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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-10-01(Wed) [長年日記]

_ 第二次世界大戦勃発す──第三帝国の興亡 3 (3)(ウィリアム L.シャイラー) 第三帝国の興亡 3 (3)(ウィリアム L.シャイラー)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

第二次世界大戦に突入するドイツを現地で取材した著者が、膨大な資料を駆使しながら、誕生からわずか12年余で滅びたドイツ第三帝国の興亡を描くノンフィクション・シリーズの第3弾。

全5巻の「第三帝国の興亡」シリーズもいよいよ折り返し地点に到達した。 本書では、独ソ不可侵条約、ポーランド征服と解体、そしてデンマーク、ノルウェーの占領が語られる。

538ページというシリーズ既刊最長のページ数を誇る本書であるが、そのうちの実に300ページ以上が1939年初頭から1939年9月1日のポーランド戦争勃発までの9ヶ月間を描くことに当てられている。

そこから立ち上がってくるのは、関係各国が繰り広げる政治的駆け引きである。

  • ポーランド侵攻までの準備を整えるために、口先だけの平和を唱えて時間稼ぎに邁進するドイツ
  • 平和的解決を目指しながらもオーストリア、チェコスロヴァキアと煮え湯を飲まされてきたがために、ドイツを信用することができない英仏
  • できるだけ得られる利益を増やそうとしたたかに振る舞うソ連
  • あくまでも徹底抗戦の構えを崩さないポーランド

といった国々の中でも、特に印象に残ったのが、ドイツと同盟を結びながらも、戦争に巻き込まれることを恐れ、ドイツとの距離を置こうとするイタリアである。 なんというか、いかにもイタリア的な態度というべきだろうか。

最終的にはムッソリーニの決断によりドイツと道をともにすることになるのであるが、後々ドイツの足を引っ張る存在となることを考えれば、参戦しなかった方がドイツ、イタリア双方にとって良かったのではないだろうか、などということを思ってしまった。

前巻では、ドイツはもちろんのこと、ドイツの蛮行を看過してしまった英仏にも怒りをあらわにした著者だが、本書ではそれらの国に加え、ポーランドも非難の対象になっている。

まだ独ソ不可侵条約が結ばれる前、ソ連より提案されたドイツのポーランド侵攻に対抗するためのソ連軍進駐をポーランドが拒否したことを、著者は

信じられないほど愚かな反応(p.171)

と記している。 しかし、正直なところ、これは公平な見方とはいえないだろう。

あとにソ連がドイツとともにポーランド解体を行ったこと、第二次世界大戦後に数々の衛星国を作り上げたという歴史的事実を考えれば、事態収束後にソ連がすんなりポーランドから引くと考える方が逆に不自然だ。

被征服国への非難は、ポーランドだけに留まらず、のちにドイツの軍門に下るデンマークやノルウェーにも及ぶ。 中立だったこれらの国に対して、著者は次のように記す。

あきらかに中立は、全体主義の支配する世界で生き残ろうとする小民主主義国を保護するものではなくなっていたのだ。フィンランドはそれを知ったばかりであり、こんどはノルウェーとデンマークだった。世界の友好的強国の援護をゆとりのあるうちに──実際の侵略がはじまる前に──受け入れようとしなかった不明を、彼らはみずから恥じるべきであった。(p.552)

いまだ大戦の記憶も生々しい1950〜60年代に書かれたということで仕方がない面もあるが、それでも独善的と評せざるをえない言葉である。 この裏には、連合国を勝利に導いたアメリカの国民である著者の強烈な自負があると見ても、あながち間違いではないだろう。 現在の混沌とした世界情勢の一因となった、アメリカの独善性が見えるようで、なんともいえない気分になる。

多少、著者の筆に気になる部分もあるものの、本書の資料的な価値はいささかも減じられるものではない。 第二次世界大戦に興味がある読み手には文句なしにオススメの太鼓判を押せるシリーズである。

次巻では、西ヨーロッパ征服と大きな転換点となる対ソ戦が描かれる。 スターリングラード攻防戦がどう語られるのか、今から楽しみだ。

最後に、ナチスの代名詞として歴史に刻まれることとなる地名が登場する一節を引いて筆を置くことにしよう。

一九四〇年二月二十一日にはすでに、SS准将で強制収容所総監のリヒャルト・グリュックスは、クラクフ近郊を見て歩いた結果、アウシュヴィッツに新設「隔離収容所」として「格好の場所」を見つけたとヒムラーに報告している。そこは、いくつかの工場のほかには古いオーストリア騎兵隊の営舎があるだけの、人口一万二千ばかりのわびしい沼地だらけの町であった。(中略)まもなくそこはずっと陰惨な場所となる。(p.437)


第三帝国の興亡 3

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