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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-10-07(Tue) [長年日記]

_ 日本人離れした文化人類学者の生き方を知ることができる一冊──異郷日記(西江 雅之) 異郷日記(西江 雅之)

物心がついた頃から、自分は異郷にいるのだという感覚が、わたしにはいつも付きまとっていた。

そんな一節からはじまる一冊だ。

本書は、文化人類学者である著者が旅した世界各地の「異郷」について記したエッセイ集である。

著者の本を読むのは本書が初めてなのだが、驚かされるのが、その言語能力の高さだ。

英語やスペイン語、フランス語、アラビア語、スワヒリ語、ヒンドゥー語といったメジャー(?)な言語はもちろんのこと、異言語が混合してできたクレオル語と呼ばれる、主に旧植民地で使われる様々なマイナー言語まで操ることができるようだ。 「いったい、この人は何か国語喋れるんだろう」と疑問に思うこと必至だ。

インドで使われているタミル文字についても、「一字も読めない」としつつも

わたしは、ヒンディー語で使用されているデーヴァナーガリー文字ならば読むことはできる。その気になれば、原理的に同じ根拠に基づいているタミル文字も、一日二日あれば、看板ぐらいは読めるようになるはずだ。(p.118)

と書いていて、英語さえおぼつかない身からすると、次元の違いにのけぞってしまう。

著者はパプアニューギニアで開催される民族舞踊ショー「シンシン」から筆を起こし、日本語のロゴを残した車両が走り回るタンザニア・ザンジバルや、ドイツ人芸術家ヴァルター・シュピースによって「作られ」た伝統芸能「ケチャ」を観光資源とするバリ島・ウブド、言語学者チョムスキーと語り合ったオレゴン州ポートランドの思い出*1、ランボーの『地獄の季節』を片手に縦断した、まだ安全だった頃のソマリアと筆を進めていく。

ラストを東京・三鷹にある著者の住居「蝦蟇屋敷」の界隈で締めるあたりは、さすが

「わたしにとって、自分の皮膚の外側はすべて異郷だ」(p.8)

と書く著者だけのことはある。

世界各地の「異郷」とともに、なんとも日本人離れした著者の生き方を知ることのできる一冊である。オススメです。

*1 著者がキューバで知りあった、チョムスキーは百年以上前に死んでいると思っていた言語学を学ぶ青年の話はおかしい。

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