ぽっぺん日記@karashi.org
2008-08-09(Sat) [長年日記]
_ 軍事オタクが読んでも楽しめる美術書──
戦争と美術―1937-1945(椹木 野依/蔵谷 美香/河田 明久/平瀬 礼太/大谷 省吾)
自他ともに認める美術オンチなのだが、最近、絵画関係の本を読むのが面白くなってきたのに加えて、戦争芸術という軍事オタクなら、ピピッときてしまう内容なので読んでみた本。
ちなみに15,750円(税込)というスゴい値段なので図書館にリクエストして、他館から取り寄せて貰った。GJ! > 司書の人。
本書には日中戦争が勃発した1937年から1945年の終戦までに発表された様々な美術作品が掲載されている。 収録作は、戦闘など戦争に関わるシーンを描いた戦争画が中心であるが、直接戦争を描いている訳ではなくとも、売上金を軍に献納するために作成された美術作品も戦争芸術に分類され収められているのが特徴だ。
とはいえ、やはり軍オタとしては、どうしても注目してしまうのは戦争画の方である。
ひとくちに戦争画といっても、様々な画家によって描かれているだけあって、表紙にも使われている鶴田吾郎《神兵バレンパンに降下す》のようにリアルなタッチなもの(構図はリアルとはいえないが)から、山下菊二《日本の敵米国の崩壊》のようなシュルレアリスムの作品、日本画の手法で描かれた小早川秋声《日本刀》までと多岐に渡っている。 個人的には、北斎を思わせる筆遣いで荒波を乗り越える伊号潜水艦を描いた茨木衫風《潜水艦の出撃》が印象に残った。
残念なのが、戦争画といえば大抵の人がまず考えるに違いない、藤田嗣治の作品が掲載されていないこと。 著作権継承者の同意が得られなかったということだが、画竜点睛を欠く感は拭えない。
作品そのものと並んで、軍オタ的に外せないのが作品解説だ。 艦上機の塗装の間違いや
カウリングをはずされ、発動機を整備中と思われる機体は九七式三号艦攻だが、本機に搭載されていたのは中島製の「栄」発動機で、本発動機は複列星型十四気筒であったが、描かれている機体の発動機のシリンダーの数は明らかに十四本以上ある。(p.218)
と発動機の間違いを指摘するなど、美術書とは思えないほど詳しい記述あったりする。 この解説は学芸員の人によって書かれているのだが、間違いなく軍オタだろう(笑)。
本書には論考も収録されているのだが、その中のひとつは以前読んだ美術評論集『なんにもないところから芸術がはじまる』の著者、椹木野衣によるもの。 あいかわらずレトリック過剰な文章で非常に読みにくいのだが、藤田嗣治の《アッツ島玉砕》の日本陸軍兵士をガンダムのザクに置き換えた、会田誠の《ザク》という作品があることを知ることができたのは収穫だった。 会田は他にも戦争画を翻案した「戦争画リターンズ」というシリーズを描いているそうなので、どんな作品があるのか、あとで調べてみようと思う。
値段が値段なのでおいそれと買える本ではないと思うが、興味がある人はオレのように図書館にリクエストしてみるといいんじゃないだろうか。


まで頂ければ幸いです。
叛逆としての科学―本を語り、文化を読む22章(フリーマン・ダイソン)
ゲバルト時代 SINCE1966-1973 あるヘタレ過激派活動家の青春(中野正夫)