ぽっぺん日記@karashi.org
2008-07-05(Sat) [長年日記]
_ 軍事ネタをネタとして楽しむ一冊──
戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA(押井 守/岡部 いさく)
「笑っていいとも」のテレフォンショッキングに出演して微妙な空気を醸し出していたアニメ監督、押井守と、先日、水玉蛍之丞の実兄だということを知って驚かされた軍事評論家、岡部いさくの対談集が本書。
てっきり毎年2月26日に同じふたりが行なっている戦争をテーマにしたトークイベント「226イベント」を活字化しないという原則を大人の事情で曲げて書籍化したものかと思っていたら、新たに行なわれた対談だった。 まぁ、当たり前ですな(じゃないと、チケットを買って「226」に行っている人が怒るだろう、たぶん)。
自衛隊の装備を通して、「戦争のリアル」を持たない日本人の戦争観を浮き彫りにするというのが本書の建前であるのだが、実際は重度の軍事オタクである押井守が岡部いさくを合いの手にして、 小銃にはじまり、携行対戦車兵器、戦車、次期戦闘機、軽空母保有論までと様々なネタを喋りまくっている一冊だ。
陸自はコストパフォーマンスと装備できる絶対数を考え、携行対戦車兵器をパンツァーファスト3ではなく、RPG-7か、それをパクった国産にするべきという押井守の主張には、まぁ、頷けなくもないのだが、他の主張は
- 陸自の戦車にはメルカバ
- 空自の次期戦闘機にはスホーイ30MK
- 対艦攻撃機として退役したF-14トムキャット+AIM-54フェニックスを二束三文で購入
ってな感じで、オレのような軍事に関する造詣が浅い軍事オタクから見てもちょっと香ばしい。
とどめが日本海や南シナ海防衛のために、ハリアーを載せた軽空母4隻(改修ローテーションを見込んで)を保有すべきという話で、「これはちょっと微妙すぎるだろう。だいたい、どこにそんな金があるの?」とツッコミを入れたくなったのだが、これについては岡部いさくが「あとがき」でやはり否定的な意見を書いていて、ちょっとおかしかった(その時言えよという感じもするが)。
まぁ、日本人が戦う架空のベトナム戦争(雷轟rolling thunder PAX JAPONICA (PAX JAPONICA)(押井守))で、He-219ウーフーのパクリを艦上攻撃機にしちゃった人なので、ネタと割り切って楽しむのが本書の正しい読み方なのだろう。
個人的に興味深かったのが『機動警察パトレイバー2 the Movie』の裏話。
冒頭でカンボジアに派遣された陸自のレイバー部隊がRPG-7にボコボコにやられて全滅するシーンがあるが、あれは「レイバーが大嫌い」な押井守の
レイバーなんて装備するのに比べたら、RPG-7を一○○挺のほうがよっぽどマシだよ(p.148)
という主張とのこと。
さらに、最終的にはボツになってしまったが、空挺レイバーと90式戦車が戦って、空挺レイバーがボコスカにやられるというシーンも考えられて、コンテも切っていたそうだ。 あの地味なストーリーには似わないとは思うが見てみたかったなー。
資料的な価値があるかといえば疑問だが、軍事ネタをネタとして楽しめる人であれば間違いなく面白い本だ。 オススメしたい一冊。


まで頂ければ幸いです。
叛逆としての科学―本を語り、文化を読む22章(フリーマン・ダイソン)
ゲバルト時代 SINCE1966-1973 あるヘタレ過激派活動家の青春(中野正夫)