ぽっぺん日記@karashi.org
2008-04-27(Sun) [長年日記]
_ 文学作品が苦手な人間にも読もうと決心させてくれる好特集──考える人 2008年 05月号 [雑誌]
新潮様より本が好き!経由で献本御礼。
普段、雑誌はあまり読まないせいもあって、本誌の存在も今回はじめて知った。 本誌のサブタイトル、plain living & high thinkingがなにを表わしているのか、今一つぴんとこなかったりするのだが、文学好きのためのLOHAS的な雑誌と考えれば、そう的外れではないのではないかと思う。 1400円(税込)という価格は、雑誌としては高めの部類に入ると思うが、掲載記事の執筆陣も豪華だし、カラーページも豊富なので妥当な金額と考えていいだろう。
さて、今号の特集は「海外の長篇小説ベスト100」。 作家、批評家、翻訳家、文学研究者、新聞記者、エッセイスト、脳科学者、哲学者、精神科医など、様々なジャンルの書き手、総勢129人が選んだ海外の長篇小説のランキングが掲載されている。 寄せられた回答やエッセイ、ロングインタビューや対談などを読むと、読書に対する各人のこだわりが見えてなかなか面白いのであるが、同時に恥ずかしさのあまり、こそこそと隅っこに隠れたくなるような内容にもなっている。 というのも、どうにも文学作品というヤツが苦手で今まで全然読んだことがないからなんですなー。
ちなみに、10位以内(Webに掲載されている目次で確認できます)で読んだことがある作品は皆無。 100位以内を見ても、わずか6作しか読んだことがないという惨憺たる有様だったりする。
青山南、加藤典洋、豊崎由美の三氏の対談で、豊崎氏が語っているところによれば、イギリスの学者たちの間では「恥辱ゲーム」というものがあるそうだ。 その内容が
世界的に有名で、文学者だったら絶対読んでいなきゃいけないのに、なんと読んでいないという本を告白する。それが名著であればあるほど勝つ。だけど自分は恥辱にまみれる。(p.95)
というものだそうで、この伝でいけば「オレなんて優勝候補だな」と思ったりして。
ただ、出版業界の昨今の苦境を考えると、そう開き直っているへらへらしている場合ではないのかもしれない。 豊崎氏は翻訳小説の将来に次のように語っている。
私は翻訳文化の存続にはすごく危機感を覚えてて、いま買っておかないととか、自分で買っとかないと売れない、売れないと出してもらえないと、どうしよう、という恐怖感があって、つい目につく端から……。(p.101)
うむむ。マイナーな(つまり、あまり売れない)作家の作品が訳されない時代が来てしまうと非常に困ってしまう。
青山氏はその原因のひとつを次のように分析している。
「本の雑誌」の台頭も影響しているんじゃないかな。世に言われている名作なんかより、もっと身近におもしろいものがあるよと読者を自由にしてきた。それでかなり自由になったんだけれど、自由になり過ぎちゃったのかもしれない。(p.101)
「本の雑誌」ファンとしてはなんとも耳に痛い指摘だ。
翻訳文化の存続のためのささやかな活動として、今年中にはランキングに挙がっている本のいくつかは読みたい。
とりあえず、
- 『百年の孤独』(ガルシア=マルケス) ← 堂々の1位だし、押さえておいた方が良さげ。
- 『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー) ← 光文社から出た新訳を読みたい。
- 『ロリータ』(ナボコフ) ← 映画は観たことがあるので入りやすそうだ。
こんな感じだろうか。
なお、本誌に掲載されている広告よれば、前々から読んでみたいなぁとなんとなく思っていたトマス・ピンチョンの作品の新訳版が2009年春から刊行予定とのことで、 期待大。 既に『ヴァインランド』は発売中とのことで、今度手に取ってみたいと思う。
そんな訳で苦手な文学作品を読もうと決心させてくれる好特集でありました。
特集以外の記事にもさっと触れておこう。
今号で最終回の「季節には味がある」では、白魚と筍の料理が紹介されている。 白魚はなかなか手に入れる機会はないが、筍は自宅の竹薮からにょきにょき顔を出しはじめているので、連休中に掘って刺身筍にしてみたいと思う。 なお、京都の筍はやわらかく、えぐみもないので朝掘り物は下茹が必要なく、関東のものは歯応えがあり香りがある一方、下茹が必要な由。 関東の方はくれぐれも下茹なしで刺身にしないように。
アフリカの大地に生きる動物たちの写真で心を和ませてくれるのは、写真家、岩谷光昭氏の「動物たちの惑星」。 ただ、麓の重要な水源になっているキリマンジェロの雪氷も、森林伐採をはじめとする要因により少なくなる傾向にあるという。 いずれは水場も消滅してしまう可能性があるとのことだ。
同じくアフリカの地、コンゴの奥地に幻の恐竜モケレ・ムベンベを探す旅行記が『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン)。 今号にはその冒頭が掲載されている。 全財産をはたいてモケレ・ムベンベを探す旅に出た著者には思わずニヤニヤしてしまう。 UMA(未確認不思議動物)好きにはたまらない本だ。 既に『コンゴ・ジャーニー』は刊行されているようなので、こちらも近いうちに読みたいと思う。
- 新潮社
- 1400円
書評/海外純文学



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観音浄土に船出した人びと―熊野と補陀落渡海 (歴史文化ライブラリー 250)(根井 浄)