ぽっぺん日記@karashi.org
2008-05-23(Fri) [長年日記]
_ 現代中東史の舞台裏を描く──
モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」(エフライム・ハレヴィ)
モサドといえば、「泣く子も黙る」という枕詞をつけることがふさわしいイスラエルの諜報機関である。
そんなモサドの前長官がモサドの闇に隠されていた活動の一部を白日の元に曝したのが本書。
とはいっても、いわゆる「007」ばりのスパイ活動が描かれている訳ではない。 暗殺や誘拐、盗聴などの非合法活動に明け暮れているようなイメージが持たれているモサドが、実は「影の外務省」とも呼ばれる存在であり、常に角突き合わせているようなアラブ諸国やパレスチナ側と和平を含む様々な交渉を行なっていたことを明らかにしているのだ。
イスラエル・ヨルダン和平交渉を決定的にしたフセイン国王とのトイレでの会話など、現代中東史の舞台裏を描くとともに、イスラエルの国内事情も忌憚ない筆致で描き出している。短期的な視野でしか物を見ない外務省との権力闘争や、和平よりも地元の利益を優先する国会議員など、「どの国も一緒だなー」と感じさせて非常に面白かった。
その他、伝統的にユダヤ人に対する差別意識を持つがゆえにイスラエルを軽視するEU諸国や、会議で居眠りしている最中でも金の話になると飛び起きるPLO前議長アラファトの逸話も書かれていて、こちらも興味深い。
本書では諜報機関という状況によっては非合法活動もせざるを得ない組織におけるトップの心構えが語られているが、その中でも特に印象に残ったのものを引いておこう。
組織は個人を保護し、個人の代わりに責任を負うべきであろう。あからさまに集団から切り離し、孤立無援の状態にしてはいけない。(p.298)
これはスイスで盗聴活動を行なっていた部下が逮捕された時の言葉である。 諜報機関に限らず、組織というものはそれに属する個人をいざという時には守らなければならない。 さもなければ、組織としての秩序が崩壊する、という事実を改めて思い起こさせる言葉だ。
本書の解説は、著者自身と面識のある作家・佐藤優によるもの。 モサドや中東史にあまり詳しくない向きは、まずこちらから目を通した方がより楽しめることと思う。
モサドに興味がある読者の他に、中東史入門からワンステップ進んだ本としてもオススメできる一冊である。



まで頂ければ幸いです。
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