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2008-10-08(Wed) [長年日記]
_ B級映画好きにこそ読んでもらいたい青春+強盗+オフビート小説──
最高の銀行強盗のための47ヶ条 (創元推理文庫 M ク 14-1)(トロイ・クック)
22歳の美貌の銀行強盗を筆頭に、どこか頭のネジが飛んでしまったような登場人物たちが走り回る、青春+強盗+オフビート小説が本書。 映画畑出身という異色の経歴を持つ著者のデビュー作である。
作者トロイ・クックが関わってきた映画には『テイクダウン』(1994)、『スター・コンバット』(1995)、『センチュリオン・フォース』(1998)といった作品があるそうだ。 しかし、すべて日本非公開ということから分かる通り、お世辞にも大作と呼べるものはなく、どれもB・C級作品ばかりなようである(「トロイ・クック 映画」あたりのキーワードでググってみれば、さんざんな映画評が読める)。
それゆえと言って良いのか悪いのか、本書のテイストも完全にB級映画。 ただし、B級映画好きであるならば、5点満点で4〜5点をつけたくなるデキのB級映画ならぬB級小説だ。
本書の主人公タラ・エバンズは9歳の時から父ワイアットととも銀行を荒しまわってきた、筋金入りの銀行強盗だ。 はじめてタラがヤマを踏んでから13年。 美しい女性へと成長し、ワイアットの考案した"47ヶ条の規則"に従い危げない仕事をしてきたタラだったが、最近はワイアットと手を切ることを考えはじめていた。 ワイアットが年々凶暴さを増し、仕事の現場で無差別に殺人を犯すようになっていたのだ。 銀行を襲うため、テキサス州の田舎町に来た時、タラに運命の出会いが訪れる。 町の酒場でマックスという名の青年に一目惚れしてしまったのだ。 これを機にワイアットと別の道を生きることを決意するタラだったが……。
冒頭にも書いた通り、本書にはまともなキャラクターがほとんど登場しない。
まず、主人公のタラからしてそうだ。 彼女はマックスと駆け落ちすることとなるのだが、「普通の女の子になりたい!」と言うのかと思いきや、そうはならず、マックスが頼れる男かどうかを見るため、「テスト」と称してコンビニ強盗をさせてしまうのである。 それも当たり前と言ってしまえば当たり前。 なにしろ、彼女は9歳から銀行強盗一筋の人生を送っている。 それ以外に「男」の度合いを測る基準を持っていないのである。
父親へのコンプレックスを持っていたマックスもまた、「タラを優しく一般人の道に導く」なんてことはせず、簡単にタラに感化されてしまい、タラと二人でボニー&クライドばりに南部を荒しまわることになる。
そんな二人を追うのがターミネーターもかくやという無敵ぶりとティンダロスの猟犬ばりのしつこさを持つ男、ワイアット。
そこにマックスの父親にして自己啓発本狂いの保安官であるウィリアムズ、ワイアットとタラの犯罪を追いかけるサディストな捜査官(死体を見て興奮する変態)率いるFBI一団、さらにワイアットの金を掠めとろうとするエバンズ親子の昔の仲間が絡んできて、めちゃくちゃなストーリーが展開されてしまう。
個人的に見るところ、本書で普通の人間(脇役を含む)はサディストなFBI捜査官に苦労させられる部下である黒人捜査官ドーキンズ、サラの叔母メイ、アメリカン・インディアンの少年〈走るクマ〉のわずか3人。 本書のキレ具合が分かろうというものだ。
めちゃくちゃなストーリーに、めちゃくちゃな登場人物という、二重に「めちゃくちゃ」な要素を持たせながらも、それでも物語を破綻させずクライマックスまで着地させる作者の手腕は素晴しい。 映画では実力が発揮できなかったようであるが、小説の分野では作者の才能が見事に開花したと言っていいだろう。 一度ページを開き勢いにノってしまえば、ぐいぐい引っ張られて一気に読まされてしまうこと間違いなし。
どこをどう読んでも、ほろっとさせられたり、教訓を得たりはできない*1、完璧にエンタメに徹した小説である。 B級映画を楽しむように、登場人物たちの暴れっぷりを(多少のツッコミを入れながら)ニヤニヤしつつ読むのが本書の正しい読み方と言えるだろう。 ビールを片手にほろ酔いになりながら、なんていうのもオツかもしれない。
B級映画好きにこそ読んでもらいたい一冊だ。 ただし、遵法精神の欠片もない内容なので、「法令遵守」タイプの人は注意のこと。;)
訳者あとがきによれば、カリフォルニア知事選を舞台に、私立探偵に候補者、殺し屋が右往左往するというストーリーの著者の第二作が近々、本書と同じく東京創元社から出版予定との由。 どんなめちゃくちゃなストーリーが描かれるのか、今から楽しみである。
- トロイ・クック/高澤 真弓 訳
- 東京創元社
- 1050円
書評/ミステリ・サスペンス
*1 ただし、作中で紹介される"47ヶ条の法則"は*銀行強盗をする時には*役に立つかもしれない。←もちろん、ジョークですよ。



まで頂ければ幸いです。
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