ごした
twitter経由でustreamのライブがあることを知ったので、朝から昼過ぎまで視聴(朝9時からとは、なんと早いセミナー!)。
見始めるのが遅くて、角谷さんのRSpec実演が最後の40分くらいしか見られなかったのは残念だったけど、その後の大垣さんのPostgreSQLパフォーマンス話が非常に面白かった。
PostgreSQLは決してMySQLに速度では負けていないよという内容で、個人的に使うDBはPostgreSQL中心なので嬉しかった。あとでプレゼン資料も公開されるそうなので、熟読しよう。
IRCも盛り上がって、流れたログを受けて会場で質問が出たり(id:moro++)等、ライブ感が素晴しかった。
たださんも書いているけど、大掛りな回線なしであそこまで高品質なライブ放送が流せるというのは、ホントに凄いことだ。 今更ながら「インターネットってすげぇよなー」というのを実感した時間でありましたよ。
2008-02-17(Sun) [長年日記] この日を編集
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銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2) (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)(アレステア・レナルズ)
『火星の長城』につづく、『レヴェレーション・スペース』短篇集第2弾。こちらも『火星の長城』に負けず劣らず、レナルズの良さを堪能できる一冊に仕上がっている。
本書の表紙画は、たぶん、「銀河北極」におけるイロンデル号とヒデヨシ号(凄い名前!)のチェイス・シーン。
これで既訳の短篇で書籍に入っていないのは「スパイリーと漂流塊の女王」だけか。 長篇の訳出時にでもボーナストラックとして入れて貰えると嬉しいね。
以下、収録作の感想をつらつらと。
時間膨張睡眠
冷凍睡眠状態の移民を運ぶ近光船で、ただ一人目覚めさせられた乗員の話。
レナルズの初期作品ということで、他の作品群と整合性の合わない設定も出てくるが、ミステリ調の雰囲気は悪くない。
ターコイズの日々
レナルズには珍しく、気候温暖な海洋惑星+飛行船+海洋学者姉妹、と癒し系の設定が揃った作品。
でも、ストーリー展開は全然癒し系じゃないあたりが、レナルズらしい。
グラーフェンワルダーの奇獣園
レナルズの他作品に登場した奇っ怪な動物たちが登場しまくる作品。
「ダイアモンドの犬」登場のトランティニャン博士も登場して、読者サービス満点。
ナイチンゲール
スカイズエッジ星軌道の機能停止した病院船に潜む戦争犯罪人を逮捕するため、船内に潜入する元軍人たちの話。
オチが凄い! 日本人作家でいうと、小林泰三か牧野修という感じだ。
収められた作品の中では一番のお気に入り。
銀河北極
本作を読むのは、既にS-Fマガジンに掲載されたものを二度読んでいるので、これで三度目。4万年近くに渡るおっかけっこという凄いスケールの作品。
S-Fマガジンで読んだ時には、よく分からなったところも、こうして他の作品と読むとパズルのピースがかちりと嵌るようで気持ちがいい。
それにしてもインヒビターって影が薄いよな。
2008-02-18(Mon) [長年日記] この日を編集
_ cronから走らせているportupgradeでもccache + distccを効くようにしたよ
ここ何年か、毎朝cronでportupgradeを走らせて、packageの自動作成をしていたんだけど、せっかく設定したccache + distccが全然効いていなかったことに、こないだはじめて気付いた。
/etc/profileにccacheとdistccについての環境変数を書いたので、それで大丈夫と思い込んでいたんだけど、cronは/etc/profileの環境変数を見ないんだよな。 すっかり忘れてたよ……。
ということで、crontabに以下の環境変数を書いた。
# To use ccache CCACHE_PATH=/usr/bin:/usr/local/bin CCACHE_DIR=/usr/.ccache CCACHE_LOGFILE=/var/log/ccache.log # To use distcc CCACHE_PREFIX=/usr/local/bin/distcc DISTCC_HOSTS='hoge.example.com foo.example.com baa.example.com'
portsは並走のmake(-jオプション)には対応していないらしいので、distccを使う意味があるかどうか分からないけど、まぁ、資源を有効活用している気にはさせてくれる。
2008-02-19(Tue) [長年日記] この日を編集
_ icewm-1.2.34のicewmtrayでuim-toolbar-gtk-systrayのアイコンが潰れてしまう件の対処
nosukeさんがicewm-1.2.32用のパッチを 公開されていたので、全然内容が分からないながらも、見よう見真似でicewm-1.2.34のsrc/yxtray.ccの該当箇所を修正したところ、 ちゃんと表示されるようになった! nosukeさん++
今回作ったパッチ置いておきます(→patch-src_yxtray.cc)。 FreeBSDのportsユーザは、DLしてports/x11-wm/icewm/filesに置いてからbuildすれば適用されるはず。
2008-02-20(Wed) [長年日記] この日を編集
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オドの魔法学校 (創元推理文庫 F マ 9-1)(パトリシア A.マキリップ)
東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。
ファンタジー作家パトリシア・A・マキリップの最新邦訳が本書。 実は、マキリップの作品を読むのは、今回が初めてだったのだが、シンプルながらまったく先の読めないストーリー展開が楽しめる良質ファンタジーだった。
王都にある魔法学校をブレンダンという名の若者が訪れることから本書は始まる。 この魔法学校は、国の危機を救った英雄として名高い大魔術師オドによって400年前に創立されたものだが、当初の自由の理念はどこにやら、現在は王による厳格な指導の元、徹底した管理教育が行なわれる場となっていた。 オドは学校創立後に身を隠したが、400年経った現在でも時折姿を現すことでも知られていた。 ブレンダンは、オド本人の依頼により庭師として魔法学校に雇われることとなったのだ。 ブレンダンを迎えた魔法学校の教師たちは、ブレンダンの中に眠る、彼自身も気付いていない強大な力に驚く。 時を同じくして、王都の歓楽街では魔術師を自称するティラミン一行が幻影を操る興行を始めていた。 王の管理下にない魔法は違法とされている。果たしてティラミンが操るものは魔法なのか、ただの手品なのか。 底知れぬ力を眠らせたブレンダンとティラミンに対して、王をはじめとする体制側は懸念を募らせていく──。
これが本書のストーリーの骨子。そこに、ティラミンの娘と警吏総監の息子のロマンス、王都を竜から守った英雄ながら現在は自分のアイデンティティに悩む魔法学校教師、はたまた王女の婚姻話まで絡んできて、事態は雪だるま式に膨れ上がり、どこに行き着くのか見えない混迷の中へと転がっていってしまう。
とはいえ、「混迷を深めている」のはあくまで紙の上だけの話。 ファンタジー小説として本書を見ると、登場人物たちは、単独作品だけにしておくのがもったいないほどキャラ立ちしている上、その数も適度に絞られている。また、個々のエピソードもシンプルで、リーダビリティは非常に高い。絡まりあっていたストーリーが一気に収斂し大団円を迎えるラストも見事だ。
アクションシーンがほぼ皆無なため、冒険活劇的要素を求める向きには少々物足りない点もなきにしもあらずだが、ファンタジーに関する前提知識も要求されず、初心者にオススメできる一冊に仕上がっている。 残虐要素もなく、アダルティな要素もないので、ハリー・ポッターを卒業した若きファンタジーの読み手にもオススメだ。
そうそう、ハリー・ポッターと言えば、邦訳タイトル『オドの魔法学校』(ちなみに原書タイトルはOd Magic)からは〈ハリー・ポッター〉シリーズのような魔法学校を舞台とする学園生活ものを想像させるが、実際は上掲のようにまったく違うストーリーとなっている。 逆に、体制側にとって都合のよい──つまり、管理しやすい魔法のみを教え、生徒から想像力を奪っている魔法学校の教育を批判する内容となっている。 ここは、画一的な教育を押し付け、生徒の想像力を摘み取っている現実の学校教育に対する著者のアンチテーゼとして読むことができるだろうとも思うのだが、まぁ、そこまで深読みする必要もないだろう。
ファンに出版を待望されながらも、マキリップの作品の邦訳ペースはかなり遅いようだ。 本書が起爆剤となって、マキリップ作品の邦訳刊行が続くことを望みつつ、既刊を消化したいと思う。 しかし、もう絶版のものも多そうだなぁ。とりあえず、『影のオンブリア』、『妖女サイベルの呼び声』、岡野玲子による『妖女サイベルの呼び声』のコミック化『コーリング』あたりから読んでみるか。
- パトリシア A.マキリップ、原島 文世
- 東京創元社
- 1050円
書評/SF&ファンタジー
2008-02-21(Thu) [長年日記] この日を編集
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狡猾なる死神よ (創元推理文庫 M テ 8-1)(サラ・スチュアート・テイラー)
東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。
著者サラ・スチュアート・テイラーのデビュー作にして、美術史家スウィニー・セント・ジョーンズを主人公とするミステリーシリーズ開幕篇が本書。
かつて芸術家たちが集い生活を共にした芸術村を舞台に、約100年前と現代に起きた2つの事件の真相を追うミステリーなのだが、著者自身が芸術村で過ごした経験を持つというだけあって、村の歴史とその雰囲気を堪能できる一冊だ。
本書の主人公はハーバード大学の芸術・建築史学科で助教授 *1 を勤めるスウィニー・セント・ジョーンズ。28歳という若さながら、スウィニーは専門の墓石研究で成功を収めた研究者である。しかし、実はそれは彼女自身の孤独を埋めるため、生活を犠牲にした結果だった。 冬季休暇も直前のある日、スウィニーは数少ない友人トビーより風変わりな墓石の写真を見せられる。 それはまるで生きているような若き女性と死神の彫刻だった。 19世紀末に作られたというその作者不詳の像は、しかし、当時の様式とは明らかに異なる作風だった。 興味を引かれたスウィニーは、墓石がある芸術村ビザンティウムに、調査とクリスマス休暇を兼ねてトビーと共に訪れることを決める。 折りしも、ビザンティウムでは、墓石の下に眠る女性の血縁にある老女が謎の死を遂げていた。 約100年前にこの世を去った娘はなぜ死んだのか? 老女の死はそれを隠そうとする者の手によるものなのか? スウィニーは事件の真相を追いはじめる──。
本書の魅力は、なんといっても芸術家村という舞台設定と、ストーリーの各所に散りばめられたラファエル前派、ロセッティ、キーツ、ミレー、アーサー王伝説といった芸術に関係するピースの数々だろう。 正直なところ、芸術に関しては水溜りのごとく浅い知識しか持っていない ──なにしろ、詩人キースの名はダン・シモンズのSF『ハイペリオン』を読んで知ったくらいだ──ため、頭の中が「?」だらけになってしまったのだが、造詣が深く、こういったキーワードにぴんとくる読み手であれば、非常に楽しめるはずだ(もちろん、芸術の知識がないと楽しめないという訳ではないので、念の為)。
ミステリー面もなかなか良い。 100年前に起きた事件の真相を探るため、当時の新聞や日記を調査し絡まった糸を解きほぐしていく過程は個人的に好みだし、陸の孤島キタコレという、ありがちな状況もストーリーを盛り上げてくれる。
ただし、欠点がない訳ではない。 まず、なにより登場人物が多すぎる。芸術家村という存在にリアリティを持たせるため、ある程度の数の住人を登場させなければならないことは理解できるのだが、そこに100年前の住人たちまで絡んできてしまうので、人物たちの関係を把握するのに骨が折れる。 巻頭の登場人物紹介ページの人数だけで27人と書けば、その多さが分かって頂けるだろうか。ここはもう少し整理して欲しかったところだ。
さらに、それまで良い雰囲気で進んできた調査も真相が明らかになるにつれて徐々に尻すぼみになってしまう展開や、犯人が露見するのがかなり間抜け理由だったりする点にも拍子抜けしてしまう。
とは言え、著者にとって、本書はデビュー作。 処女作でここまでのクオリティの作品を仕上げるという力量は素直に評価したい。
訳者あとがきによれば、スウィニー・シリーズは、アメリカでは現在までに4冊上梓されているとのこと。 著者がどのように腕を上げていっているのか。 続くシリーズでそれを確かめられる日が来ることを楽しみに待ちたい。
- サラ・スチュアート・テイラー、野口 百合子
- 東京創元社
- 1029円
書評/ミステリ・サスペンス
*1 最近は「準教授」と言うんだっけ?
2008-02-22(Fri) [長年日記] この日を編集
_ portsのMakefileで"MASTER_SITES= CPAN"という表記ができるようになったらしい
www/p5-HTML-Selector-XPathのパッチが来たので気付いたけど、CPANのMASTER_SITESは
MASTER_SITES= CPAN
というマクロ表記ができるようようなったらしい。それに関連してMASTER_SITE_SUBDIRもいらなくなった。
今まで
MASTER_SITES= ${MASTER_SITE_PERL_CPAN}
MASTER_SITE_SUBDIR= HTML
という感じで書いていたので、かなりすっきり。
2008-02-23(Sat) [長年日記] この日を編集
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国家と人生―寛容と多元主義が世界を変える(竹村 健一/佐藤 優)
竹村健一と佐藤優の対談集。
竹村健一については、すげー失礼なのだが、これまで「過去の人」という印象を持っていた。 そんな訳で、本書も「イロモノかも」なんてことを考えながら読みはじめたのだが、非常に面白くて一気読み。 佐藤優の対談集は、今まで何冊か読んでいるが、その中でも一、二を争う面白さではないかと思う。
二人は本書で沖縄、宗教、ロシア、官僚、読書法などについて語り合っているのだが、特に興味深かったのが、右派である二人の憲法改正に関する考え方の相違。
竹村健一は、既に戦後60年以上も経ったのだから、占領軍によって押し付けられた憲法は時代に即した形で変えられるべきだという、まぁ、右派にありがちな主張をするのだが、佐藤優はそれに異を唱える。 その理由というのが一般的な「護憲派」の主張からはかけ離れていて凄い。佐藤はこう述べる。
一般に「護憲派」と呼ばれる人たちは「憲法9条を守ろう」という意識が強いですね。しかし9条もさることながら、私は憲法全体で重要なのは第1章「天皇」、つまり1条から8条で、絶対にこれを擁護することが大切だと考えているのです。護憲は、天皇制の堅持、国体の護持も含めて考えるべきで、立憲君主制を大切にすることが護憲の基本だと思います(p.258)
つまり、改憲によって天皇制が危うくなる可能性があるので絶対に認められないという、そこらへんの右派がリベラルに見えてしまう考え方なのだ。 佐藤優の他の著作を読む上で、彼のこの考え方を頭に入れておくと、また違った側面が見えてくるのではないかと思う。
その他、沖縄に反米意識はない、日本のキリスト教徒は太平洋戦争に積極的に協力した、社会党が唱えた非武装中立論は軍隊がソ連に扇動されクーデターを起こすことを阻止することが当初の目的だったなど、興味深い話が語られている。
一方で、与那国海底遺跡や某スペリチュアルな人の話など、トンデモ系の話も散見されるが、まぁ、そちらはご愛嬌。
佐藤優ファンならずとも、佐藤優に興味がある読み手であれば、楽しめる一冊だ。
2008-02-26(Tue) [長年日記] この日を編集
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新編真ク・リトル・リトル神話大系 1 (1)(H.P.ラヴクラフト)
クトたん大好きっ子に知らぬ者はいないはずの『真・ク・リトル・リトル神話大系』の復刊第1弾が本書。
オレがクトゥルフ神話に目覚めた時には高くて手が出せず、それなりに自由に金が遣えるようになった頃には既に絶版という、ちょっとした幻の書だったのだが、1,575円(税込)というAmazon価格で手に入るようになるとは、ホント良い時代になったよなぁ。
本書に収録されている作品は下記の通り。
- 「廃都」(H.P.ラヴクラフト)
- 「妖魔の爪」(S.グリーン)
- 「怪魔の森」(F.B.ロング)
- 「俘囚の塚」(Z.ビショップ)
- 「電気処刑器」(A.デカストロ)
- 「夜歩く石像」(F.B.ロング)
最近読んだクトゥルフもの短篇集では、 『ラヴクラフト全集(別冊 上)』 所収の「妖魔の爪」(全集での邦題は「マーティン浜辺の恐怖」)、「電気処刑器」とかぶっているが、訳の雰囲気がずいぶん違うので、それほど気にならなかった(「妖魔の爪」の異常なつまらなさは変わらんけど)。
本書の訳は、「ラヴクラフト全集」の大瀧啓裕の訳文と比較すると、悪く言えば平凡、良く言えばリーダビリティが高いものになっている。個人的には、本書の訳の方が好み。大瀧訳はあまりに言い回しが大仰すぎて、あくびが出そうになってしまうんだよな。
収録作の中では、チャウグナル・ファウグン(チャウグナー・フォーン)たんのデビュー作*1の「夜歩く石像」が一番のお気に入り。 たかが人間に追い掛け回されたあげく、消滅させられてしまう情けなさには、がっかりだけどな!
っつーうことで、2、3巻も読みますよ。
関連
*1 と言うか、他の作品に登場しているのか知らんけど
2008-02-27(Wed) [長年日記] この日を編集
_ 近況
- 読書は『英国紳士、エデンへ行く』を読了。これは傑作! つづいて、『残虐行為記録保管所』を読むよ。
- CodeReposを眺めていたら、色々と面白くなってきたので、中断していたPerlの勉強を再開。『続・初めてのPerl』を読み直している。ここ何年も挫折ばかりだったけど、今度こそ、ものになるかな。
- ここのところ、YAMAHAのルータをいじっていて、なかなか面白いんだけども、やっぱり、tunnelを何本も張る混み入った設定を手書きするのはメンドイし間違えそう。そんな訳で、Perlの勉強も兼ねて、CSVに書いたIPアドレスからtunnel設定のコマンド群を生成するスクリプトを書いてみたり。
2008-02-28(Thu) [長年日記] この日を編集
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古時計の秘密 (創元推理文庫 M キ 5-1 ナンシー・ドルーミステリ 1)(キャロリン・キーン)
東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。
アメリカで昔から多くの子供たちに愛され、現在も書き継がれている国民的探偵小説〈少女探偵ナンシー・ドルー〉シリーズの記念すべき第1弾が本書。
実は「ナンシー・ドルー」についてはごく最近まで知らなかったのだが、先日読んだ『狡猾なる死神よ』の中で、殺人事件の調査に首を突っ込む主人公がナンシー・ドルーごっこのつもりかと揶揄される場面があって、「そういえば、献本リストにナンシー・ドルーの小説があったな」と思い出し、献本して頂いた次第。
個人的な話を書けば、SFに転んだのは、小学生の時に学級文庫にあったSF(今にして思えば、ハインラインの抄訳)を読んだことがきっかけだったのだが、それと同じように、アメリカにも〈ナンシー・ドルー〉シリーズを読んでミステリーに転ぶ子供もいるんだろうなぁと想像しながら読むことができ、なかなか楽しい読書だった。
本書を読んで驚かされるのが、約80年前(!)の1930年に書かれた作品でありながら、ストーリーがまったく古びていないことだ。 ストーリーの根幹のみを描き、時事といったそれ以外の枝葉末節を排した筆致に、現代的な訳を心掛けた訳者の努力が加わり、携帯電話やコンピュータというテクノロジーが登場しないことや、社会福祉制度が充実していないように見えるといったといった些細な点に目をつむれば、つい最近書かれた作品と言っても通用するのではないかと思う。 ここは、日本において子供たちに長年愛読されている〈ズッコケ三人組〉シリーズ〈ぽっぺん先生〉シリーズ(オレのハンドルネームの由来!)といった児童文学に共通しているものだろう。
上記と関連して、もう一つ特筆したいのがストーリー進行の早さ。本書のテーマは、隠された遺言書探しなのだが、ストーリーがそれ一本に絞った直球勝負なので、もう展開が早い早い。例えるなら、Aという場所でBという場所に繋がるヒントが見つかると、次のページどころか、次の行でBに着いてしまっているという感じなのだ。 清々しいばかりの潔さで、最近のやたらと長い小説に慣れた身としては、逆に新鮮に感じてしまった。
また、あとがきで訳者は、勧善懲悪や残酷シーンがないといった、本シリーズの背景にある教育的側面を挙げているが、亡くなった富豪が清くも貧しい生活を送る人々に援助するという、本書のストーリーの骨子もアメリカ的な道徳を表わしているようで興味深い。
対象年齢が対象年齢だけに、ある程度、年齢のいった人間が読んで「傑作!」と感じることはほぼないと思われる作品だが、アメリカの少女(少年も?)がどういった作品を読んでいるのかを知ることができるという面では、貴重な一冊と言えるだろう。
- キャロリン・キーン、渡辺 庸子
- 東京創元社
- 693円
書評/ミステリ・サスペンス





