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2008-07-01(Tue) [長年日記]
_ ハイスクールに潜む社会問題を浮き彫りにする傑作探偵小説──冬そして夜 (創元推理文庫 M ロ 3-8)(S.J.ローザン)
ニューヨークを舞台に、中年のアイルランド男性、ビル・スミスと魅力に溢れた中国系アメリカ人女性、リディア・チンのふたりの私立探偵が活躍する〈ビル・スミス&リディア・チン〉シリーズの第8弾が本書。
- 直良 和美
- 東京創元社
- 1365円
書評/ミステリ・サスペンス
実はこのシリーズを手にするのは本書がはじめて。 基本的にシリーズものは第1弾から読むことにしているのだが、書籍紹介によれば、
シリーズ第8弾ではありますが、ここから読み始めてもまったく問題はありません。
[東京創元社|冬そして夜(S・J・ローザン)より引用]
ということなので献本して頂いた次第。 結論から書くと書籍紹介通り、本作からでも楽しめる一冊だった(もちろん、第1弾から読んだ方がさらに楽しめることは間違いないが)。
本書は2003年度MWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞に輝いたとのこと。 一般的なアメリカ人が意識しないであろうアメリカの社会問題をえぐりだしており、それも納得の傑作だ。
本シリーズの特徴はビルとリディアが作品ごと交互に主役をつとめることにあるそうだが、本書の語り手はビル。 ストーリーは、11月の深夜、突然の電話によりビルの眠りが破られたシーンからはじまる。 その電話はひとりの少年が逮捕されたことを告げるものだった。 その少年の名はゲイリー。 ビルの妹、ヘレンの息子、つまりビルの甥だった。 15歳であるゲイリーはハイスクールのアメフト部に所属する真面目な少年なのだが、ビルにも明かさない理由によりニューヨークに家出してきたらしい。 身元を引き受け、一度はゲイリーを保護したビルだが、隙を突からゲイリーに逃げ出されてしまう。 ゲイリーの行方の手掛かりを求め、ビルは疎遠にしているヘレンが住むニューヨークのベッドタウンである高級住宅街、ニュージャージ州ワレンズタウンに向かう。 妹の求めを受け、ワレンズタウンでの調査を開始したビルだったが、予期せず、ティーンエイジャーの死体を発見することになる。 はたしてこの死体にゲイリーは関係しているのか? ビルの必死の探索がはじまる……。
調査を進めるビルの前に、23年前に起きたレイプ事件が立ち上がってくる。 現在と過去の2つの事件を貫くのがアメフト部員たちの存在である。
ハイスクールを舞台にしたアメリカ映画に欠かせない登場人物といえば、このアメフト部員たちである。 彼らは学校という狭い世界のヒエラルキーの頂点に君臨し、いじめや軽犯罪に手を染めても、他の生徒はもちろんのこと、教師や保護者、はては警察まで黙認してしまう。 これが決してコメディのネタではなく、日本の高校野球と比較にならないほどハイスクールのアメフトに熱狂し、なにがあってもアメフト部員たちを守ろうとする保守的なワレンズタウンの住人たちの姿を通して、現代アメリカの病巣であることを本作は浮き彫りにしていく。
これによって引き起された悲劇が1999年のコロラド州リトルトンで起きたコロンバイン高校銃乱射事件だ。 12名の生徒および1名の教師が犠牲となり、24名の重軽傷者を出した(在校生であるふたりの犯人は自殺)この事件は、銃規制をテーマとするマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』の題材ともなった。 事件発生の原因が銃社会というものであることが一番大きいことは言うまでもないが、本作でも示唆されるようにアメフト部員たちのような体育会系の生徒──通称「ジョックス」に虐げられつづきたナードの復讐という面も大きいと言わざるをえない。
上記の社会問題とともに描かれるのが、ビルが抱える家族の問題だ。 20年以上に渡りまったく交流のなかったヘレンや、ビルと互いに憎しみあうヘレンの夫にしてビルの義弟、スコットとの確執を通して、彼らが心に持つ傷が徐々に明らかになっていく。 表面上は単なる悪役に見えても、その実は違い、ひとりの悩める人間として描き出す著者、S・J・ローザンの温かな視線を感じることができる。
本書はハッピーエンドとはいえない結末をむかえる。 それでも絶望的な読後感に陥らずに済むのはこの温かな視線があるからと言えるだろう。
シリーズ第1弾から遡って、ビルとリディアの活躍を読みたくなる好著だ。 オススメしたい。
なお、学校新聞が単なるお遊びではなく、ジャーナリストになるための登竜門になっているとともに、大きな社会的影響力を持っている(警察の記者会見にも出席できるそうだ)ことも本書で知ったので付記しておく。
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超能力番組を10倍楽しむ本(山本 弘)が参考になる。(読書感想)




まで頂ければ幸いです。
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