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2008-02-20(Wed) [長年日記]
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オドの魔法学校 (創元推理文庫 F マ 9-1)(パトリシア A.マキリップ/原島 文世)
東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。
ファンタジー作家パトリシア・A・マキリップの最新邦訳が本書。 実は、マキリップの作品を読むのは、今回が初めてだったのだが、シンプルながらまったく先の読めないストーリー展開が楽しめる良質ファンタジーだった。
王都にある魔法学校をブレンダンという名の若者が訪れることから本書は始まる。 この魔法学校は、国の危機を救った英雄として名高い大魔術師オドによって400年前に創立されたものだが、当初の自由の理念はどこにやら、現在は王による厳格な指導の元、徹底した管理教育が行なわれる場となっていた。 オドは学校創立後に身を隠したが、400年経った現在でも時折姿を現すことでも知られていた。 ブレンダンは、オド本人の依頼により庭師として魔法学校に雇われることとなったのだ。 ブレンダンを迎えた魔法学校の教師たちは、ブレンダンの中に眠る、彼自身も気付いていない強大な力に驚く。 時を同じくして、王都の歓楽街では魔術師を自称するティラミン一行が幻影を操る興行を始めていた。 王の管理下にない魔法は違法とされている。果たしてティラミンが操るものは魔法なのか、ただの手品なのか。 底知れぬ力を眠らせたブレンダンとティラミンに対して、王をはじめとする体制側は懸念を募らせていく──。
これが本書のストーリーの骨子。そこに、ティラミンの娘と警吏総監の息子のロマンス、王都を竜から守った英雄ながら現在は自分のアイデンティティに悩む魔法学校教師、はたまた王女の婚姻話まで絡んできて、事態は雪だるま式に膨れ上がり、どこに行き着くのか見えない混迷の中へと転がっていってしまう。
とはいえ、「混迷を深めている」のはあくまで紙の上だけの話。 ファンタジー小説として本書を見ると、登場人物たちは、単独作品だけにしておくのがもったいないほどキャラ立ちしている上、その数も適度に絞られている。また、個々のエピソードもシンプルで、リーダビリティは非常に高い。絡まりあっていたストーリーが一気に収斂し大団円を迎えるラストも見事だ。
アクションシーンがほぼ皆無なため、冒険活劇的要素を求める向きには少々物足りない点もなきにしもあらずだが、ファンタジーに関する前提知識も要求されず、初心者にオススメできる一冊に仕上がっている。 残虐要素もなく、アダルティな要素もないので、ハリー・ポッターを卒業した若きファンタジーの読み手にもオススメだ。
そうそう、ハリー・ポッターと言えば、邦訳タイトル『オドの魔法学校』(ちなみに原書タイトルはOd Magic)からは〈ハリー・ポッター〉シリーズのような魔法学校を舞台とする学園生活ものを想像させるが、実際は上掲のようにまったく違うストーリーとなっている。 逆に、体制側にとって都合のよい──つまり、管理しやすい魔法のみを教え、生徒から想像力を奪っている魔法学校の教育を批判する内容となっている。 ここは、画一的な教育を押し付け、生徒の想像力を摘み取っている現実の学校教育に対する著者のアンチテーゼとして読むことができるだろうとも思うのだが、まぁ、そこまで深読みする必要もないだろう。
ファンに出版を待望されながらも、マキリップの作品の邦訳ペースはかなり遅いようだ。 本書が起爆剤となって、マキリップ作品の邦訳刊行が続くことを望みつつ、既刊を消化したいと思う。 しかし、もう絶版のものも多そうだなぁ。とりあえず、『影のオンブリア』、『妖女サイベルの呼び声』、岡野玲子による『妖女サイベルの呼び声』のコミック化『コーリング』あたりから読んでみるか。
- パトリシア A.マキリップ、原島 文世
- 東京創元社
- 1050円
書評/SF&ファンタジー



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