トップ «前の日記(2008-05-17(Sat)) 最新 次の日記(2008-05-19(Mon))» 編集

ぽっぺん日記@karashi.org


2008-05-18(Sun) [長年日記]

曇時々晴

_ 6年ぶりの仏ミステリシリーズ第2弾──論理は右手に (創元推理文庫 M ウ 12-3)(フレッド・ヴァルガス)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

先日読了した『死者を起こせ』につづく、フランスの本格ミステリー・シリーズ第2弾。

歴史学者崩れの個性的な3人組+元刑事が探偵役だった前作に変わって、本書の探偵役はフランス中に謎の情報網を持ち〈ドイツ人〉というあだ名で様々な人間に恐れられている元内務省調査員ケルヴェレール。 秘密を知りすぎていたがゆえに内務省をクビになった彼だが、現役時代と同じく本能のまま情報収集に情熱を注いでいた。 代議士と極右活動家の密会現場に張り込んでいたある日、ケルヴェレールは木の下に落ちていた犬の糞から人骨の一部がのぞいているのに気付く。 事件の臭いを嗅ぎ付けたケルヴェレールは、資料整理のバイトとして雇っていた知人の元刑事の甥、マルクを巻き込み、独自の捜査を開始する──。

前作のファンには残念なことに、『死者を起こせ』の主人公の4人は、本書では完全に脇役。 マルクとマティアスはワトソン役(でも、結構おいしいところを持っていくぞ)といえるが、リュシアンはマルクの荷造りを手伝う時にちょろっと登場するだけだし、マルクの伯父、ヴァンドスレールに至っては電話の相手としか登場しないという寂しさである。

とはいえ、2転3転する容疑者と、最後までどこに落ち着くか分からないストーリーは健在。 導入部に多少強引さも見られるものの、隠された過去を持つケルヴェレールにはじまり、犬の中の人骨、巨大な占いマシンと、謎めいた要素に彩られたストーリーをきれいに着地させる著者の手腕は見事だ。 さすがは「仏ミステリ界の女王」(by 帯)と感心した次第。

それにケルヴェレール自体もペットのヒキガエルをポケットに入れて歩くような変人なので、個性という点では決して4人に引けを取っている訳ではない。 前作の4人のファンであるならば、少々毛色が違うものの、ヒキガエルに話しかけながら事件を捜査するケルヴェレールの姿もまた楽しめるのではないかと思う。

ちなみに、ストーリーは前作とリンクしている訳ではないので、前作を未読の人でもご安心を(もちろん、前作を読んでいた方が楽しめるが)。

オススメできる本シリーズだが、少々心配なのが邦訳の刊行ペース。 第1弾の『死者を起こせ』が出版されたのは2002年で、第2弾の本書が出版されたのは2008年。 その間、なんと6年もの期間が空いているのだ! よほどの人気シリーズは例外として、翻訳シリーズ物の刊行スピードが遅いのは通例ではあるが、ちょっとこれは間が空きすぎじゃないだろうか。 第3弾の出版までにまた6年かからないことを切に願う。

というか、早ければ早いほど嬉しいです。 > 東京創元社様


論理は右手に

Amazonで購入
書評/ミステリ・サスペンス

Tags: 読書感想 | | | | | | | Permalink
[]
本日のPingbacks(全0件)

トップ «前の日記(2008-05-17(Sat)) 最新 次の日記(2008-05-19(Mon))» 編集