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2008-07-27(Sun) [長年日記]
_ 本年エンターテイメント小説における最大の収穫の一作──『新世界より』(貴志祐介)
貴志祐介による千年後の日本を舞台にしたSF小説。
上下巻合わせて1100ページを超える大作だが、全篇に渡ってベテランの手練の技が冴え渡っており、その長さを感じさせず、ぐいぐい読ませる作品だ。 今年のエンターテイメント小説の最大の収穫のひとつとして数えられることになる本であることは間違いない。
千年後の日本──。
そこに暮らすすべての人間は「呪力」と呼ばれる超能力を持ち、最小限の機械技術のみを用いて、農村規模の町で生きていた。 主人公、渡辺早季が過去を自分の人生と数々の事件を回顧する手記として綴られるストーリーは、究極のロハスとでもいうべき文明の中で、送られた彼女の子供時代から語り起こされていく。 小学校時代。呪力を身に付けての全人学級への進学。 早季は順調に大人への階段を踏んでいく。 だが、生徒の間では常に不気味な噂が囁かれていた 悪鬼や業魔と呼ばれる怪物から町を守る八丁標。 生徒を狙う猫。 教師以外の出入りを許されない校舎の中庭。
不穏な空気が漂いつつも平和だった青春の日々は夏季キャンプを期に一変することとなる。 早季と仲間たちは好奇心のまま、行くことを禁止されていた霞ヶ浦まで乗っていたカヌーを進めてしまう。 それは彼らに世界の隠された真実の一端を知らしめるとともに、将来の大災厄を前触れともなるのだった──。
本書でまず目を引くのが、千年後の未来に暮らす数々の奇妙な生き物たちの生態だ。
人間ほどの体長で高度な知能と社会構造を持つバケネズミ。
『風の谷のナウシカ』に登場する王蟲(オーム)を思わせるウミウシの末裔、ミノシロ。
ニセの巣を作り托卵をする鳥たちの卵を掠め取るヘビ、カヤノスジクリ。
そんな
アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界(ドゥーガル・ディクソン)や
フューチャー・イズ・ワイルド(ドゥーガル・ディクソン/ジョン・アダムス/松井 孝典/土屋 晶子)を彷彿とさせる遠未来の生物たちが、現在から生き続ける生物たちと同じ視点で描写されるため、読み手は実在と架空の生物の区別が曖昧になってくる。
ちなみに「千年くらいで、そんなに進化するもんかね」と思った人。 あなたは正しい。 本書では、しっかりそんなツッコミどころもカバーされています。
早季たちが年齢を重ねるごとに、真実が浮かび上がっていき、ユートピアと思われていた世界が実はディストピアであることが明らかになっていく。 この構成自体はSFとしては特に目新しいものではないのだが、特筆したいのは、本書ではただディストピアである訳ではなく、そこには理由があるということだ。
ネタバレになるので、詳しくは述べることはできないが、本書のような読み手にも納得できる「ディストピアである理由」を示すことこそ、ほとんどのディストピア小説に欠けていたものではないだろうかと思う。
読み手にも納得できる、その「理由」を支えるものこそ、数々のディティールである。 大は「激しい怒りと敵意を抱けば、目の前にいる人間の頭が破裂してしまう」世界がなぜ成立し得るのか──から、小は不浄猫がごろごろと喉を鳴らすのか──まで、そこには著者の卓越した技が見える。 ぜひ堪能して頂きたい。
本書を読んだ読者は千年後の「新世界」の空気を感じ取ることができるに違いない。 もちろん、それは限りなく悪夢に近い世界ではあるが。
_ カブト虫大発生
※虫に弱い人は読まないことを推奨
庭のむくげの木にカブト虫がそれこそ「びっしり」という感じについていた。 たぶん、100匹はくだらない。
改めてみると、なんか鳥肌が立つね。
それにしても、なんだこんなに出てきたんだろうなぁ。 近所の柿の木にもびっしり付いていた。






まで頂ければ幸いです。
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