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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-06-19(Thu) [長年日記]

_ 古今東西の絵画を楽しむ──綺想迷画大全(中野 美代子) 綺想迷画大全(中野 美代子)

『本の雑誌』2008年4月号でエンタメノンフの書き手、宮田珠己氏が絶賛していたので手に取った本。

「中国文学者にして、シノロギー図像学の第一人者」(著者略歴より)であり、『西遊記』の訳者としても有名な著者が古今東西の絵画をテーマに、描かれたモチーフや時代背景、隠された細部、技法など様々な角度から思考を広げているエッセイ集が本書だ。

いやー、これは面白い。

取り上げられている絵画は、前口上で著者が

自分の目でえらびとり、勝手に自分の論理を展開することの快楽が得られる絵画こそが、「私にとっての絵画」というだけのこと(p.8)

と記すだけあってヴィジュアル的に面白く、奇妙な味わい深いなものばかりなので、「変わったもの」好きにはたまらない一冊だ。 文章も柔らかく、敷居も非常に低いので、オレのような美術オンチでもまったく問題なく楽しめる内容となっている。

女性の年齢について書くのは重々失礼なのは承知な上で書いてしまうが、著者はなんと1933年生まれ! なんとも若々しい文体で驚かされた。 やはり、探究心旺盛な精神がいつまでも若いままにさせておくのだろう。

掲載されている図版がないかなーとググってみたところ、p.43の『聖ヴォルフガングと悪魔』がPassion For The Future: 綺想迷画大全で紹介されていたので、パクってマネして貼っておく。

聖ヴォルフガングと悪魔

マルコ・ポーロの『東方見聞録』に画家が勝手に想像した挿絵(!)が入った『驚異の書』の

ひっくり返って巨大な一本足を上にもちあげている怪物スキヤポデス(p.49)

を描いた図版も面白いのだが、ググっても見付けらなかったので本書を参照されたい。 『驚異の書』は岩波書店から2002年に全訳が発刊されたようなのだが、残念ながら現在、絶版のようだ。 興味のある向きは図書館にリクエストするといいのではないかと思う。

その他、2章を使って解説されている、河沿いの街の様子を活写した『清明上河図』(清明上河圖 - Wikipediaを参照のこと)が住人のひとりひとりまで非常に細かく描き込まれていて、どことなくマンガちっくで印象に残った。 ちなみに、リンク先の『清明上河図』にぺたぺた捺されているハンコは、後世のコレクターのものとのこと。 皇帝が所有していた場合には、その絵画を鑑賞した歳が彫られたハンコを捺していたそうだ。 同じアジアでも日本と絵画の扱いがずいぶん違うことを感じさせる逸話だ。

本書は初出は『歯医者さんの待合室』という変わった月刊誌の連載であるそうだ。 通っている歯医者では目にしたことがない雑誌だが、こんなに面白い連載が読めるなら、ぜひ置いて欲しいぞ、と思ったのだが、出版社のWebサイトにも掲載されていないし、ググっても古本しか出てこないので、こちらももう廃刊ぽい。 残念。

本書でちょっと気になったのが、見開きの図版のいくつかで細かい部分がページの折り目に入ってしまって確認しづらいこと。 図版が大きな意味を持っている本なので、なんらかの配慮が欲しかったところだ。

絵画というと、どうしても身構えてしまうものだが(美術オンチであればなおさらだ)、実はそれほど肩肘張らずに楽しめるということを教えてくれる好著である。

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