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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-07-28(Mon) [長年日記]

_ 『悪女フリート』に描かれた秀逸なデザインの怪物たち──ブリューゲル探訪―民衆文化のエネルギー(森 洋子) ブリューゲル探訪―民衆文化のエネルギー(森 洋子)

ブリューゲル研究の第一人者である著者によるブリューゲルに中心としたエッセイ集。 ブリューゲルなどの絵画のエピソードとともに、自身の研究で出会った人々や体験などについても語っている。

自他ともに認める美術オンチの私だが、ブリューゲルについては『怖い絵』(中野京子)で『絞首台の上のかささぎ』を見て面白いなぁと感じ、本書を手に取った次第。

本書で紹介されるブリューゲルの絵画は『絞首台のかささぎ』の他、16世紀のネーデルラントの100を超える諺を描いた『ネーデルラントの諺』や当時の子供たちの91種類の遊びを描いた『子供の遊戯』など多岐に渡っている(ちなみに『絞首台のかささぎ』のついては、著者の解釈は中野京子氏と異なっている。 読み比べてみるのも面白いのではないのだろうか)。

Pieter_Bruegel_the_Elder-_The_Magpie_on_the_Gallows

ネーデルラントの諺

子供の遊戯

その中でもひときわ目を引くのが『悪女フリート』だ。

悪女フリート

大きいサイズで見ると、ある程度分かると思うが、中央を駆けているがこの絵の主人公とでもいうべきフリートだ。 彼女は鎧を身に付け、右手に剣、左手には鍋やフライパン、金銀貨、宝石箱などの掠奪品を持っている。 彼女に従うのは、干し草用フォークや火掻き棒などで武装した同じく女性たちだ。

彼女たちと相対するのが、動物や物品が化け物と化した百鬼夜行もかくやというモンスターたち。 一番目立つ、左奥の巨大な顔について著者は次のように解説する。

建物は中世以来の伝統的な表現である巨大な悪魔の顔であり、その入口は鋭い歯をむきだしにした悪魔の口となっている。しかし、注意深くみると、巨大な目の瞼は板戸、眉毛はむく鳥が巣を作る壺からできている。(中略)その他、悪魔の鼻毛は枯枝や昆虫の尻尾、鼻には鉄製のリングをつけ、耳には真っ赤なマントからできている(p.63)

現代にも充分通用するシュールなデザインといっても過言ではないだろう。

本書を読んで驚かされたのはその中で語られる著者の経歴。 略歴によれば、

明治大学教授・名誉教授

お茶の水女子大学哲学科卒、ミュンヘン大学美術史学科留学、ブリンマー・カレッジ美術史学科大学院修士課程卒、ベルギー政府給費留学、学術博士(国際基督教大学)

とのことである。 最初の留学先であるドイツには1959年ということであるから、その当時の日本では留学は自体が珍しかったのはもちろんのこと、女性の留学というのは輪をかけて珍しかったことは想像に難くない。 本物の才女というのはこういう人のことをいうのだろう。

著者の著書を読んだのは今回が初めてなのだが、過去にブリューゲルを研究したブリューゲルの「子供の遊戯」―遊びの図像学(森 洋子)ブリューゲルの諺の世界―民衆文化を語る (明治大学人文科学研究所叢書)(森 洋子)を上梓しているとのこと。 残念ながら、どちらも絶版なので図書館で探して貰い、見付かるようであれば読んでみたいと思う。

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